海外派遣スタッフ体験談

南スーダンで緊急ミッション 実感したMSFの強み

2019年12月25日

李 亘

職種
フライトコーディネーター
活動地
南スーダン
活動期間
2019年10月~11月

コンゴ民主共和国での活動の最終日に、南スーダンでの緊急活動の派遣のオファー。すぐに現場に入り活動。柔軟かつ迅速に事態に対応するMSFの強みを実感した。

まさに緊急の活動だった

© Lee Keung/MSF
© Lee Keung/MSF
今回は、まさに緊急の活動でした。南スーダンで発生した洪水の緊急支援。派遣のオファーの連絡が来たのは、コンゴ民主共和国での約2カ月に及ぶ活動の最終日。帰国に向けて、ちょうど荷物をまとめている時でした。急いでオフィスのあるベルギー・ブリュッセルに行き、南スーダン大使館でビザを申請。緊急ミッションの全体会議に出席後、必要な医薬品や物品を持って、南スーダンに向かいました。
 
フライトコーディネーターは、MSFが使用する航空機の運航に関わるさまざまな業務に携わります。今回は、洪水被害のなかった首都ジュバを拠点に、飛行に関する政府許可の取得、天候・治安・飛行場状況について飛行パイロットへの説明、乗客名簿の作成、ルート毎の最大積載重量の計算、ヘリコプター関連の費用の財務処理——などを担いました。今回の洪水で、普段、MSFの飛行機が離着陸している滑走路も水没していました。そのため、洪水の被害が大きいピボールという町にアクセスする方法は、ヘリコプターしかありませんでした。MSFは普段、赤十字国際委員会(ICRC)のヘリコプターを週に1度借りて活動していました。ですが、そのヘリコプターだけでは、水没したMSF病院の復旧や、医薬品の供給が追い付きません。そのため、MSF専用のヘリコプターを導入することになりました。被災地では、着陸できる土地が限られているため、国連など他の機関のヘリコプターの運航状況には気をつけました。 

東日本大震災で被災したヘリコプター

東日本大震災で被災したヘリコプターを前に<br>  © Lee Keung/MSF
東日本大震災で被災したヘリコプターを前に
© Lee Keung/MSF
今回の活動で使っているヘリコプターは以前、東日本大震災で被災した機体でした。津波で流されたそうですが、修復され、中古でアフリカに売られてきたものだそうです。日本で活躍していた機体が、今こうして、南スーダンの洪水の被災地で、さまざまな活動のために使用されているというのは、不思議な縁を感じ、感慨深く思いました。

想像以上の水害被害

安全な場所に離着陸 © Lee Keung/MSF
安全な場所に離着陸 © Lee Keung/MSF
実際に現地を飛ぶと、水害の被害は想像以上にひどいものでした。活動を始めて最初の1週間は、ピボールの飛行場がぬかるみになっており、国連の大型のヘリコプターも着陸できないほどでした。幸い、MSFのヘリコプターは着陸できました。まずは、病院を移転できる乾いた土地を探すところから始まりました。
 
ピボールのMSFの病院は水没し、MSFのスタッフもほとんどが退避していました。 まだ病院を再開するまでに至っていませんでしたが、ヘリコプターでは、仮設病院を建てるためのテントや、医薬品や消毒液などを運びました。病院再開に向けての物資も運ぶ必要がありました。水没被害を逃れた拠点にヘリが到着すると、MSFのスタッフが来て、MSFの拠点まで物資を運びました。時には小回りのきく小さなボートを使っての運搬も実施しました。
 
上空から洪水の状況を把握し、被災状況を把握する詳細な地図を作成するため、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)を担当する海外派遣スタッフをヘリコプターに乗せたこともありました。 

なかなか水が引かない……洪水被害は続いている

水没したビポールの街。仮設テントができている <br> © Lee Keung/MSF
水没したビポールの街。仮設テントができている
© Lee Keung/MSF
ジュバに緊急で搬送されてMSFの病院に来た患者さん達が、地元のビポールに帰るというので、ヘリコプターで何度か送り届けたことがあります。まだ洪水で、地元が大変な状況なのにも関わらず、そこに帰っていく人たちを見ると複雑な気持ちになりました。
 
私は既に活動を終えましたが、南スーダンでは、まだ洪水の被害が続いています。治水システムなどがないため、なかなか水が引きません。ビポールの飛行場に初めて行った時、周辺に漂う匂いがとてもきつかったです。「衛生環境が良くない中で避難生活を送っている人たちがいる」と思いました。また、滑走路のほとんどが水に浸かり、まだ地面がぬかるんでいました。地面の泥はきめ細かいもので、歩くたびに靴に泥がこびりつきます。少し歩くと、靴が泥で非常に重くなり大変でした。
 
地元の人びとは大変な中での生活が続いています。乾いた土地に着の身着のまま避難し、テントで生活している人もいます。でも、そうした厳しい環境で、元気に過ごす地元の子どもたちの様子を見ることができた時はホッとしました。子どもたちは、プラスチックの箱のようなものをボートにして遊んだりしていて、ちょっと微笑ましかったです。 

迅速に対応するMSFの緊急ミッション

© Lee Keung/MSF
© Lee Keung/MSF
今回、初めてMSFの緊急ミッションに参加しましたが、やはり他の国際援助団体からも一目置かれるほど、援助規模も大きく、とてもスピーディーに対応していることを感じました。それは、MSFの普段の活動以上のものだったと思います。また緊急ミッションでは、航空機が大きく活躍しました。その運用には、膨大な費用を必要としますが、MSFの航空機があったからこそ、いかなる事態にも柔軟に対応する、迅速な援助につながりました。
 
改めて、本当に多くの皆さまから頂いたご寄付によって活動できているのだと実感しました。ピボールは、洪水の被害により難しい状況に陥っています。私がピボールで会い、直接言葉を交わした人たちの生活が少しでも良いものになるよう、願ってやみません。 
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