海外派遣スタッフ体験談

企業経験を人道援助に生かす 発電機から文具まで、あらゆる物資を調達

2021年02月12日

小坂 真理子

職種
ロジスティシャン(サプライマネジャー)
活動地
チャド
活動期間
2019年12月~2020年8月

企業での輸出入の業務経験を生かし、物資調達を担うロジスティシャンに。初めての海外派遣先となったチャドで、コロナ禍の物資不足に直面しながらも、現地スタッフと協力して活動にあたった。

輸出入業務からロジスティシャンへ

フランスのMSF物流センター © Louise Annaud/MSF
フランスのMSF物流センター © Louise Annaud/MSF
20代の頃から国際協力に関心があり、青年海外協力隊としてアフリカのカメルーンでコミュニティ開発の活動に参加しました。帰国後、仕事として人道援助の分野に進むかどうかを考えましたが、当時は自分自身の専門と言えるものがなく、紛争地のような場所で活動する覚悟もまだないと感じ、日本の会社に入りました。
 
それから約7年にわたって、企業で輸出入に関する仕事に従事。この間、プライベートで国境なき医師団(MSF)の魅力あるメンバーたちと知り合ったことなどを通し、自分の仕事がMSFでの活動に役立つ可能性があることが分かってきました。
 
また、私が病気やけがをした経験が何度もありながらも健康で生きていられるのは、たまたま日本の恵まれた環境に生まれたからだと思い、困難な環境で生きる人たちのために何か力になりたい、という意志が強くなりました。徐々に覚悟のようなものができ、チャレンジする気持ちでMSFのロジスティシャンに応募し、無事に登録につながりました。 

コロナ禍の物資不足の中で

現地で製造したマスクを身に着ける小坂(右)と<br> 同僚のスタッフ © MSF
現地で製造したマスクを身に着ける小坂(右)と
同僚のスタッフ © MSF
初めての派遣先になったのは、アフリカ中央部に位置するチャド。世界最貧国の一つです。MSFはチャドでマラリアの予防と治療を行うほか、栄養失調児の治療や、はしかの予防接種の活動を行っています。
 
私はサプライマネジャーとして、これらの医療援助に必要な物資の調達を統括しました。具体的には、MSFのフランスの物流センターから医薬品や医療機器などを輸入する業務、また、チャド国内で調達可能な物資の購入、さらに在庫の管理や、地方のプロジェクトサイトへの物資の運搬など、業務は多岐に渡ります。これらのさまざまな面で企業での業務経験を生かすことができました。
 
活動期間中、新型コロナウイルスの流行の影響で、物資不足が深刻になりました。フランスからの調達が難しくなったことに加え、国内でのマスクやフェイスシールドの既製品が非常に品薄になってしまったのです。MSFのチームは急遽、地元の仕立屋と契約をして独自にマスク製造に動き、必要な数を調達。MSFの機動力を感じた経験でした(参考記事)
 
約8カ月の活動の中で、新型コロナウイルス感染患者のための大型の酸素発生器といった医療機器から、医薬品、発電機、ガソリン、車両部品、携帯電話、事務所の机、さらにはレインコートや長靴、文房具に至るまで、あらゆる物資を扱いました。
 
これらの物資がなければ、MSFは医療援助活動をすることができません。自分が医療行為に直接関わっていなくても、物資調達を通して医療活動をサポートできたことを実感しています。

スタッフのモチベーションを維持するために

物資の在庫確認をするスタッフ © MSF
物資の在庫確認をするスタッフ © MSF
サプライマネジャーとして特に私が担ったのは、物資調達に関わるチームメンバーのマネジメントです。新しく採用した地方のプロジェクトのスタッフへの研修やアドバイスも行いました。
 
MSFの活動を支えるのは現地スタッフたちであり、彼らが高いモチベーションを保って仕事ができる環境をつくることが、とても重要です。私は日本でのマネジャーとしての経験は少ないのですが、これまでの企業での仕事で出会った数々の上司を思い浮かべながら、「こんな時あの上司ならどうしただろう」と考えながらマネジメントにあたりました。
 
日頃意識していたのは、してくれた業務に対して感謝の言葉を伝えること、そして必ずスタッフの意見を聞くようにすることです。単に「これをやってください」と言われるよりも、「あなたはどうしたい?」と聞かれることで、自分が尊重されていると感じてもらえます。
 
また、それに対して常にありがとうと伝えることで、自分の仕事が役に立っていると感じてもらえたのではないかと思います。最終的に、帰国前には何人もの現地スタッフたちから「とても良いマネジャーだった」と言ってもらうことができました。 
チャドで共に活動した仲間たちと © MSF
チャドで共に活動した仲間たちと © MSF
ロジスティシャンは、物資調達のほか、電気や車両、建築、水と衛生……と幅広い業務をカバーしています。現場では、「人間の生活の基本のすべてを作っている」とも言えます。いま私は物資調達の面で活動に参加していますが、これからもっと知識をつけて、ロジスティシャンとしての力を高めてMSFの活動を支えていきたいと思います。 
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