海外派遣スタッフの声

2つの難民キャンプで薬剤を管理:畑井 智行

ポジション
薬局責任者・管理者
派遣国
タンザニア
活動地域
キゴマ
派遣期間
2015年11月~2016年1月

国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

前回のネパールでの活動から帰国後、すぐに2つのオファーがありました。1つは前回同様、医療チームリーダーとして新規外科系病院の立ち上げに関わるもので、もう1つがタンザニアでの薬剤師ポジションでした。私は看護師ですが、MSFの現場では看護師が薬剤管理を行うこともあり、過去にそういった経験を積んでいたこと、また新しいチャレンジをしたかったので、こちらに参加を決めました。

派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

前回の活動終了から短い期間でしたが、子どもたちと旅行に行ってリフレッシュしました。

準備は、アフリカで活動しやすい服装、非常食、雨具、ヘッドライトなどを準備しました。また、今回は年末を現地で過ごすため、クリスマスや正月の物も準備しました。(サンタやトナカイの帽子、着物などで、患者やスタッフがとても喜んでくれます)

過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

ニャルグス難民キャンプの診療所前で ニャルグス難民キャンプの診療所前で

今回、複数のプロジェクトをサポートする薬剤師のポジションでしたが、過去に看護師としてMSFの活動に参加した経験や、今回と同様に難民キャンプ内外で病院・診療所立ち上げをしたエチオピアでの経験がとても役に立ちました。

過去の活動中に薬の発注や使用量を調べるために作成・使用したシートやシステムも、今回使えるものがあり役に立ちました。過去の自分の経験は、各プロジェクトの医療チームリーダーや看護師たちと改善点を議論することにおおいに役立ったと思います。

また、薬局のスペース確保のための在庫管理、緊急時の準備、医療品現地調達、海外発注などを容易にしたのは、南スーダンで薬剤マネジャーを担った経験と、ネパールで活動した経験でした。今回の現場ではほかと異なる管理ソフト、発注ソフトを使用していますが、システムや業務内容は同様のため、過去の経験を応用して対応できました。この業務はその国の活動全体の運営を左右するため、とても役に立てたと思います。

今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

栄養失調の患者。笑顔を見せてくれた。 栄養失調の患者。笑顔を見せてくれた。

2015年5月、タンザニアではコンゴ民主共和国から逃れてきた難民たちのキャンプ内でコレラが蔓延(まんえん)し、MSFがプロジェクトを開始しました。その後、隣国ブルンジの政治情勢が悪化し、大勢の難民が逃げて来て、同じ敷地内に新たな難民キャンプ、ニャルグス難民キャンプを形成しました。

MSFはほかのNGOとともに活動し、栄養失調プログラムと移動診療所を担当しました。10月には難民がキャンプの許容収容数を超えたため、車で2時間の場所に新たなキャンプが作られました。このエヌドゥタ難民キャンプでは、MSFは唯一の医療援助団体として、病院を立ち上げ活動しています。

私はこの2つの難民キャンプを中心に、タンザニアにおけるすべてのプロジェクトの薬局管理を担当しました。

まず、医薬品の在庫用の倉庫をキゴマに作り、在庫の整理とともに、そこで働く現地スタッフの指導をしました。倉庫から各プロジェクトのオーダーに合わせて配送することができるようになり、プロジェクト内の小さな薬局スペースを有効活用できるようになりました。

キゴマの医薬品倉庫 キゴマの医薬品倉庫

以降は現地スタッフに運営を任せ、2つの難民キャンプのプロジェクトをサポートに訪れました。薬局管理や棚卸を現地スタッフとともに行い、問題点を指導・改善していきました。また、プロジェクト内の薬剤オーダー・供給システムや使用量データ収集、キゴマの倉庫へのオーダー・供給システム改善も行いました。

海外派遣スタッフの数は、キゴマの拠点に7人、キャンプの各プロジェクトに10人以上いました。現地スタッフの数は、キゴマの中央薬局とサプライチームに10人、経理が3人、食事や洗濯など宿舎のスタッフが6人、ドライバーが6人いました。

患者の症例は、マラリアが大流行で多数を占めます。重度の栄養失調、肺炎、衛生状態が悪いため下痢や皮膚病の患者も多くいました。ほかにも髄膜炎や肝炎など感染症の疑いのある患者もいました。精神科疾患、性暴力の被害者もおり、MSFの海外派遣スタッフがケアを担っています。またエヌドゥタ難民キャンプでは、助産師が分娩介助を行っています。

派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

お正月、タンガニカ湖畔の浜辺にて お正月、タンガニカ湖畔の浜辺にて

キゴマでは、毎朝7時前に起床し、別の住居に住んでいるチームメンバーやヨーロッパの運営本部とメールでの情報交換をしました。7時半から朝食。8時からミーティングや各プロジェクトのチームとメールや電話で情報交換をします。

その後、車で片道20分ほどの倉庫へ行き、薬剤管理業務を行います。昼食に一度戻りますが、夕方まで倉庫で過ごします。現地スタッフが行う配送準備を最終点検し、在庫整理、パソコンソフトや帳簿の入力指導をします。

夕方6時に宿舎に戻り、近くにあるタンガニカ湖(世界で2番目に深い湖といわれ、水の透明度は抜群です!)で少し泳ぎ、7時から皆で夕食。夜9時ごろまで皆でトランプをしたり、会議をしたりします。それ以降は、データ入力や報告書の作成、メール連絡などをしていました。就寝は夜11~2時くらいでした。

プロジェクトのある難民キャンプに滞在するときは、朝6時頃に起き、入浴後に朝食をとります。7時に宿舎を出て、チーム全員で、車で片道30~50分ほどかけて難民キャンプへ向かいます。到着後はオフィスでまずメールをチェック。その後は薬局やオフィスで過ごします。セキュリティー上の理由で午後5時には難民キャンプを出ますが、宿舎に戻る車中の時間も情報交換に使います。また、帰宅後も会議があり自家発電のため午後10時に消灯しましたが、データ入力や翌朝送るメールの準備などを行っていました。就寝は11~1時頃でした。

週に3日、各プロジェクト間の移動のため車が出ましたが、日曜日も移動日になっていました。緊急援助活動で派遣期間も短期なので、休みはほとんどとりませんでした。

現地での住居環境についておしえてください。

日本の支援で出来たおいしいお米モシという町で作られているため、名は「モシヒカリ」 日本の支援で出来たおいしいお米
モシという町で作られているため、名は「モシヒカリ」

キゴマは、町のはずれにあるタンガニカ湖沿いの建物を一部借りて宿舎にしていました。蚊帳付きベッドと棚だけの、小さいけれど十分な個室で過ごせました。水シャワーでしたが暑い日中は問題なく使用できました。夜遅くまで仕事をしても、湖の波の音が聞こえ心地よく過ごせました。

食事は豊富な淡水魚と野菜中心でした。タンザニアには日本の国際協力機構(JICA)の支援により改善したとてもおいしい米があり、大満足の食事内容でした。洗濯なども安心して任せられ、仕事に集中できたことはとてもありがたかったです。水・電気・インターネット、すべて問題なく使えました。

難民キャンプでは、ゲストハウスを借り切って住んでいました。ニャルグス難民キャンプでは、個室に蚊帳付きベッドと棚。トイレ・シャワーは共同。ドラム缶で湯を沸かしてくれ、バケツシャワーでした。食事はケータリングで毎日同じメニューのため、自分たちで作ることも多かったです。水はありますが、電気は自家発電、インターネットは使用できましたが、不安定でした。

エヌドゥタ難民キャンプでは、部屋数が足りず、男女共同もたまにあるルームシェアでした。蚊帳付きベッドのみのシンプルな部屋。朝晩は寒い地域のため、ホットシャワーが各部屋にありありがたかったです。食事は専用のコックさんが多様な料理を作ってくれ、洗濯、電気ともに問題なく過ごせました。インターネット事情はやはり不安定でした。

活動中、印象に残っていることを教えてください。

海外発注の物資がようやく届き倉庫へ荷卸をする 海外発注の物資がようやく届き倉庫へ荷卸をする

MSFは基本的に薬剤をヨーロッパから輸送していますが、タンザニアでの輸入の際、税関での手続きに時間を要しました。後方支援が遅れる間にも、難民は毎日数千人も国境を越えてきて、患者数も増加します。このため、医薬品不足に陥りました。追加で海外発注も行いますが、それでも足らず、現地購入が必要になります。タンザニアでは偽物薬が多く、滅菌シリンジや注射針もコストを下げるため非滅菌である場合が多いため、信頼できる薬品業者の調査も行いました。

ほかのNGOや政府組織、地元病院も同様に在庫不足に陥っており、お互いに連携して乗り切りました。

今後の展望は?

今回のタンザニアの活動後に、ドイツで不安定情勢下における活動に関するトレーニングを受けました。緊急援助の立ち上げ時に、医療チームリーダーとして活動するための基礎を学びました。このトレーニング中に、すでに次のオファーを頂いています。出発までは休養にあてます。

自分自身の現在の目標は、MSFの緊急派遣チームに参加し、緊急援助を中心に活動することです。

今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

過去の記事にも書いていますが、まずはチャレンジしてみることをお勧めします。壁にぶつかって、試行錯誤の繰り返しで、楽なことはあまりありませんが、できることが少しずつ増えていき、やりがいと充実感も最後についてきます。

MSF派遣履歴

派遣期間
2015年7月~2015年10月
派遣国
ネパール
活動地域
チャーリーコット
ポジション
医療チームリーダー
派遣期間
2015年5月~2015年6月
派遣国
ネパール
活動地域
カトマンズ
ポジション
看護師
派遣期間
2015年3月~2015年5月
派遣国
南スーダン
活動地域
マラカル
ポジション
看護師兼薬剤マネジャー
派遣期間
2014年12月~2015年2月
派遣国
リベリア
活動地域
モンロビア
ポジション
看護師
派遣期間
2014年3月~2014年9月
派遣国
エチオピア
活動地域
ガンベラ州
ポジション
看護師
派遣期間
2013年8月~2014年2月
派遣国
南スーダン
活動地域
アウェイル
ポジション
看護師