海外派遣スタッフ体験談

仕事を見せて現地スタッフのやる気を刺激:竹中 裕

2018年04月13日

竹中 裕

職種
産婦人科医
活動地
ケニア
活動期間
2017年11月~2018年1月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

前回のナイジェリア派遣のあと、2ヵ月ほど船医の仕事をしていました。帰国したら、またMSFに参加しようと考えていましたので、派遣のオファーが来たときに快諾しました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

特に準備はしていませんでした。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

今回は産婦人科医として9回目の派遣なので、MSFの産婦人科のガイドラインは概ね頭に入っていました。ナイジェリアやシエラレオネでも自信をもって相当数の重症例を治療しており、その経験が役に立ちました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

ケニアのモンバサ地域近郊にある、リコニというところでした。割と都会で、治安も良い場所です。海沿いで、近隣にはアフリカ隋一のビーチリゾートもありました。MSFは現地の保健省と組んで、中核病院のソフト面とハード面のサポートをしていました。

モンバサは大都会で、島で構成された港湾都市です。リコニはモンバサ都心部との間に橋がありません。モンバサに渡るためにはフェリーを利用するのですが、潮の干満や、車の渋滞具合などにより、症例の救急搬送にかかる時間がまちまちです。そのため、リコニの病院のレベルアップを図りたいというのが本プロジェクトの趣旨でした。MSFが病院の改修(新病院建築)も行っており、保健省には、ゆくゆくはこの病院を地域のトレーニング・センターにしたいという意図もあるようでした。
 
私が到着する直前まで、半年ぐらい医師と看護師のストライキがあり、その間は近隣の医療施設が軒並み休業していました。そのあおりを受け、リコニの病院は月間の分娩数が1000件、しかも重症例が多い状況だったようです。

そのため、スタッフ全員が多かれ少なかれ疲弊していました。私が到着してからは、派遣期間を通じて月間分娩数が400~500件程度、帝王切開を含めた手術症例が月間70件程度と、かなり数字も落ち着いてきていました。ちょうど年末だったこともあり、医師や助産師たちは、この時とばかりにこれまで取れなかった休暇をとっていました。

今まで私が経験したプロジェクトに比べると重症例も少なかったため、おもに助産師やオペ室スタッフとともに、麻酔薬のオキシトシンの使用方法や、吸引分娩、分娩経過記録(パルトグラム)の記載方法など基本を見返したり、症例ごとに検討したりしていました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

仕事は朝8時~午後5時。基本的に週7日24時間オンコールでしたが、一緒に働いていた現地のケニア人医師がほとんどの症例に対応してくれていたため、時間外に呼ばれるのは1週間に1回ぐらいでした。

遠くのビーチに行ったりしているときに限って重症例が来たりするので(マーフィーの法則?)、基本は家で待機していましたが、1回だけ近くの自然公園に行く機会がありました。

Q現地での住居環境について教えてください。

プールあり、Wi-Fiあり。水シャワーで、海が近いため海水っぽかったです。エアコンなし、扇風機あり、個室あり、蚊帳あり。そしてビールの購入も可能でした。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

一緒に働いた助産師と
一緒に働いた助産師と
前回のナイジェリアに続き、死戦期帝王切開(※)を経験しました。周りのスタッフは重症具合に最初は腰が引けていましたが、「このまま搬送したら搬送中に亡くなる、手術をしなかったら間違いなく母体は助からない」という結論に落ち着くと、とたんにやる気スイッチが入りました。準備をしている間に実際に母体が急変し、心臓マッサージをしながらの帝王切開となりました。

吸引分娩を教えようとした時には、助産師たちから抵抗がありました。しかし、何回かやっている場面を見せることで、どんどん「私もできるようになりたい」と希望を持つようになって来たのが、うれしい経験でした。

  • 心肺停止に陥った妊婦を蘇生させるための緊急帝王切開
Q今後の展望は?

医師になって14年間、国内外あるいは臨床とそれ以外を問わず、ずっと仕事ばかりしてきたので、2年ほどフィリピンに留学する予定です。国際政治と平和構築について学び、MSFあるいは他団体での活動に生かせればと考えています。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

日本人は全体的に、遠い将来の展望を持つように教育されていると感じます。それはそれで素晴らしいと思いますが、目の前の面白そうなことを楽しむような生き方も、それはそれで良いんじゃないかと感じるようになってきました。ぜひ一歩を踏み出してください。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2017年6月~2017年7月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • プログラム地域:ジャフン
  • ポジション:産婦人科医
  • 派遣期間:2013年9月~2013年10月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • プログラム地域:ジャフン
  • ポジション:産婦人科医
  • 派遣期間:2013年7月~2013年9月
  • 派遣国:ソマリア
  • プログラム地域:ソマリランド、ブラオ
  • ポジション:産婦人科医
  • 派遣期間:2012年11月~2013年2月
  • 派遣国:シエラレオネ
  • プログラム地域:ボー
  • ポジション:産婦人科医
  • 派遣期間:2012年7月~2012年8月
  • 派遣国:南スーダン
  • プログラム地域:アウェイル
  • ポジション:産婦人科医
  • 派遣期間:2012年2月~2012年4月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ペシャワール
  • ポジション:産婦人科医
  • 派遣期間:2012年2月~2012年2月
  • 派遣国:スリランカ
  • プログラム地域:ムライティブ県
  • ポジション:産婦人科医
  • 派遣期間:2011年9月~2011年11月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ペシャワール
  • ポジション:産婦人科医
  • 派遣期間:2011年6月~2011年7月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • プログラム地域:ジャフン
  • ポジション:産婦人科医

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