海外派遣スタッフ体験談

医療が破壊された街で 次々に運ばれる熱傷患者に対応

2020年04月30日

池田 知也

職種
外科医
活動地
イラク
活動期間
2019年11月〜12月

高校生の時に聞いた国境なき医師団の講演に衝撃を受け、外科医に。これまで、イエメン、コンゴ民主共和国、南スーダンでMSFの活動に参加し、今回はイラクへ。

紛争の傷跡

活動した病院の手術室 © MSF
活動した病院の手術室 © MSF
イラク北部の都市モスルから南へ60キロに位置するカイヤラ。過激派組織の影響で医療基盤が破壊された地域でMSFが運営する病院の外科領域を担当しました。近くの医療施設が紛争で壊されたために、遠方から来る患者さんも多くいました。
 
運ばれてくる患者さんで圧倒的に多かったのが熱傷でした。生活インフラが整っていないためにガスの事故に遭うケースや、地雷、爆発、そして自殺を図ろうとガソリンをかぶったというケースまで、熱傷の理由は多岐に渡ります。

日本ではまれな重度の熱傷も

子どもの患者も少なくなかった © MSF
子どもの患者も少なくなかった © MSF
体の表面積の半分近くが熱傷になるというケースは日本ではなかなか見ませんでしたが、ここでは珍しくありません。熱傷では、すぐに命を落とすことはなくても、皮膚の防御機構が機能しなくなって数日後に襲ってくる感染症や敗血症で、救命が困難となることもしばしばあります。救命できる場合にも複数回におよぶ皮膚移植が必要となり、治療には長期間を要しました。
 
街に残る地雷の被害も発生していました。ある日運び込まれてきた2人の子どもは、10歳。外で遊んでいた時に地雷が爆発し、大怪我を負いました。一緒に遊んでいた3人のいとこは亡くなったそうです。 

患者を何より優先に考える

手術室のスタッフたちと © MSF
手術室のスタッフたちと © MSF
病院では、毎朝8時すぎから回診、9時から10件ほどの手術を行い、17時から再び回診という流れでした。
 
一緒に働くイラク人外科医は、自分よりも年齢が上で、皆高いプライドを持っています。何かを伝える時は、相手を受け入れる気持ちを持って、一対一で向き合って丁寧に伝えるよう心掛けました。どのような時でも、患者を最優先に考えること、患者にマイナスにならないよう動くことが、何より大事だと思います。 

自分の道で一人前に

様々な国から参加している仲間たち © MSF
様々な国から参加している仲間たち © MSF
仕事以外の時間では、体が衰えないよう筋力トレーニングに励みました。現場に持っていける荷物の量は限られていますが、それでも運動用具は欠かせません。今回は1キロの鉄アレイ2個のほか、腹筋ローラーやヨガマット、縄跳びも持参しました。おかげでバグダッドの空港では何度もこれらをチェックされました。
 
外科医として現場で活動ができるのは、日本で支援してくださる方々のおかげと思っています。そして、これからMSFへの参加を目指す方には、まずは日本で自分の道で一人前になることが活動参加への一番の近道だと伝えたいです。 
外科医としてMSFで活動したい方は・・・
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