海外派遣スタッフ体験談

初の緊急援助!何もないところから活動を展開:上野 麻実

2018年01月26日

上野 麻実

職種
助産師
活動地
バングラデシュ
活動期間
2017年10月~2017年11月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

前回の派遣後、公衆衛生学の勉強のために留学していました。大学院で学んだ知識を現場で活かしたいと考えていました。ヨルダンでの政府開発援助(ODA)の仕事の後、帰国したタイミングでオファーの電話があり、すぐに参加を決めました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

派遣決定後スムーズにビザ申請できましたが、緊急援助で状況が流動的だったため、なかなか出発の声がかからず2週間自宅で待機していました。ロヒンギャ難民について全く知識がなかったので自分で情報を集め、本を読むなどして過ごしました。休暇が2週間延びたと考えることにして温泉に行ったり、友人に会ったりするなどして過ごしました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

緊急派遣チームとしての仕事は初めてでしたが、これまでのMSFの経験は今回の活動に応用することができたと思います。薬剤の管理、人材雇用、基本的な看護技術のトレーニングなど病棟責任者として行なってきたことはすべて活かすことができました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

クリニックで誕生した1人目の赤ちゃん
クリニックで誕生した1人目の赤ちゃん
OCPの緊急プロジェクトの立ち上げに関わりました。難民キャンプ内のクリニックの運営、新たなクリニックの立ち上げ準備が主な業務でした。

到着時にはすでに1つ目のクリニックが完成しており、患者さんが毎日200人ほど押し寄せていました。患者さんの増加に伴いすぐに増築の準備がされ、開院後2週間で400人の患者さんの診察を行なっていました。
 
私は主にスタッフの管理、物品や医療機器、薬剤の管理を現地スタッフとともに行なっていました。必要な薬剤が想像以上に足りず、MSF内でやりくりして毎日を繋いでいくという現状でした。
診療所の待合室<br> 毎日200人ほどの患者が押し寄せた<br>
診療所の待合室
毎日200人ほどの患者が押し寄せた
クリニックへ来る患者さんの3分の1は5歳以下の小さな子どもたちでした。自分で痛みやつらさを表現できない子どもたちは難民キャンプ内の過酷な状況の中で家族にも変化を見過ごされやすいように感じました。到着したばかりの家族から、「瀕死の子どもよりも自分たちのシェルターを得る方が先だ」と言われたことは一生忘れないと思います。皆が生きていくのに必死な様子を、毎日、目撃していました。
Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

キャンプ内の診療所で午後3時まで診療
キャンプ内の診療所で午後3時まで診療
派遣中はほとんど休みを取れませんでした。唯一、金曜日は宿舎兼オフィスで過ごせましたが引っ越したばかりのオフィスや薬局を整えたり、ミーティングをしたりとても忙しかったです。

週に6日はキャンプ内での仕事です。医療チームは午前7時過ぎに車で宿舎を出発します。クリニックまでは約1時間。診療準備をして午後3時まで患者さんの診療にあたります。帰宅後も翌日の準備、記録、統計管理、ミーティングなど毎日が大変めまぐるしかったです。
Q現地での住居環境について教えてください。

事務所開設までの1週間、居心地がよいホテルだったが…
事務所開設までの1週間、居心地がよいホテルだったが…
初めの週は海沿いのリゾートホテル住まいで大変居心地が良かったです。その後、事務所開設のために宿舎も同時に移動になりました。最初7人だったチームは私が離れる時には26人になっていました。

コンクリートのフロアにマットレスを敷き、3人の相部屋でした。インターネット、水、電気全てが不安定でした。ヘトヘトに疲れて宿舎に戻り、バケツ1杯の水での手桶シャワーはさすがにこたえました(笑)。
Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

少数精鋭で緊急援助にあたった医療チーム
少数精鋭で緊急援助にあたった医療チーム
私のこれまでの活動地は、MSFの活動が周知され、スタッフ、設備、医療機器など全てが整っている中での仕事でした。しかし今回の緊急援助を経験し、物がない、建物がない、働く人もいないというすべてがない中での活動をいかにスピーディーに発展させていくかということを学びました。

医療スタッフは大変少なく、反対にキャンプ内に施設を整える建築家や、土木関係、水衛生担当のロジスティックの素晴らしい働きを目の当たりにすることができました。外国人派遣スタッフはほとんどが経験豊富なベテランばかりで大変勉強になりました。
 
ただ、物資がスムーズに届かなかったり、来るはずのスタッフが来なかったりなど毎日何か必ずハプニングがあり対応に追われていました。
Q今後の展望は?

今後も国際協力を継続すべく自身の活動のあり方を模索中です。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

百聞は一見に如かず。迷っていたらまずは応募することをお勧めします!

MSFでの経験は私の人生の大きな転機になりました。ここから繋がる出会いも私の宝物になっています。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2015年1月~7月
  • 派遣国:アフガニスタン
  • プログラム地域:カブール
  • ポジション:助産師
  • 派遣期間:2013年10月~2014年4月
  • 派遣国:イエメン
  • プログラム地域:アムラン州
  • ポジション:助産師

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