海外派遣スタッフ体験談

HIVプロジェクトの現場から 貧困問題を抱えるマラウイで

2020年04月21日

畑井 珠恵

職種
アドミニストレーター
活動地
マラウイ
活動期間
2019年11月~2020年3月

看護師の夫と共に同じ国で活動。プライベートも大切にしながら、貧困問題を抱えるマラウイで、財務・人事マネジャーとしてHIVと結核(TB)の活動を支えた。

MSFで新しいことに挑戦したい

 長年、日本や世界の若者たちの国際交流やリーダーシップ育成の事業を扱う一般財団法人で、コーディネーターの仕事をしていました。この仕事は本当に天職だと思い、とても大好きな仕事でした。事業部長、そして事務局長としてのポジションも経験しましたが、20年勤務したのをひと区切りに、新しいことに挑戦してみたいと思うようになりました。現場で働くことの魅力を強く感じていたことと、「これから新しいことを始めたら、新たなキャリアを築けて、人生がさらに面白くなるのでは」と考えるようになったからです。MSFでの働き方や活動内容、そして理念について知り、確固たる信念をもった活動の中で、現場経験を積めるというのは魅力的だと感じて転職を決めました。これまでのマネジャーや管理部門での経験を活かせる「アドミニストレーター」という職種であれば、前職との共通点も多いため、MSFにも貢献できるのではないかと考えました。

前回、初めての活動となったイラクで実際に働き、新しいフィールドで、新しいことを学んでいくのは、とてもワクワクして面白いことだと思いました。自分でこの道を選び、MSFで新しい経験を積むことにより、さらに世界が広がり、本当に良かったです。 

活動の鍵となる「ピアーズ」の存在

HIV患者のコンサルと治療に当たる様子 © Tamae Hatai/MSF
HIV患者のコンサルと治療に当たる様子 © Tamae Hatai/MSF
 マラウイではチラヅルという村で、MSFが長年取り組んでいるHIV/TBプロジェクトで財務・人事マネジャーとして活動しました。
 
チラヅルのプロジェクトでは、HIVに感染した中でも特に重症の患者さんの治療と精神的ケア、そして啓もう活動に取り組んでいますが、数年前からは10代など若年層を対象とした活動にも力を入れています。というのも、HIVに感染していることが理由で、親が育児放棄をするネグレクトにあったり、薬の服用などに課題があったりすることなどが分かったからです。若年層に対してケアをしていくことで、エイズの発症を抑えようというのがここ最近の活動です。
 
活動する火曜日~土曜日の5日間のうち、平日は特に重症患者を対象とした治療にあたり、土曜日は学校がお休みなので、「Teen Club(ティーン・クラブ)」という若年層を対象にした活動をしています。子供たちに薬を飲むことの大切さを伝え、感染を予防するための性教育などをしていますが、その中で鍵となるのが、「Peers(ピアーズ)」と呼ばれるリーダーたち。当人もHIV感染者ではありますが、薬の服用によって普通の生活を送ることが可能になっています。彼らが、同じ立場にある「仲間(ピア)」として、若年層の患者への相談役、そしてロールモデルとして、病気に向き合っている若い子供たちを支えていました。 

貧困を身近に感じて

紙幣は最高額が2,000マラウイ・クワチャ(約300円)。<br> 銀行から100万円程度引き出すだけで、これだけの紙幣が <br> © Tamae Hatai/MSF
紙幣は最高額が2,000マラウイ・クワチャ(約300円)。
銀行から100万円程度引き出すだけで、これだけの紙幣が
© Tamae Hatai/MSF
活動を通じて、貧困の中で懸命に生きる現地スタッフの姿を度々目にしました。例えば、「祖母が亡くなったので村に帰りたいけれど交通費すらない。MSFは人道支援団体なんだから、なんとかしてくれ」と、現地スタッフが目に涙を溜めて訴えてくることもありました。
 
また、銀行のシステムが滞っていて、現地スタッフへの給与の支払いが遅れたケースもありました。そのようなときに「今日、娘の遠足があるのに、これでは参加費が払えない。娘が学校で恥をかいているから、なんとかしてほしい」と、相談にくる人もいましたが、「それは銀行の問題で、仕方ないので待ちなさい」と伝えることしかできませんでした。
 
マラウイでは、そもそも現金収入を得られる人口が多くはないため、収入がある人は、得た現金を親戚や家族に分けるのが習慣なのだそうです。MSFの現地スタッフも、クリスマス休暇で実家に帰るときは、なるべく多くの現金を持って帰って、親戚に分配するのだそう。したがって、どのスタッフも、休暇を終えて帰ってきた1月2日には、お金はすっからかん。MSFは年に一度だけ利用できる緊急対応の給与の現金前払い制度を導入していていますが、聞いていた通り、1月2日には給与の前払いを求めて、オフィスに40~50人駆け込んできました。 

MSFの認知度抜群!採用に400人の応募

いつも笑いの絶えなかったアドミン・チーム © Tamae Hatai/MSF
いつも笑いの絶えなかったアドミン・チーム © Tamae Hatai/MSF
ドライバーやソーシャルワーカー、心理カウンセラー、HIV専門の看護師などの求人募集も担当しました。募集をかけると、必ずどのポジションも300~400の応募があり、精査するのが大変でした。例えば2週間の公募の場合、最初の4~5日で200人分位の応募が来ます。数が多いので、良い人材を採用するためにスクリーニングも大変でしたが、それも2~3日で済ませる必要があります。一方で、これだけの応募があるのは、MSFが現場で活動を長くやっているため、人びとに認知されているからなのだと実感しました。
 
また、20年以上MSFのプロジェクトで働く現地スタッフや、定年退職を迎える現地スタッフにも出会いました。MSFで経験を積んだ現地スタッフが、他団体へ転職することも多く、人の入れ替わりが少なからずあります。前回のイラクでは、活動の縮小に伴う人員整理により、多くの現地スタッフの契約を打ち切らざるを得なかったので、長く働いているスタッフがいたことは、とても嬉しかったです。 

夫と同じ国で活動

日本食が恋しくなり、うどんを打って楽しんだ © Tamae Hatai/MSF
日本食が恋しくなり、うどんを打って楽しんだ © Tamae Hatai/MSF
 今回、MSFの看護師の夫と共に、マラウイでの活動に参加しました。夫婦で同じ国で活動することを望んでいたので、それが実現できて嬉しかったです。同じ国といえども、携わった活動は夫婦で別々。私はチラヅルという村、夫はブランタイヤという街で、異なるプロジェクトでの活動していました。チラヅルとブランタイヤの中間地点に宿舎があり、通勤は車でそれぞれ20~30分くらいの距離でした。
 
勤務日は、私が火曜日~土曜日、夫が月曜日~金曜日だったので、一緒に過ごせるのは日曜日くらい。それでも休日になると、互いの同僚たちと山に行ったり、バーベキューをしたりと、普段は一緒に仕事をしていないプロジェクトの同僚とも交流ができたのは楽しかったです。家族連れで活動に参加している同僚がいたのも印象的でした。今後も、夫婦でMSFの活動に参加したいと希望しています。 
 
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