海外派遣スタッフ世界の現場から

はしかの大流行 死亡率が高い中、「バイバイ」と元気に帰っていく子どもを見る喜び

松本 明子

ポジション
医療コーディネーター
活動地
コンゴ民主共和国
活動期間
2019年11月4日~2020年6月14日

世界最大級のはしかの流行が続くコンゴ民主共和国で、医療チームを統括する医療コーディネーターとして、ジャングルの中での集団予防接種や、重症患者の治療、スタッフのマネジメントなど、さまざまな業務を担当した。

コンゴ民主共和国ではしかが大流行 

はしかの治療を受けた子どもたち 🄫 Assal Didier

はしかの治療を受けた子どもたち 🄫 Assal Didier

2007年に国境なき医師団(MSF)に登録して以来、タンザニアネパール南スーダンフィリピンなど数多くのプロジェクトで活動しました。今回は医療コーディネーターとして、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)のはしか緊急対応プロジェクトに参加しました。

コンゴ民主共和国では、2018年12月からはしかが流行し、2019年をピークに7,000人以上の子どもが亡くなりました。しかし、公表されている死亡数は医療機関で集計された数字であり、実際には医療機関にかかることなく死亡した子どもを含めると、その2~3倍の数が亡くなったと推測されます。このはしかの大流行を終息させるため、MSFはチュアパ州のブエンデ、南ウバンギ州のゾンゴなどの地域で、地元の保健省と協力して活動しています。 

へき地での集団予防接種 ロジスティシャンとの連携

集団予防接種キャンペーン初日。
バイクでワクチンとチームを運ぶ 🄫 Assal Didier

集団予防接種キャンペーン初日。<br>
バイクでワクチンとチームを運ぶ 🄫 Assal Didier

医療コーディネーターとしての派遣でしたが、結果的には医療チームリーダー、看護チームリーダー、薬剤師、ヘルスプロモーターなどさまざまなポジションをカバーしながら、病院のマネジメントや、地元の保健省との交渉、患者さんの病院搬送の決断、海外派遣スタッフや現地スタッフのマネジメント、薬剤や予防接種の管理、首都にある事務所と連携しながら、他のNGO団体や国連へのアドボカシー活動など、あらゆる業務をこなしました。

集団予防接種のために、チームはジャングルの中を4~5時間歩いて目的地に行くこともありました。はしかの予防接種も、へき地と都市ではアプローチが違います。ターゲットの人数や年齢、はしかの流行状況、はしか以外の予防接種の実施や栄養失調のスクリーニングなど、いろいろと決断する必要がありました。

また、物流を担うロジスティックチームや人事を担当するアドミニストレータ—との連携も重要です。2~8度以下で管理する必要のあるワクチンには冷蔵庫、アイスパックを作るための冷凍庫が必須で、ロジスティシャンの活躍があって初めて集団予防接種が可能になります。10万人の予防接種を7日間~1カ月で行うので、保存状態の良いワクチンを首都、キンシャサからへき地まで運ぶために、飛行機をチャーターし、70台のバイクや木製の小さい船をレンタルしました。一つのチームは、ロジスティシャン1人、医療スタッフ6人からなり、集団予防接種の3日前からヘルスプロモーションチームが現地に知らせて回りました。 

新型コロナウイルス流行による弊害

チュアパ州は道路でのアクセスができないため、<br>
スタッフはチャーター機で移動する 🄫 Assal Didier

チュアパ州は道路でのアクセスができないため、
スタッフはチャーター機で移動する 🄫 Assal Didier

活動中、新型コロナウイルス感染症の流行は想定外の出来事でした。南ウバンギ州の都市部はラジオやSNSが普及していたため、新型コロナウイルスに関する質問がMSFにもたくさん寄せられました。

またはしかの予防接種であるにも関わらず、「MSFがコロナのワクチン接種対応をしている」という誤った情報が流れることもありました。流行後は予防接種の会場で一定の距離を保って並んでもらうなど、感染予防策を取りながら活動しました。

スタッフが州をまたいで移動するときには、飛行機をチャーターしなければ動けないような場所です。けれどもコロナ流行後は飛行機の手配が難しく、移動制限も重なり、スタッフのストレスや不満が高まって苦労することもありました。  

医療アクセスが悪く、高い子どもの死亡率

夜間に入院している子どもの治療にあたる 
🄫 Assal Didier

夜間に入院している子どもの治療にあたる <br>
🄫 Assal Didier

コンゴでは、医療アクセスが大きな問題です。一般的な国民の1日の収入は1ドル未満ですが、MSF以外の医療施設での治療は2ドル以上かかることがあり、医療を受けることができない人が多くいます。多くの人は自給自足で、収穫したマンゴーを1日がかりで自転車を押して市場へ行って売り、現金を得るような生活です。水を買うにもお金がいるので、水を買えない家の子どもは川の水を飲むしかありません。

MSFの病院では無料で医療を提供しますが、病院まで来る費用を賄えず、1日かけて歩いてくる人も少なくありませんでした。搬送されてきた中の40%の子どもたちは、病院に到着するのが遅かったため、到着後12時間以内に亡くなりました。

死亡した子どもたちの大半が、入院費、治療費、移動のための交通費が払えない家庭の子どもたちです。MSFが無料で医療を提供していることを知ってからも、病院までの距離が遠いため、重篤な状態で搬送されることが多くありました。 

「もう遅かった」と言われ涙

ボートを使ってのアウトリーチ活動 🄫 Assal Didier

ボートを使ってのアウトリーチ活動 🄫 Assal Didier

はしかに一度かかると、すべての免疫がリセットされてしまうので、すでにジフテリアや肺炎球菌の予防接種をしていても、もう一度予防接種をしなければならない状態になり、病気にかかりやすくなります。

重症栄養失調、呼吸器疾患、2次感染による敗血症、マラリアによる慢性貧血、重症はしかなど、さまざまな疾患の子どもたちの治療にあたりました。この地域では、はしかや、はしか後の疾患による死亡率が高く、大人も感染するような状況でした。

場所によっては道路がないため車での移動ができず、バイクやボートでの移動。また携帯が使えず衛星電話でコミュニケーションを取る必要がありました。移動に4~5時間かかるのは当たり前です。アウトリーチ活動を始めた初日、地域の人びとにインタビューをしたところ、ほとんどの家族が、子どもをはしかのために亡くしていました。ある父親に「保健省も誰も来てくれなかったところにMSFが来てくれてありがたい。でも遅かったよ」と言われたことに、スタッフみんなが悲しい思いをしたこともあります。 

寄付者の力を借り、ポジティブに活動

ネズミ対策のために家主さんが連れてきた子猫が、
職場の癒し🄫 Assal Didier

ネズミ対策のために家主さんが連れてきた子猫が、<br>
職場の癒し🄫 Assal Didier

悲しい時は他のスタッフと一緒に泣きました。悲しい時は泣く、怒る時は怒る、笑える時は笑う。我慢していてはやっていけません。この環境で育ってきた現地スタッフと違い、海外から来る派遣スタッフは、活動地の現状にショックを受けてネガティブになってしまうことも多いです。

それでも前向きに、自分たちがやってきたことの中で、成功したことや、改善できることに目を向け、ポジティブな面を見るように話しました。多くの子どもたちが亡くなりましたが、多くの子どもたちが治癒して元気に退院していきました。笑顔で「バイバイ」と退院していく子どもたちを見るのが何よりも嬉しいです。

今回のプロジェクトのように、何十台もバイクを一気に用意して集団予防接種を行うなど、現場で必要な対応を迅速に行えるのは、多くの方からの寄付があるからです。いただいた寄付のおかげで実行できたはしかの集団予防接種キャンペーン後、チュアパ州・ブエンデでは、はしかにかかる人の数がゼロになりました。感謝の気持ちを常に持って活動しています。 

※医療コーディネーターは、現場で経験を積んだ医療系のスタッフが担います。松本は看護師として2007年よりMSFで活動しており、これまでの経験や実績が評価され現在は医療コーディネーターを担っています。 


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