海外派遣スタッフ体験談

復興途上のモスルで救急救命室を管理:岡田 まゆみ (救急医/イラク)

2018年03月02日

岡田 まゆみ

職種
救急医
活動地
イラク
活動期間
2017年10月~2018年1月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

2017年の春にイラクでの活動を終えて、また秋から参加したいと待機していました。9月に今回のプロジェクトについてのお話をもらい、即OKしました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

MSFのガイドラインを読んだり、薬剤についての復習をしたり、私の役割の中には入っていませんでしたが小児患者の診察もできるように勉強しておきました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

前回、カイヤラの活動に参加していましたが、現地でその話をすると、モスルでカイヤラを知らない人はいないのでコミュニケーションに非常に役立ちました。また前回の活動で小児科医に教えてもらった小児診療が、今回助けになりました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

ERの医師、看護師とともにランチ
ERの医師、看護師とともにランチ
モスルでは過激派組織「イスラム国」との激しい戦闘が起こりましたが、私が参加した時点では戦闘はすでに終わっていました。そのため戦闘の負傷者というよりも、壊滅状態になった西モスルの復興に合わせて、劣悪な衛生環境や経済的困難で体調を崩した人たちの診療に当たりました。小児の細気管支炎、成人の心筋梗塞や心不全などが症例でした。
 
私は救急救命室(ER)の医師として、ERの円滑運営やスタッフ管理を担当しました。他に産婦人科医、小児科医、看護師、助産婦など医療スタッフだけで8人の外国人派遣スタッフが参加していました。 
Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

朝7時に宿舎を車で出発し、病院に8時過ぎに到着します。午後3時半まで業務を行って、夕方5時前に帰宅します。

勤務外の時間は、宿舎にあるランニング・マシーンでランニングをしたり、部屋で勉強や読書をしたりしていました。毎週金曜日が休日で、それ以外にクリスマスなどは休日になりました。

Q現地での住居環境について教えてください。

前回は常時3人で1部屋をシェアしていましたが、今回は宿舎でひとり1部屋使用できたので、快適でした。また水や電気が途絶えることもなく、衛生面も良かったと思います。中東の冬は寒いので、今後、冬に活動に行く人にはセーターなど防寒具の十分な準備をお勧めします。みんな、風邪をひいていました(笑)。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

ERでただ1人のイラク人女性医師
ERでただ1人のイラク人女性医師
ERの患者数が10月当初に比べて終了時にほぼ倍の数にまで増えました。周囲の公立病院の状況を聞いてみると、経済的問題から薬剤やスタッフが不足し、給料の未払いなどで運営がうまくいっておらず、その影響でMSFの病院に来る患者数が増えたことも考えられました。
 
MSFの病院だけのことでなく、現地の病院やスタッフと連携して今後について真剣に考える必要があると思いました。 
Q今後の展望は?

外傷や心肺蘇生、災害医療などのインストラクターとしての国内経験を生かして、MSFでもトレーニングなどでインストラクターをやって欲しいと言われています。まずはそれらのコースに参加しながら、その合間に機会があればまた活動に参加したいです。フランス語の勉強も続けたいと思います。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

外国人派遣スタッフの多くが、現地の治安や仕事については問題ないけれど、人間関係に悩むそうです。現場には世界中の文化が集まりますので、もちろん許容できないこともあるかと思いますが、それを克服することも1つの「スキル」だと思って、ストレスをためないように心の準備をしておくことをお勧めします。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間2017年4月~5月
  • 派遣国イラク
  • 活動地域ニネワ県カイヤラ
  • ポジション救急医

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