海外派遣スタッフの声

自分に足りないスキルを認識して次の派遣へ:佐藤 聖子

ポジション
麻酔科医
派遣国
イエメン
活動地域
アルカイダ
派遣期間
2017年1月~2017年3月

国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

MSFに参加を始めた当初から年に1回は活動に参加し続けていくつもりでいました。今回、勤務先との調整に難渋し、最終的に退職しての参加になりました。

派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

退職直後の派遣となり、また派遣後はすぐに長崎大学熱帯医学研究所での研修が決まっていたので、日常業務とそれらの手続きに追われ、正直、派遣のための準備の時間はほとんどありませんでした。オンライン英会話は細々と続けていました。

過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

今回はイエメンへの派遣でしたが、前回のアフガニスタンでの活動も同じイスラム教で文化や風習が似ており、すぐになじめました。前回感じた反省点は改善しようと心がけて臨みました。

今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

病院の屋上から見える町並み 病院の屋上から見える町並み

戦闘が続くイエメン南部のタイズという町から20kmほど離れた位置にある病院で、主に救急と外科診療を提供するプロジェクトでした。タイズは反政府勢力に包囲されており、患者さんがなかなかMSFの病院にたどり着けないというジレンマを抱えていました。紛争の被害者は全患者の2割程度で、銃創や爆発による外傷や熱傷、紛争に起因しない症例では交通外傷、虫垂炎、帝王切開などが多くありました。

海外派遣スタッフは医療職では外科医、整形外科医、麻酔科医、救急医、病棟看護師、手術室看護師、医療チームリーダーで、非医療職ではプロジェクト・コーディネーターとアドミニストレーターでした。MSFでは非常にまれなケースですが、一時期医療系スタッフの5人を日本人が占め、手術室に現地スタッフより日本人の方が多くいるという事がありました。通常は現地スタッフも含めて英語で会話していましたが、日本語が使えたおかげで細かい情報のやりとりや緊急時のとっさのコミュニケーションはとてもやりやすかったです。ただ、1人ずつ任期を終えて帰っていくのを見送るのはさみしかったです。

麻酔科医の仕事は手術麻酔以外には2床ですが集中治療室(ICU)患者のケアや術後の全身管理(抗生剤、水分管理、疼痛<とうつう>管理)、たまに救急救命室(ER)のお手伝い(呼吸管理やライン確保)などでした。

派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

小さな手術から緊急手術まで多くの症例に対応 小さな手術から緊急手術まで多くの症例に対応

朝7時半から全体ミーティング、その後手術室ミーティングの後、8時から医療関連のミーティング。それから現地の麻酔科医と分担して手術室担当と回診担当にわかれます。1日ごとに交代で行っていました。

症例数は日によってまちまちで、昼過ぎにはその日の業務が終わってしまう日もあれば、予定は1件だったはずなのにいつの間にか10件も緊急手術が入っていたりもしました。小さな手術が多く、それも含めると平均して1日10~13件程度です。

予定手術の多い日は昼食前におやつの時間を設け「PTT(ポテト&ティータイム)」と呼んで現地スタッフと一緒に楽しんでいました。これは日本人看護師さんの発案でしたが彼女が任期を終えるとなくなってしまい、残念でした。

宿舎は病院の隣にあり、活動中は治安上、敷地内から一歩も外に出ることはできませんでしたが、休日には同僚たちと屋上でランチをしたり、映画をみたり、イタリア人の看護師さんとガールズトークを楽しんだり、まったくストレスにはなりませんでした。

現地での住居環境について教えてください。

個室が与えられ、ネット環境も割とよく、快適に暮らしていました。気候も暑からず寒からずでちょうどよく、日本の真冬の寒さと花粉のシーズンを回避できてラッキーでした。

食事(特に夕食)はワンパターンで不満のあるスタッフもいたようですが、日本での普段の食生活が"貧相"な私は十分おいしくいただきました。

活動中、印象に残っていることを教えてください。

送別会で用意してくれたケーキ 送別会で用意してくれたケーキ

仕事面では自分に不足している部分を痛感する毎日でした。日本でいかに他科の先生に依存していたかよくわかりました。たとえば帝王切開で産まれた800gの新生児の管理と重症子癇(しかん)発作の母体の管理を小児科医と産婦人科医のいない中行わねばならないこともあり、非常に難しさを感じました。

日本では、一般的な外科症例の術後も外科の先生が管理することが多く、基本的な術後管理の知識の不足も感じました。

印象に残っているのはなんといっても現地スタッフのホスピタリティーです。私の勤務最終日には送別会を開いてくれ、決して生活に余裕があるわけではないのに、蜂蜜、コーヒー、スカーフ、置物など持ちきれないほどのプレゼントや、「We will miss you(寂しくなります)」と書かれた大きなケーキも用意してくれました。

過去にも日本人スタッフが多く関わっているプロジェクトで、先人たちの功績により最初から日本人への印象がきわめてよかったことはありがたかったです。

今後の展望は?

現在(2017年5月)は熱帯医学の研修中です。終了後は別の病院に就職予定ですがMSFの活動を続けることを条件にしてもらっています。次回派遣までに、今回不足に感じた部分、特にICU管理をしっかり学び直したいです。

今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

2016年にMSF日本が開催した外科系セミナーに参加して、やる気も技術もあるのに勤務先との関係でなかなか応募できない方が少なからずいるのを感じました。自分の気持ちが整ったら、思い切った選択も考えてもいいかと思います。

MSF派遣履歴

派遣期間
2015年9月~2015年11月
派遣国
アフガニスタン
活動地域
カブール
ポジション
麻酔科医