海外派遣スタッフ体験談

マネジメントの面白さと難しさを実感:土井 直恵

2018年06月01日

土井 直恵

職種
看護師
活動地
カメルーン
活動期間
2017年8月~2018年2月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

引き続きMSFで活動したいという思いがありました。2016年に今回と同じカメルーンで、初のフランス語圏の活動を体験し、もう一度チャレンジしたいと思っていました。MSF日本のフィールド人事マネジャーと相談をしながら、直前まで行っていたイラクの活動中に、今回の派遣が決まりました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

今回は、初めて病院のマネジメント職として仕事をすること、そしてフランス語という大きなチャレンジがあり、出発前はワクワクする反面、しっかり仕事ができるか不安も大きかったです。前回の派遣から1ヵ月もありませんでしたが、少しでも言葉に慣れようと、あわてて現地からのレポートを読みこみました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

過去にフィールドで出会った人の言葉や行動は、私に勇気をくれ、支えでありお手本です。

窮地に立つと、誰もが余裕を無くしてしまうもの。サポートを求め、フラストレーションを周囲に理解されたいという気持ちが先行しがちです。そんな時でもイライラせず、チームの中で空気を和らげることのできる人や、目標を見失わない人がいます。私もそんな風になりたいと思います。

その時には肯定的に捉えられなかった物事も、何年も経ってから意味を見出せることがあったり、自分の不甲斐なさを受け止められるようになったり、何か自分の中で、さまざまな経験が統合されるような機会が不意にやってくる時があると思います。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

カメルーン極北地域、ナイジェリアとの国境付近では、依然として過激派勢力「ボコ・ハラム」による活動が活発です。マロウアのプロジェクトは州の拠点病院で、国境付近にあるもう1つのMSF病院や他のNGOから搬送されてくる負傷者の受け入れを主な活動の目的として、現地の保健省と協力しながら運営されています。

やけどや交通事故による負傷、慢性疾患以外の外科治療を必要とする症例、それから産婦人科(主に帝王切開と子宮外妊娠等の緊急症例)にも24時間対応しています。

2016年8月にプロジェクトが始まって以来、患者さんの数は増え続け、スタート当初の体制では追い付かなくなり、急きょ病院の敷地内にテントを設営して対応していました。

常時100人前後の患者さんを受け入れていましたが、ベッドの稼働率はほとんどいつも100%だったので、一度に多数の患者さんが搬送される時や、重症例が多い時、隔離が必要となる多剤耐性菌の症例に対応するためのベッド管理は一苦労でした。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

日々の仕事と並行して、年間の計画に基づいた業務(新しい人材の採用や医療スタッフの知識向上トレーニング、一度に多数の負傷者が運び込まれる時のシミュレーションなど)をリードするという役割があったので、1週間があっという間に過ぎてしまう中で、日曜日は落ち着いて中期的な計画を練る日、という感じでした。

マネジメントのポジションに就くことで、直接患者さんのケアに当たらないことを寂しく思うのでは、と思っていましたが、病院のチームをどうサポートできるか、日々現場で持ち上がる問題をどうしたら改善できるか、そういう視点で動く仕事はとても面白く、やり甲斐がありました。

チームのメンバーにも恵まれ、同じ目標に向けて、それぞれの持ち場を尊重しながら一緒にやっていく空気にはとても助けられ、モチベーションが上がりました。

Q現地での住居環境について教えてください。

20人前後の海外派遣スタッフが3つの家に分かれて住んでいました。各自に部屋が割り当てられ、自家発電や井戸水があるお陰でライフラインは安定しており、とても快適な住環境でした。

ただ、車以外の移動は制限され、外を歩くことが出来ないのが不便でした。こういう現場では歩く機会が極端に少なくなるので、毎回、日本に戻ると少し出かけたり散歩したりするだけで筋肉痛になります。立っていることはあっても、歩く機会がそんなにないものなのかと、いつも愕然とします。

マーケットにはとても安価でおいしい野菜や果物が豊富にあり、大好きなスイカやマンゴー、アボカドを山のように食べていました。それに慣れてしまったおかげで、帰国してから日本では、値段が高く美味しくなく感じてしまい、果物が買えなくなりました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

現場のフォーカル・ポイントとして、現地保健省の人たちと会議や交渉を持つ仕事ができた事は、とてもいい経験になりました。一方、現地側の論理では、MSFの理念やルールは通用せず、すれ違ってしまうことも多かったです。

MSFが掲げる「最も医療が届いていないところへ届ける」という目標よりも、「自分のポジションさえ安定していれば良い」という姿勢や、金銭や物品の援助ばかり期待されていると感じられる言動が垣間見えると、「同じ目標へ向かって思いを共有していたのではなかったのか」と、とても残念に思うこともありました。今、振り返ると、自分の描くシナリオに沿わない相手に対して勝手に落胆し、それではいけないと裁いていたのだと思います。

素直に心を開けないうちは、何をするのも楽しくありません。相手への猜疑心や満たされない思いで感情的にもなりがちでした。考え方や働く理由に善も悪もなく、共有できるところを大切にできれば構わないと思えるようになってから、少しずつ、しなやかにコミュニケーションを図れるようになりました。

嫌なことを感じていないかのように振舞うことがストレス・マネジメントではなく、それを見つめて自分の中で落とし込めること、消化できることが大切です。活動地で思い通りに行かないことに対する耐性、許容できることの大切さを改めて感じました。

Q今後の展望は?

私事ですが、この度パートナーとの間に第一子を授かり、2018年の夏に出産の予定です。しばらくはMSFの海外派遣スタッフとして現場から少し遠ざかってしまうことになりますが、今後とも何らかの形でMSFの活動や、必要な医療が届かない場所への支援に携わっていきたいと考えています。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

いつも心の底からワクワクすることと繋がっていられること、自分が自分の一番の味方で居てあげられるように、素直でいることが一番大事なことだと思っています。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2017年6月~7月
  • 派遣国:イラク
  • プログラム地域:モスル
  • ポジション:手術室看護師
  • 派遣期間:2016年9月~2017年3月
  • 派遣国:カメルーン
  • プログラム地域:マロウア
  • ポジション:手術室看護師
  • 派遣期間:2016年2月~2016年3月
  • 派遣国:イエメン
  • プログラム地域:アルカイダ
  • ポジション:手術室看護師
  • 派遣期間:2015年5月~2015年12月
  • 派遣国:アフガニスタン
  • プログラム地域:ヘルマンド
  • ポジション:手術室看護師
  • 派遣期間:2015年4月~2015年4月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • プログラム地域:ポートハーコート
  • ポジション:手術室看護師
  • 派遣期間:2014年2月~2014年12月
  • 派遣国:南スーダン
  • プログラム地域:ランキエン
  • ポジション:手術室看護師
  • 派遣期間:2013年4月~2013年11月
  • 派遣国:イラク
  • プログラム地域:ナジャフ
  • ポジション:手術室看護師
  • 派遣期間:2012年12月~2013年2月
  • 派遣国:パレスチナ
  • プログラム地域:ガザ
  • ポジション:手術室看護師

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