海外派遣スタッフ体験談

新型コロナウイルス流行下のナイジェリア 現地スタッフに活力をもらいながら後方支援

2020年08月31日

丸井 和子

職種
ロジスティシャン
活動地
ナイジェリア
活動期間
2019年11月~2020年6月

医療活動を物資調達や安全管理の面から支えるロジスティックチームのリーダーとしてナイジェリアで活動。新型コロナウイルス感染症の流行後、感染疑いの患者さんが来院した場合の一時待機場テントの整備や手洗い場の設置など感染管理に奔走した。

医療活動を支える重要な後方支援

メカニックによる発電機の定期メンテナンスの<br> トレーニングを実施 © MSF
メカニックによる発電機の定期メンテナンスの
トレーニングを実施 © MSF
教育現場で4年半働いた後、海外でのボランティア活動に2年間参加し、世界で起きていることを身近に感じるようになりました。紛争や難民のニュースに触れる中で、自分の力ではどうすることもできない苦境にある人たちに、命や健康を維持するための医療を届ける活動に携わっていきたいという想いが沸き、たどり着いたのが国境なき医師団(MSF)のホームページ。
 
2018年にMSFに入団し、南スーダン、イエメンでの活動を経て3回目の海外派遣でナイジェリアへ。ボルノ州にある、小児科の基礎医療を担うプロジェクトに着任しました。業務内容は、医療活動が円滑に進むようなロジスティック面での後方支援です。具体的には、病院・オフィス・住居・倉庫の維持管理や修理、活動に必要な物資の調達、非公式国内避難民キャンプの水・衛生環境改善などを現地スタッフと共に行いました。またプロジェクトコーディネーターと共に日常の安全管理も担当しました。
 
その他ロジスティクスチームの採用や、年間計画に沿った予算管理など、これまでのプロジェクト同様、業務内容は多岐にわたりました。また、着任時はマラリアのピークシーズンが終わり、医療活動が落ち着く頃で、来年度(2020年)に向け活動の改善点を議論し実行に移したり、医療スタッフが繁忙期に少しでも快適に過ごせるよう、住環境の改善も主な業務の1つでした。 

新型コロナウイルス感染症 灼熱の中での感染管理対策

小児科の“病棟”。外気温が40度を超える時期もあるが、<br> 一時待機所と違い、こちらは断熱されていて中も<br> エアコンが設置されている © MSF
小児科の“病棟”。外気温が40度を超える時期もあるが、
一時待機所と違い、こちらは断熱されていて中も
エアコンが設置されている © MSF
2020年の1月頃、ニュースで新型コロナウイルス感染症のことを知りましたが、当初はアジアでの報道が主で、やがてここにも来るのだろうか…と様子見でした。3月に入って世界中で感染が広がり、すぐにナイジェリアでも感染患者が出た場合の準備に取り掛かりました。派遣先の病院でコロナ感染疑いの患者さんが来院した場合に、他の患者さんと接することなく他病院(保健省が運営する隔離センター)に移送するまで滞在してもらう待機所を病院の敷地内に整備しました。
 
待機所では感染が広がる恐れがあるので、エアコンや扇風機の使用を控えスペースの限られた施設内で断熱素材ではないテントを使用せざるを得ず、中は40度を超えていました。そこで何とか中の温度を下げるため、屋根の上にさらにシャドーネットとよばれる、日陰をつくるネットでテント全体を覆い、テント内の温度を少しでも下げるようにしました。
 
また、簡易蛇口付きのバケツを設置して手洗い場を増設したり、MSFの車の運転席と後ろの席の間に仕切りを作り、消毒液を設置しました。ナイジェリアでは物資が限られているので、消毒液は貴重です。基本的には水と石けんで手洗いを実行してもらい、買い物や空港からの送迎など、手を洗うことができない場合にのみ消毒液で殺菌してもらうよう、工夫しました。 

ロックダウン下の激務 助け合いながら

子どもも手洗いしやすいように、<br> 子ども用の手洗い場を設置 🄫 MSF
子どもも手洗いしやすいように、
子ども用の手洗い場を設置 🄫 MSF
4月20日にボルノ州で最初の新型コロナ感染者が確認され、すぐにロックダウンに入り、約3週間その状態が続きました。ロックダウン中はとても忙しい日々でした。病院勤務の医療スタッフ以外は原則在宅勤務に変わったのですが、海外派遣スタッフの住んでいる住居でインターネット不通、発電機の不調、それに起因する保冷システムおよびクーラーの不調が1日のうちに立て続けに起こり、すべてに対応しなければなりませんでした。
 
その上、ロックダウンによって公共交通機関が機能しなくなったため、通常では行っていない医療スタッフの送迎の時間割を朝晩の2回作成し、実行する必要もあり、目が回るような一日となりました。過去のトラブルシューティングの経験と、ロジスティクスチームのメンバーと電話でこまめに連絡を取り合いながら、なんとか無事に乗り切ることができました。
 
他にも、警備員も念のためロックダウン開始後3~4日は敷地内に待機してもらったため、住居の確保や、首都から届いたマスクを袋詰めしたりなど、煩雑な作業が多くありました。しかし一緒に働いていたスタッフが、皆それぞれ忙しいのにお互いの仕事を助け合い、協力して作業したので、気持ち的には追い込まれませんでした。 

地域や難民キャンプでの感染症対策

ボルノ州にある小児病院に入院するはしかの患者。<br> ピーク時には70以上のベッドが満床に=2019年撮影 <br> 🄫 Abdulkareem Yakubu/MSF
ボルノ州にある小児病院に入院するはしかの患者。
ピーク時には70以上のベッドが満床に=2019年撮影 
🄫 Abdulkareem Yakubu/MSF
ロックダウン中、医療行為は許されていたのでMSFの病院は稼働していましたが、面会は断り、受け入れ人数も病院内が密にならないように調整しました。ただ、ロックダウンによって交通手段がないので、患者さんの数は減っていました。他には、地域の保健省が運営する新型コロナ隔離センターで、MSFの医療者が感染管理のトレーニングを行ったり、簡易の洗濯場所を設置したりといった支援を提供しました。
 
また地域のコミュニティや非公式国内避難民キャンプ内では、水・衛生管理を専門とするロジスティシャンとともに簡単な作りですが手洗い場の設置なども行い、国内避難民の方々が感染するリスクを少しでも下げられるよう活動しました。
 
6月は、次のマラリアピーク期間に向け準備をする期間ですが、ベッド間の距離を保ちながらなるべく多くの患者を受け入れられるよう、頭を悩ませました。もともとプロジェクトでは新しい病棟を建設中だったのですが、コロナの影響で滞っていたので、新しい土地を借りてテント病院の設営を進めることとなりました。 

熱心に働く現地スタッフの姿に活力をもらう

事務所の防虫対策のために休日出勤した際のランチ 🄫 MSF
事務所の防虫対策のために休日出勤した際のランチ 🄫 MSF
活動中、直属の上司であるプロジェクトコーディネーターにはとても助けられました。いつもテキパキと大量にある業務の進捗をすべて欠かすことなくフォローしていたことや、どんなに多忙な中でも私も含めたチームメンバーに「何か私にサポートできることはある?!」といつも気遣ってくれたことが印象的でした。
 
また現地スタッフも、とても熱心な人が多く、電気や水のトラブルが夜や休日に起きても、医療活動やオフィスの仕事に支障がでないよう、すぐに駆け付けてくれたり、遅くまで修理をしてくれたりする姿にエネルギーをもらいました。
 
今回の活動中、国内避難民の方が滞在している非公式キャンプを訪問する機会が何度かありました。小さなビニールシートで作った仮の住居に身を寄せて生活している人びとの様子を目の当たりにし、コロナ禍であってもそうでなくても、医療アクセスが十分でなく、MSFによる医療提供の必要性を実感しました。毎回試行錯誤をしていますが、今後も日本からご支援いただいている方々の志とともに、現地の人びとに医療を届けられるよう、活動を続けていきたいです。 
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