海外派遣スタッフ体験談
文化の違いを乗り越え、共に考えてベストを尽くす:國吉 悠貴
2018年07月24日國吉 悠貴
- 職種
- 助産師
- 活動地
- 南スーダン
- 活動期間
- 2017年12月~2018年6月

- Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?
看護学生の頃に国際支援活動をしている人の話を聞く機会があり、その時から私も国際協力の現場で働きたいと思っていました。助産学生の時に、国際協力の道に進む上でどのような団体があるのか調べてMSFを知り、興味を持ちました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?
MSFに参加する前に青年海外協力隊(JICA)で中米エルサルバドルに2年間赴任したことがあり、スペイン語がなかなか抜けず、今まで以上に英語を話すことが難しくなっていました。そこで、フィリピンへ行き3ヵ月間英語を勉強しました。
フィリピンから帰国後MSFに受かり派遣が決まりましたが、出発まで時間があったので看護師としてバイトをしたり、飲食店で働いたりしていました。
- Q今までどのような仕事をしてきましたか?また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
助産師として、総合病院の産科病棟で4年間、産科クリニックで2年間、中米エルサルバドルで2年間働きました。
MSFの海外派遣では全ての経験が生きています。日本で学んだ助産技術はもちろんのこと、看護力も役立ちました。日本の現場でのスキルだけでなく、患者さんに対するホスピタリティは海外でも必要とされると思います。
また、エルサルバドルで培った、異なる文化や宗教観への理解力や、自分の中で生じるジレンマへの対処能力を生かすことができたと思います。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

同僚は、私の上司で共にオンコールを担当する外国人派遣助産師が1人、現地スタッフの助産師8人(日本では珍しいですが、全員男性でした)、アシスタント18人でした。
このプロジェクトには産婦人科医がおらず、帝王切開の執刀以外(正常分娩、異常分娩、帝王切開の判断、診断、処方、管理)を全て助産師が行います。
妊婦さんが膣(ちつ)から出血している場合に、患者さんの問診、バイタルサインの測定、膣(ちつ)の診察、エコーでの診断など、助産師が自ら行い、症状や患者さんの状態から考えられる診断名を付け、どのように管理していかなければならないか、どの薬を投与すべきか考えアシスタントへ指示を出すことも助産師が全て行います。正確にかつ迅速に行う事が初めのうちは難しく、責任の重さを強く感じました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

部屋は一人一部屋ずつありました。部屋の中はベッド、蚊帳、机、椅子、洋服棚、扇風機と必要最低限のものは揃っています。シャワーは共用で、もちろん温水は出ませんが、暑いので冷水で十分でした。桶シャワーではなくちゃんと上から水が降ってきます。トイレも共用で、いわゆるボットン便所でした。
暑かったですが、住居環境は私には特に問題なかったと思います。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

MSFは医療、ロジスティック、アドミニストレーションの3つのチームが連携して成り立っているということを現場で強く感じました。世間的には医療者が大きく取り上げられがちですが、ロジスティシャンやアドミニストレーターのチームが支えてくれているから、過酷な環境でも医療者がベストを尽くせるのだと気づかされました。彼らがいなければ私たちは何もできないと思います。
フィールドではさまざまなハプニングが日常茶飯事です。屋根が壊れた、停電した、水漏れしている、医療機器が壊れた、トイレが使えない、など。そうした時にロジスティシャンがすぐに駆けつけてくれ、迅速に対応してくれました。
また、現地スタッフのシフトや給与、有給についての問題が出た時にアドミニストレーターに相談すると、一緒に話し合いお互いが納得するように解決策を見出してくれました。
非医療の仕事もフィールドではとても重要です。でも医療者には分からない事だらけで、非医療スタッフが相談に乗ってくれ迅速に対応してくれた時は本当に助かりました。とても感謝しています。
- Q今後の展望は?
現場に行って成長したこともありますが、自分の中での課題や自分の興味がある事、もっと勉強したいことにもたくさん気づかされました。その一つ一つを自分のペースで進めながら、次の活動にも参加したいと思っています。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
医療者の人もそうでない人も、興味がある方はぜひ受けてみてください。
日本人の国民性といえる勤勉さ、真面目さや優しさは世界でとても必要とされていると思います。「自分はちょっと……」という謙虚さは日本人によく見られると思いますが、一歩踏み出してほしいなと思います。