パレスチナ・ガザ地区
#人道援助は紛争の道具じゃない
2025.06.13

ガザの人びとが切実に人道援助を必要とする中、イスラエルと米国は「人道援助」の名目で物資の配布を管理する計画を進めています。これは、パレスチナ人の民族浄化を進めるための一つの手段に過ぎません。
国境なき医師団(MSF)は、このような計画を断固として拒否し、強く抗議します。人びとの命を守るために必要な水、食料、医療などは、政治や紛争の道具にされるべきではありません。
【動画】#人道援助は紛争の道具じゃない──一緒に声をあげましょう
いまガザで何が起きているのか──。MSF日本の事務局長、村田慎二郎が、ガザでイスラエルが導入しようとしている物資配布制度の問題点を解説。MSFスタッフが人道援助は紛争の道具にされるべきではない、と訴えます。
国境なき医師団は、ガザの人びとの尊厳を守り、安全に継続して、必要な物資や医療などの援助を届けること。そして即時かつ持続的な停戦を求めています。ガザで起こっていることを知り、一緒に声をあげましょう。
「人道援助が残された唯一の希望」──停戦と攻撃再開のはざまで日本人看護師が見たガザの現実
悪化するガザの人道状況──現地からの報告
【動画】ガザ:繰り返される退避要求
3月に停戦が破られた後、2回避難しました。停戦前は9回──。
ビラル・アブサーダ MSFの看護師
多くを失いながら避難を続ける中、MSFの看護師でもあるビラル・アブサーダは、過去の思い出が詰まったハードディスクを持ち歩き、「思い出が支えとなり、私に力をくれるのです」と語ります。
自らも避難生活を送りながら、MSFで活動を続けるパレスチナ人のスタッフたち。彼らの目に映る、現在のガザを伝えます。
国境なき医師団(MSF)の訴え
ガザはパレスチナ人と人道援助スタッフの「集団墓地」と化しています。
- イスラエル軍は、空、陸、海からの攻撃を再開・拡大しています。攻撃はガザで働く人道援助従事者や医療従事者の安全をも無視したもので、多くの命が失われています。
ガザは、パレスチナ人とその支援をする人びとの「集団墓地」と化しています。今も破壊と住民の強制移動は繰り返されています。安全な場所はありません。
アマンド・バゼロール MSFのガザ緊急対応コーディネーター

即時かつ持続的な停戦を求めます。
- イスラエル当局および軍は、ガザのパレスチナ人に対し、集団的懲罰と民族浄化作戦を行っています。イスラエルは、強制移動や大量殺りくなどを通じ、パレスチナ人の暮らしに必要な基盤を組織的に破壊しています。
- MSFはイスラエルの同盟国に対しても、パレスチナ人の生活を破壊する行為への加担を止めるよう強く求めます。

パレスチナ人と人道援助スタッフの保護を求めます。
- 人道援助スタッフや医療従事者は、繰り返し攻撃されています。ガザでの紛争激化以来、1400人以上の医療従事者と、パレスチナ人を中心に少なくとも418人の人道援助従事者が殺害されています(2025年、国連人道問題調整事務所)。
- MSFのスタッフも11人が攻撃により命を落としました。MSFは人道援助に携わるスタッフへの殺害を最も強い言葉で非難します。


かつてないほど長く続く、ガザ封鎖の解除を求めます。
- 3月2日以降、ガザには人道援助も基本的な物資もほぼ届いていません。イスラエル当局は、紛争が激化して以来、最長の完全な包囲を敷き、パレスチナ人から食料、水、医療、避難場所などを意図的に奪っています。このような、非人道的で無差別な政策は集団的懲罰であり、重大な国際法違反です。
- パレスチナ人の暮らしと命はいま、イスラエル当局の思うままです。水、食料、燃料へのアクセスは、ガザ全域で危機的なレベルに達しています。
イスラエル当局はガザを封鎖することで、人びとを耐え難い苦しみへと追い込んでいます。意図的に人びとに危害を加えることは、ゆっくりと死に至らせるようなものです。封鎖はすぐに解除されなければなりません。
ミリアム・ラルーシ MSFのガザ緊急対応コーディネーター

食料や医薬品、そして人道援助を紛争の道具にしてはなりません。
- 国連によると、3月2日にイスラエル当局が行った全面封鎖の結果、ガザ住民の100%が飢餓の危機にさらされています。
- 5月19日以降、イスラエルはわずかな量の物資搬入を許可しましたが、それは封鎖が解除されたと見せかけるためのカムフラージュに過ぎません。
- MSFは、退避要求や民間人の命を奪う爆撃だけでなく、このような方法で援助を紛争の道具にすることは、人道に対する罪となり得ると訴えます。
数カ月間も厳しく封鎖した後にわずかな量の援助物資を許可するというイスラエル当局の決定は、ガザの人びとを飢餓に追いやっているという非難をかわしつつ、実際には相手を死の淵で生かしておくという意図の表れです。この計画は、援助をイスラエルの軍事目的のための道具として利用するものです。
パスカル・コワサール MSFの緊急対応コーディネーター
- 6月1日、ガザに新設された「ガザ人道財団(GHF)」の配給所で食料を待っていたパレスチナ人数十人が殺害され、数百人が負傷しました。MSFはこの援助システムが非人道的であると強く非難します。
今日の出来事は、新しい援助システムが非人道的で、危険で、極めて非効率的であることを改めて示しています。民間人の死は本来防げたはずです。人道援助は、安全かつ効果的に行う能力と意志を持った人道援助団体のみが行うべきです。
クレア・マネラ MSFの緊急対応コーディネーター

【動画】それでも、生きる──ガザで避難生活を送る母娘たち
世界中の人たちはこの状況を知っているはずです。皆さんはこんな暮らしに耐えられますか──。
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Ⓒ Motassem Abu Aser 一家の祖母ハナンさんは、火を絶やさない。紛争で傷ついた彼女の手が生み出すのは、家族全員を養うパンだ。
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Ⓒ Motassem Abu Aser サハルさんは、地面にひざまずき木の破片で火を起こす。ガスも電気もないため、日々の食事の準備にも困難が伴う。
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Ⓒ Motassem Abu Aser ノートを胸に抱きしめる、ディーマさん。爆撃と避難の中、彼女はそのページを自分の周囲から失われた色で埋めていく。
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Ⓒ Motassem Abu Aser ディーマさんの母、アンワルさんがキャンプに暮らす女性たちと話す。避難生活においても、互いにつながりを感じ、日常を思い出すことができる貴重なひとときだ。
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Ⓒ Motassem Abu Aser こちらをじっと見つめるヌールさん。彼女の表情には、イスラエルの空爆によって亡くなった妹の記憶が宿る。悲しみとともに、静かな強さがにじみ出る。
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Ⓒ Motassem Abu Aser 仮設テントで共にする食事。2025年3月のラマダンの間、サハルさんは自身の空腹は顧みず、子どもたちが先に食べるのを見守った。
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Ⓒ Nour Alsaqqa/MSF がれきの中で野草を探す、ハナンさんと彼女のひ孫。伝統的な食材の野草が、封鎖と紛争による物資不足の中で貴重な栄養源となっている。
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Ⓒ Nour Alsaqqa/MSF がれきと仮設テントに覆われたベイト・ラヒヤの風景。がれきの間から育つ野草が、今では人びとの数少ない食料源の一つだ。
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Ⓒ Nour Alsaqqa/MSF 野草を摘むハナンさん。2025年3月2日から始まったガザ封鎖により援助が制限されているため、避難した人びとは採集に頼る生活を送っている。

トップ写真:Ⓒ MSF