海外派遣スタッフ体験談

薬局はどう立ち上げる? 薬剤師として初めての経験も

2021年09月18日

佐藤 功大

職種
薬剤師
活動地
リビア
活動期間
2020年7月~2021年4月

神奈川県の総合病院で、病棟薬剤師として勤務。その後青年海外協力隊での活動を経て、国境なき医師団(MSF)に参加。今回が初めての派遣で、リビアにて移民への医療援助や薬局の立ち上げに携わった。(写真左が本人)

食料も足りない……移民の収容センターでの訪問診療

小さいころから漠然と、海外で働くことに憧れていました。その思いを行動に移したのは、神奈川の総合病院で病棟薬剤師として勤務して5年が経った頃です。まずアフリカのマラウイで青年海外協力隊の活動に参加し、その経験をもとに、2020年7月からMSFに参加しました。信頼する先輩がMSFを高く評価していたことが、MSF応募の後押しになりました。

ホムスの収容センターの様子=2019年 <br> © Aurelie Baumel/MSF
ホムスの収容センターの様子=2019年 
© Aurelie Baumel/MSF
派遣されたのは、リビアのミスラタという海沿いの町。MSFはリビアで、アフリカや中東から来た移民の支援をしています。
 
移民の人びとが置かれた状況は過酷です。生きるために欧州を目指し、やむなく密航船で地中海を渡ろうとすると、沿岸警備隊に捕らえられて収容センターに入れられてしまうのです。MSFはミスラタの収容センターで医療援助を行う唯一の団体として、週2回訪問診療を行っていました。
 
私は薬剤師として、ニーズに応じて必要な薬を訪問診療のチームに渡す役割を担いました。収容センターの環境は劣悪で、皮膚病や栄養失調を患う人も少なくありません。みな満足な食事を取れていないため、全員にバナナを渡し、低栄養の人には栄養治療食を提供しました。

新しい薬局の立ち上げを初めて経験

薬局で薬の在庫を確認 © MSF
薬局で薬の在庫を確認 © MSF
リビアでの医療援助のニーズは高く、MSFはさらに2カ所で新たに活動を始めることになりました。そのため、新しいプロジェクトに必要な薬局を立ち上げるサポートを行いました。ゼロから薬局を作るのは、私にとって初めての経験です。
 
「どのくらいの広さが必要?」「棚はいくつ用意する?」「鍵付きの棚は?」など、提示された図面をもとに、ロジスティシャンとディスカッションしながら決めていきました。
 
薬の在庫を管理するシステムの導入や、薬の出し入れの方法の指導も行いました。意識したのは、薬剤師以外のスタッフも分かりやすいしくみにするということです。MSFの活動地では、必ずしもすべてのプロジェクトに薬剤師がいるわけではなく、看護師など薬剤師以外のスタッフが薬の在庫管理を担うこともあります。そのため、定期的に棚卸をすることや、オーダー用紙を使って目に見える形で数を記録することの大切さを伝えました。
 
薬局が完成して薬が並べられた時は、本当に嬉しかったです。医療チームから注文が入って無事に薬を渡すことができ、大きな達成感を感じました。 

決して薬を無駄にしないために

業務をボードに可視化して情報共有をスムーズに <br> © MSF
業務をボードに可視化して情報共有をスムーズに 
© MSF
必要な薬を患者さんに届けることができるのは、多くの方からの寄付のおかげです。だからこそ薬剤師として、医薬品を決して無駄にしてはいけないと考えています。
 
薬は使用期限を迎えると使えなくなってしまうため、複数の医療施設の間で薬の在庫量を共有し、期限内に有効に使えるよう協力し合いしました。また、業務計画や薬の到着予定をホワイトボードで可視化することで、同僚との情報共有をスムーズに行って業務効率を上げ、発注ミスなどが起こらないよう工夫しました。 
多様な国籍のスタッフとの共同生活。<br> 週末には餃子やお好み焼きを作ってふるまった <br> © MSF
多様な国籍のスタッフとの共同生活。
週末には餃子やお好み焼きを作ってふるまった 
© MSF
今回が初めての活動で、出発前は自分が海外の現場で薬剤師として役に立てるだろうかと不安でした。しかしこの9カ月間、現地スタッフや世界各地からのスタッフと一緒に活動する中で大きな刺激を受け、海外援助を行うことに誇りを感じることができました。
 
またMSFの活動に参加し、いつか自分でなければできない仕事ができるようになるまで成長したいと思います。 
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