海外派遣スタッフ体験談

治療だけじゃない 話を聞き、寄り添うことの大切さを伝えたい

2019年10月08日

曵田 彩子

職種
医療活動マネジャー
活動地
ミャンマー
活動期間
2018年7月~2019年8月

日本で約10年にわたり家庭医として勤務した後、イギリスの大学院へ。帰国後、救急や内科外来での非常勤勤務を経て、MSFに初めて参加しました。

診療所へは船で移動

海上を移動する日々 © MSF
海上を移動する日々 © MSF
 ミャンマーのラカイン州で、避難生活を送るロヒンギャの人びとと、彼らを受け入れる地域住民への医療援助に携わりました。私は、医療活動マネジャーとして、国境なき医師団の診療所で働くミャンマー人医師の診療を指導するほか、患者さんの動線の効率化や、看護師による軽症患者の治療の促進、患者さんのプライバシー確保など、診療所全体の医療の質の改善を担いました。
 
ラカイン州は海に面して入り組んだ土地で、診療所がある国内避難民キャンプまでは陸路よりも船の方が早く行くことができます。それでも片道2~3時間はかかりました。ライフジャケットを身に着けて、海上を移動する日々を送りました。

「死ぬ方がましだ」 絶望する患者に向き合う

診療所の同僚と © MSF
診療所の同僚と © MSF
 私たちの診療所ではできることが限られており、手術など高度な治療が必要な場合はミャンマー政府の病院に行ってもらう必要があります。しかし、多くのロヒンギャの患者さんはそこへ行くことを拒みました。ロヒンギャの人びとは、ミャンマーでは不法移民という扱いを受けています。政府の病院で差別や偏見、迫害に遭うことを恐れ、「そこに行くなら死ぬ方がましだ」と言う人もいるのです。病院での手術を拒み続け、泣きながら腹痛を我慢していた中年男性の姿が忘れられません。
 
ロヒンギャの患者さんには、医療や薬を求めるだけではなく、話を聞いてほしい、という人が多くいました。不安から来る腹痛や頭痛を訴える人も後を絶ちませんでした。このような中で、医師は医療の知識を持つだけでなく、心をこめて患者さんに対応することが大切だと思います。患者さんの話を聞き、寄り添うことの大切さを、若い医師たちに伝えるのが難しかったです。

誕生日にかけられた一言

断食明けの食事をいただく © MSF
断食明けの食事をいただく © MSF
 最初は英語が拙いばかりに、診療指導もうまくいかず、ミーティングでも発言できずイライラすることもありました。さらに直属の上司であるミャンマー人女性医師とは、言葉や文化の壁もあり、当初は分かり合えないことが多く、避けて仕事をするようなこともありました。しかし一緒に苦労を重ねていくなかで信頼関係が生まれ、言いたいことをストレートに伝えて話し合えるような関係ができました。違う文化で育ってきた人同士が分かり合うには、コミュニケーションをとり続ける努力が必要なのだと学びました。英語の方も、1年後には大体のことは伝わるようになりました。
 
現地で誕生日を迎えた時、「また一つ歳を重ねてしまう。嫌だなあ」とこぼしたところ、現地スタッフにこう言われました。「平和で裕福な国に生まれて今日まで生きてこられたんだから、アヤはラッキーなんだよ」。はっとさせられました。
 
悲しい出来事をたくさん見聞きし疲れることもありましたが、新しい経験を楽しむこともできました。また新たな場所で、MSFの活動に参加したいと思います。
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