海外派遣スタッフ体験談

言葉が通じなくても 忘れられない現地スタッフ、患者さんとの交流

2019年07月23日

木村 与志子

職種
手術室看護師
活動地
イラク
活動期間
2019年1月~4月

誰かの役に立つ仕事がしたいと思い看護師に。その後、青年海外協力隊でルーマニアでの活動を経験。「世界にはこんなに大変な医療事情の国があるのだ」ということを知り、大変な環境にある人のため、経験を生かして働きたいとMSFに参加。勤務先を退職し、今回が初めての活動。

8人の現地スタッフ看護師と

イラクにあるMSFの病院 © Javier Rius Trigueros/MSF
イラクにあるMSFの病院 © Javier Rius Trigueros/MSF
手術室看護師としての仕事の他に、現地スタッフの手術室看護師8人のマネジメントやトレーニングを担当しました。20~30代の看護師8人(男3人、女5人)で、新人看護師から中堅まで経験はさまざま。彼らの看護師としての技術や知識を向上させ、伸ばしていくことが仕事です。
 
国が違えば、受けた看護教育も、積み重ねてきた経験も違います。私の看護経験から、「患者さんのより良いケアために、こうできたらいいな」と思ったこともあったので、それを彼らに知ってもらい、よりよい看護に生かしてもらうようにしました。「患者さんの負担を減らすにはどうしたらいいか」。まずは、そのことをいつも意識してもらうようにしました。 

介助を学ぶワークショップ

イラクでは、やけどの患者が多かったです。全身を何十パーセントもやけどしているような、重症の患者さんばかりでした。患者さんは定期的に包帯を交換する必要があるのですが、交換するときの痛みが激しいので、手術室に患者さんを運び、麻酔をかけて行います。実際に包帯をかえるのは医師の仕事ですが、スムーズに処置が進むように、看護師も介助します。

 
驚いたのは、お腹や腰の包帯を交換する時、看護師たちが、麻酔で寝ている患者さんのお腹や腰を直接持ち上げて、包帯をかえるための介助をしていたことです。これでは、介助者が腰を痛めてしまいます。また、患者さんも例えば手足が手術台から落ちてしまって、脱臼や骨折、神経損傷などのけがをするリスクが出てきてしまいます。本来であれば、患者さんの体を無理に直接持ち上げたりはせず、骨格や筋肉の動きを生かすボディメカニズムを取り入れ、最小の力で体の向きを変えるのが基本です。
 
そこで、介助を基礎から学ぶワークショップを企画しました。看護師それぞれに、医師役、看護師役、患者役になってもらい、やけど用患者の包帯をかえる方法と、寝ている患者さんの体の向きを変える方法を学んでもらいました。四肢の動きに配慮した包帯の巻き方、どういう時に看護師からの介助があると良いかなど、何度も練習してもらい、実践に生かしました。またワークショップの時だけではなく、やけどの患者さんの包帯を交換する時も、いつも看護師たちに声がけするようにしました。
 
次第に、看護師たちの姿勢が変わっていくのが分かりました。また、介助にも工夫が見え、普段から患者さんの体の向きを変える時には、膝をたてたり、手を横に動かしたりして、体の向きを変えてくれるようになりました。 

忘れられない味

ドルマ作りが上手だった看護師のリカ <br> © Yoshiko Kimura / MSF
ドルマ作りが上手だった看護師のリカ
© Yoshiko Kimura / MSF
一緒に働いた20代の看護師リカは、イラクの伝統料理「ドルマ」を作るのが上手でした。ドルマは、野菜に肉や米を詰めたものを煮たイラクの伝統料理。リカはときどきドルマを作って持ってきてくれました。少し酸味があって、疲れている時に食べると最高!本当においしかったです。

たとえ言葉が通じなくても

同僚と一緒に © Yoshiko Kimura/MSF
同僚と一緒に © Yoshiko Kimura/MSF
英語に苦手意識がありましたが、現地スタッフも患者さんもアラビア語ばかりで、英語がほとんどできませんでした。ただ、私はマネジャーという役割ですから、「現地スタッフはみんな同じ職場の仲間」という気持ちを大切に、コミュニケーションを取るように心がけました。結果的に良い信頼関係を築くことにつながったと思います。
 
着任当初、言葉の壁もあって「ヨシコは何言っているか分からない」というジェスチャーばかりしていた現地スタッフの男性看護師がいました。でも、ワークショップなどで交流を続けていくうちに、「ヨシコに習ったことをやってみたよ」と声を掛けてきてくれるようになりました。他の看護師も、「これはどうしたらいいのか」と積極的に声を掛けてきてくれるようになりました。活動が終わる頃にはすっかり打ち解けて、現地スタッフの看護師たちが送別のメッセージカードをプレゼントしてくれました。
 
患者さんにも、医師たちと回診で訪ねていく時に「調子はどう?」などと、必ず英語で話しかけました。お互いに何を言っているか分からないこともありましたが、ある患者の家族は「この子は、ヨシコのことが好きだよ」と、簡単な英語で声を掛けてくれることもありました。退院の時に、「一緒に写真を撮って」と、患者さんからリクエストされることも。こちらは英語、あちらはアラビア語だけれども、「いつも気に掛けているよ」という気持ちは、患者さんにちゃんと伝わっているのだということを感じました。 
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