相続したくない土地や不動産は相続放棄できる? 手続き方法や手放し方について
更新日:2026年2月17日
監修者:庄田和樹(司法書士・土地家屋調査士・行政書士 司法書士法人 土地家屋調査士法人 行政書士法人 神楽坂法務合同事務所 代表 ウィルサポート株式会社 代表取締役)
本記事は、財産を相続する立場の方の視点でご説明します。
使うあてがない、あるいは維持費が高いなどの理由で、被相続人が所有していた土地を自分は相続したくないという場合、その土地だけを相続放棄することはできませんが、その他一切の相続財産と一緒に相続放棄して権利を手放すことは可能です。また、相続財産のうち、土地だけを手放したい場合は、生前に売却や寄付を行って手放すことも選択肢としてあげられます。ここでは相続放棄の手続き方法や、土地の手放し方についてわかりやすく解説します。
目次
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1.相続放棄とは
相続放棄とは、相続開始後に相続人が相続を拒否すること、およびその意思表示をすることです。相続人が、相続の開始(つまり、被相続人の死亡)を知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申請し、受理されることによって実現します。申請が受理されるとその相続人は、はじめから相続人とならなかったものとみなされます(※)。
2.土地を相続したくない場合に相続放棄は可能?
上で述べたように、はじめから相続人とならなかったことにすることが相続放棄なので、「親から土地や空き家を受け継いだものの、使う予定がない」という場合であっても、その土地だけを相続放棄することはできません。相続放棄をするならば、その他一切の相続財産と一緒に相続放棄することになります。相続放棄を行うと、プラスの財産もマイナスの財産(債務)も引き継がないことから、それにともない、固定資産税の支払いや不動産の管理が不要になったり(ただし、後述するように一定の条件があります)、相続トラブルを回避しやすくなったりするというメリットもあります。
また、財産の一切を放棄する方法のほかに、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という方法もあります。
なお、限定承認は、相続開始を知ってから3カ月以内に、相続人全員が共同で家庭裁判所にその旨の申述をする必要があります。また申述が認められた後も、相続人全員の協力と家庭裁判所の関与の元で複雑な手続きが必要です。限定承認が選択できる場面は、代価弁済をして不動産を残しておきたい場合や、プラスとマイナスの資産が多額で混在しており、相続財産の全体が把握しづらい場合などに限られます。
3.相続放棄によって手放した土地はその後どうなるか
土地の相続放棄をすると、その後の土地の名義や管理はどのようになるのでしょうか。押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
他の相続人が引き継ぐ
複数の相続人がいる場合は、自分が相続放棄をすると、他の相続人がその土地を引き継ぐことになります。※遺産分割をすることは可能ですが、まずは法定相続となります。
他の相続人にも相続放棄をする権利はあるため、土地を相続するかどうかはそれぞれの選択に委ねられます。
このように、相続放棄は他の相続人に大きな影響を及ぼすものです。トラブルに発展することを防ぐため、他の相続人に相続放棄をする旨を早めに伝えておくことが望ましいでしょう。
相続人全員が放棄すると財産は法人となる
全ての相続人が相続放棄をすると、財産は「相続財産法人」になります(※1)。利害関係者や検察官の申し立てがあれば、家庭裁判所によって相続財産清算人が選任され、相続財産の管理・清算を任されます(※2)。相続を放棄しても土地を保存しなければならない
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している場合は、次の相続人または相続財産清算人に財産を引き渡すまでの間は、自分の財産であるかのように注意を払って財産の保存を行わなくてはならないと定められている(※)点に注意が必要です。
相続放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している場合、相続を放棄するからといって土地の管理をすぐにやめてしまうと、古くなった建物が倒壊したり、土地にゴミを不法投棄されてしまったりするリスクがあります。一連の手続きが終わるまでは、土地を保存する義務があることを覚えておきましょう。
4.相続放棄せずに土地を相続した場合のリスク
本項では、不要な土地を所有し続けるリスクについて紹介します。
税金を支払う必要がある
土地を所有していると毎年固定資産税を支払う必要が生じます。たとえ土地を使用していなくても、所有している限りは支払い続けることになるため、固定資産税として支払うお金が惜しいと感じることもあるでしょう。
固定資産税は年4回の分割払いか、もしくは1年分の一括払いのいずれかを選択します。所有する土地の評価額や、地域ごとに定められた税率などによって金額が決定されます。
相続人の間でトラブルが起こる可能性もある
相続人が決まらない場合は、全員が相続放棄する方法のほかに、相続人全員が不動産を共有する方法もあります。しかし、管理や利用方法、費用の負担などで、トラブルに発展しやすい方法とも言えます。
また、土地を売りたいと思った時には、全員の同意を得なくてはなりません。共有を選択する時は、このようなデメリットがあることを覚えておく必要があります。
5.土地やその他の財産を相続放棄するための手続きの概要
本項では、土地などの財産を相続放棄するための手続きの概要について紹介します。
3カ月以内に手続きを行う
相続を放棄するためには、相続の開始があったことを知った時(被相続人が亡くなった時や自分が相続人であることを知った時)から3カ月以内に行います。家族が亡くなるとさまざまな手続きや片付けが生じるため「気づいたら期限間近だった」ということのないよう、早めの手続きをおすすめしています。
相続放棄は、家庭裁判所で「相続の放棄の申述」という手続きを行います。家庭裁判所から受け取る受理通知書と受理証明書が、相続放棄の申し立てが受理されたことの証明になります。
必要書類
家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行う時は、以下の書類が必要です。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
相続放棄の申述書は家庭裁判所のホームページからダウンロードできます。その他の書類は役所等で入手しましょう。書類に不備があると、家庭裁判所から確認の電話がかかってくることもあります。
相続放棄にかかる費用
相続放棄の申述書を提出するために、800円分の収入印紙が必要です。また、必要書類を発行するために、役所で以下の手数料を支払います。
- 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本:450円
- 被相続人の除籍謄本一式:750円
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票:300円
手数料は自治体によって異なるため、詳しくは各市区町村のホームページなどをご覧ください(※)。また、手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合は追加で費用がかかります。
先代名義でもさかのぼって手続きを行う
被相続人が亡くなった時、土地が先代名義のままになっていたことに気づくこともあります。例えば、父親が亡くなって手続きをしようと思ったものの、土地が祖父名義のままであったことが判明したなどのケースです。そのままにしておくと、相続放棄や売却ができないなどの不都合が生じるため、さかのぼって相続の手続きを行います。
このようなケースでは、まずは先代(今回の例では祖父)の相続手続きから行うことになります。祖父から父、父から自分というように、実質2回の相続に対応することになるため、その負担を考えて弁護士や司法書士に依頼することが多いでしょう。
6.土地の相続放棄が認められないケース
以下のケースでは、土地の相続放棄が認められない可能性があります。
① 3カ月以内に相続放棄の手続きを行わなかった
相続放棄を家庭裁判所に申し立てる場合、3カ月の期間が設けられています。この期間を過ぎてしまうと相続放棄が認められないため、注意が必要です。手続きをスムーズにするために、生前にご自身の預貯金や不動産・借金などの状況を一覧にしておくとよいでしょう。
② 財産を売却・使用・処分した
残されたご家族が相続放棄の手続き後に、相続放棄の対象となる財産を売却してしまったり、部分的にでも使ってしまうと、相続放棄は無効になります。例えば、相続放棄した不動産を使ったり、預金口座から葬儀費用等を引き出したりした場合がこれに該当します。相続放棄は財産に関する権利を放棄することであるということを押さえておく必要があります。
③ 相続を承認したとみなされる行為をした
被相続人の借金を返済したり、被相続人の財産で請求書の支払いを行ったりすると、相続を承認したと判断されて相続放棄ができなくなります。借金などのマイナスの財産も相続したとみなされるため、注意が必要です。
④ 遺産分割協議に参加して合意した
遺産分割協議に参加して署名や押印を行うと、遺産の相続人であることを認めたと判断されます。民法で定める相続承認の要件に「相続財産の全部又は一部を処分したとき」(※)とありますが、遺産分割協議での合意はこの「処分」に該当すると解釈されるためです。
なお、これらのケースに該当する時でも、やむを得ない事情があると認められた時には相続放棄が可能になることもあります。
7.相続放棄以外で土地を手放す方法
ここまで相続放棄によって土地を手放す方法について紹介してきましたが、ご自身の生前に財産を整理しておきたいと考える方もいるでしょう。本項では、相続放棄以外で土地を手放す方法について紹介します。
土地を売却する
使っていない土地がある場合には、生前に売却して現金に換えるという選択肢があります。
ここまで紹介してきた通り、相続放棄を行うためには必要書類を揃えた上で家庭裁判所での手続きを行わなければなりません。しかし、生前に土地を売却して現金に換えておくと、ご家族が財産を相続しやすくなり、税金に関する手続きも比較的シンプルになります。
また、売却して得た現金を興味のある団体やお世話になった方などに寄付する(※)ことも可能です。
土地を寄付する
使っていない土地を、自治体に寄付できる場合もあります。
ただし、価値があると判断されなければ寄付を断られることもあります。例えば、交通の便が悪い場所や、何らかの原因で環境が汚染されている場所にあるといった土地は、活用しにくいとみなされて寄付できないことがあります。
また、自治体にしてみれば、寄付の申し出があった土地を全て自治体で引き受けてしまうと、固定資産税としての収入が大幅に減ってしまうことから、自治体へ土地の寄付を希望しても、必ず引き受けてもらえるわけではありません。
8.相続放棄ではなく寄付をお考えなら
使用していない土地を所有している方は、ご自身に万が一のことがあった時、土地がどのように処理されるのか気になるという方も多いでしょう。そのような場合でも、残されたご家族などが3カ月以内に手続きを行うことで相続放棄することが可能です。
しかし、相続放棄のための手続きが発生することから、ご家族に思わぬ負担をかけてしまうこともあります。生前のうちに土地や土地の売却益を寄付することを検討してみるのも良いかもしれません。
国境なき医師団では、一定条件のもとで(※)、不動産の寄付をお受けしています。詳しくは「国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口」にご相談ください。
- ※ただし、以下の不動産については、換価が困難または換価手続きの長期化が想定されるため、辞退させていただいております。
◎換価を許可しない不動産、および換価が困難な不動産
例1▶山野林、農地、海外の不動産
例2▶権利関係が複雑な不動産(共有名義の不動産、借地権付きの不動産)
その他換価までに1年以上かかると見込まれる不動産
9.まとめ
不要な土地を手放したい場合に相続放棄は有効ですが、手続きのための費用や労力が発生するため、残されたご家族がいつでも手軽に相続放棄ができるというわけではありません。相続放棄をした後でも、ご家族などが土地を保存する義務は残ります。誰も相続人がいない場合には、家庭裁判所で相続財産管理人を選任するなど、専門的な手続きが必要になるでしょう。
相続放棄する方法のほかに、土地もしくは土地の売却益を寄付する方法もあります(ただし、土地のままでの寄付の受け付けには、寄付先ごとの条件や制約があります)。この機会に土地の処分方法について考えてみてはいかがでしょうか。
遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。
パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)
- 国境なき医師団とは?
- 遺贈寄付までの流れ
- 公正証書遺言とその作り方
- 自筆証書遺言とその書き方
- 遺贈Q&A
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遺贈寄付の手続きは、誰にとってもはじめての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聞かれます。「国境なき医師団遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。
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庄田和樹 司法書士・土地家屋調査士・行政書士 司法書士法人 土地家屋調査士法人 行政書士法人 神楽坂法務合同事務所 代表 ウィルサポート株式会社 代表取締役
信託銀行、司法書士法人勤務を経て独立。司法書士、土地家屋調査士、行政書士として相続等の問題の解決に注力するとともに、株式会社 遺言執行社を設立し、遺言書作成サポート、死後事務委任契約をはじめとする専門的なサービスを提供している。