海外派遣スタッフ体験談

医療チームとロジスティックの両輪で乗り越えた危機:長嶺 亜香利

2018年11月13日

長嶺 亜香利

職種
薬剤師
活動地
南スーダン
活動期間
2018年3~9月

Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?

はじめは、ただ英語で働く環境に身を置いてみたい(あわよくば薬剤師として働けたらラッキー)という考えが強く、特別NGOやMSFに興味があったわけではありませんでした。

ただ、応募前にMSFについて調べるにつれて活動内容の素晴らしさを知り、将来に必ずプラスになると思ったこと、文化や環境の垣根を超えて1人の医療者として何か貢献したいと思ったことから参加を決意しました。 

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

 MSF登録後は語学力向上のため、毎週末、英語を数時間勉強していました。派遣先が決まってからは、事前にシェアされた資料を読み、その時点で理解できることはしっかり頭に入れて活動に向かいました。

前職の勤務期間終了から出発まで2週間ほど空いたので、友人と会ったり、おいしいものをたくさん食べたり、とにかく楽しく過ごしました。

Q今までどのような仕事をしてきましたか?また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

大学卒業後、病院薬剤師として総合病院で3年間働きました。病院の方針で、薬剤師も臨床に近い現場で働き、シリンジポンプといった医療器具の使い方や基本的な病態などの知識を得ました。また、医師や看護師とのコミュニケーションも多くあったため、活動地でも他職種と関わることやチームで働くことへの抵抗はありませんでした。 

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

薬局チームと © MSF
薬局チームと © MSF
3月末~5月中旬は、ボートでしかアクセスできないオールド・ファンガクという地域で働きました。外科プロジェクトが立ち上がったばかりの時期で、銃創例や帝王切開といった外科症例も運ばれてきました。日本とは比較ができないほど過酷な衛生環境のため、日本では術後に普段使わないような抗菌薬も感染コントロールのため併用していました。 

薬局は小さなテントでスペースが限られ、首都ジュバから必要最低限の医療物資を毎週輸送してもらっていました。薬局内の在庫や過去の消費量、患者数の推移などから分析して優先順位を付け、さらに総重量を考慮して発注するのですが、雨の影響で飛行機が着陸出来ない事もしばしば。その都度、代替薬などを医療チームのメンバーらと一緒に考えました。
マラリアのピーク時には休日出勤したことも © MSF
マラリアのピーク時には休日出勤したことも © MSF
その後イダ/ヌバという、国境をまたぐ2つの活動地をまとめたプロジェクトに移り、5月下旬から9月末まで働きました。イダとヌバの間は車で3時間、雨期で道路の状態が悪いと6時間ほどかかりました。このプロジェクトでは、イダにあるメインの薬局と、1.5ヵ月分の薬剤を保管するヌバの中間薬局のマネジメントを任されました。8月下旬からマラリアが急増していったため、両方の薬局で薬剤不足にならないよう首都の薬局コーディネーターと密に連絡をとりあい、必要があれば寄贈の依頼等を行いました。 
Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

車が泥にはまって1時間待ちに…… © MSF
車が泥にはまって1時間待ちに…… © MSF
朝7時30分ごろからメールをチェックし、夕方までメディカルオフィスや薬局内で勤務しました。両方のプロジェクトとも、週に1回のメディカルミーティングで医療活動の最新情報を共有していました。

ヌバではアウトリーチ活動があり、拠点から離れた場所に7ヵ所の移動診療所を開いていました。朝8時30分ごろに車で出発して2~3ヵ所回り、戻るのが夕方5時になることもありました。移動時間はかなり長かったです。 
おいしかった宿舎の食事 © MSF
おいしかった宿舎の食事 © MSF
勤務時間外は、テントでお気に入りのアニメや映画を観たり、リビングでチームメンバーと映画を観たり。

電気も何も使わずできる暇つぶしとして、日本から持参した本を参考に切り絵を作ったりもしていました。チームのみんなに見せると喜んでくれ、仲良しのドクターが帰国する際はプレゼントしました。

食事の時間は自由ですが、みんなで過ごす事もリフレッシュになるので、一緒に食べる事が多かったです。

週末はBBQもありました(とてもおいしかったです)。その他、みんなで音楽を聴いたり、仲の良かったドクターと2人でフェイスパックをしたり、歌いながら散歩したりしていました。 
Q現地での住居環境について教えてください。

活動中に滞在していたテントの内部 © MSF
活動中に滞在していたテントの内部 © MSF
どちらのプロジェクトもテント生活でした。広さは問題なかったのですが、入口が閉まらないテントだったため虫やネズミが入ってくる事もしばしばありました。ただ、ベッドに蚊帳が設置されていたので何とか過ごせました。

食事は味が自分の好みに合っていたのか、とてもおいしかったです。トイレは水洗式ではありませんでしたが、臭いもあまり無く不便はありませんでした。 
Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

チームのみんなと © MSF
チームのみんなと © MSF
イダ/ヌバに異動後、1度安全面のトラブルで移動制限がかかり、月に1度の薬局間の輸送(イダのメイン薬局からヌバの中間薬局へ)がスケジュール通りに行えない事がありました。在庫不足では診療所への医療物資の輸送もできず医療活動に大きく影響するためとても不安でしたが、プロジェクト・コーディネーターが毎日のミーティングで常に情報を共有してくれて安心できました。しばらく移動制限が続いた後、ある日の夕方に移動の制限が解除されると、翌朝には薬局のチーム、ロジスティック・チームが輸送トラックの手配をし、無事に医療物資はイダからヌバの薬局に到着、活動は滞ることなく済みました。 
イダから見えた空 © MSF
イダから見えた空 © MSF
どんな状況でも冷静さを保つ事、密なコミュニケーション、チームワークを大切にすることの重要性を改めて強く感じました。

また、私たちの活動は決して医療チームだけが活動しているわけではないこと、ロジスティック・チームはサポートではなく、私たちの活動を行うに欠かせない、対の車輪のような存在である事を学びました。 
Q今後の展望は?

まずはゆっくり休んで、リフレッシュ後、もう一度参加したいと考えています。それまでに熱帯医学の知識をつけたいと考えています。 

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

ドネーションの薬を持って © MSF
ドネーションの薬を持って © MSF
薬剤師は社会経験2年以上という制限があり、求められる経験もさまざまですが、病院勤務の経験がMSFの活動に生きる場面は必ずあると思います。私自身はまだまだ経験不足ですが、チャレンジしてみて良かったと思っています。悩んでいる方々も、自信を持って、チャレンジしてみてください。

また、ストレスマネジメントとして活動地でもできそうな趣味を何か持つと良いかもしれません。 

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