海外派遣スタッフの声

日本で培った技術を世界で:安西 兼丈

ポジション
外科医
派遣国
パキスタン
活動地域
ハングー
派遣期間
2014年12月~2015年1月

MSFの海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

勤務先病院から、1年のうち1ヵ月間の海外ボランティアを許してもらえる環境にあり、2ヵ月前から準備をして、勤務先の外来予約を調整したり、医局のコンセンサスを取りながらタイミングをはかり参加しました。

派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

現地の業務内容をみながら、自分に足りないスキル(英語、外科技術)などを補うために、病院で手術に参加させてもらいました。MSFの外科医は帝王切開の技術は必須なのですが、勤務先の病院には産婦人科が無いため、以前勤務していた病院の先輩にお願いして手術に参加させてもらい、準備をしました。

また、毎回、MSFの活動について反省ノートを記録しているので、思い出しながら、コミュニケーション、日本の歴史に対する知識、日本の文学など、前回足りていなかったスキルや知識について準備していきました。

過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

前回、イラクの活動に参加していたため、イスラム圏での文化など、慣れるのに時間はかかりませんでした。また、外科手術だけでなく、現地の医師に「外傷における超音波の意義」などの講習会を実施しました。これは、イラクで血管手術技術移転を行った際に培った指導経験が非常に役に立ちました。

今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

集中して手術に臨む 集中して手術に臨む

パキスタン北部ハングーでの救急・外科プログラムでした。24時間対応の救急外来と約20床の入院病棟があり、また隣接する母子保健センターからの緊急帝王切開を受け入れていました。

外科医は自分1人しかいないため、自分で治療方針を決め、手術方針を決定していました。麻酔科医も1人で、ER(救急専門医)1人、助産師は2人でした。

症例としては、緊急の帝王切開、熱傷や感染した傷の処置が主なものでした、銃創や地雷爆発などの緊急手術もあり、24時間体制で過ごしました。

手術症例の内訳は整形・形成外科が4割(骨折の整復、腱の修復、四肢の切断、熱傷処置、植皮など)、産婦人科が3割(帝王切開、産後出血の処置、経管膣裂傷縫合など)、胸腹部一般外科が2割(交通事故・銃創・刺創、消化管手術など)、その他1割(気管切開、心臓・肺・血管の修復など)でした。

派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

現地の救急専門医に超音波講習を行った 現地の救急専門医に超音波講習を行った

朝夕の外科病棟の回診があり、その後にデブリードメント(※)や虫垂切除など予定手術を4件ぐらい行なったのち、緊急対応に移りました。忙しさで、携帯電話が鳴っていないのに、鳴っているように感じることもありました。

また、現地の救急専門医に超音波講習を行なって、診断技術の向上、知識の共有を図りました。患者さんの状態によっては、日曜日も予定手術を入れなければならず、完全に休暇をとれる日はありませんでした。

しかし緊急手術がなければ時間があり、本を読んだり、現地の言葉を学んだり、ひなたぼっこをして過ごしました。

  • 感染を起こした傷や壊死した組織の切除

現地での住居環境についておしえてください。

MSFの宿舎があり、6~10人ぐらいの共同生活でした。12月のハングーは、日中は19度ぐらいで温かいのですが、夜は3度ぐらいになり、かなり冷え込みました。部屋ではマラリアを媒介する蚊も増えるので、蚊帳の中で過ごしていました。

温水はあるのですが、タンクの中の水が無くなる事が多く、2日に1回ぐらい、お湯を洗面器でためて頭や体を洗ったりしていました。水の貴重さを学びました。

活動中、印象に残っていることを教えてください。

現地の看護師たちに夕食に招待された際に、パキスタン出身のマララ・ユサフザイさんがノーベル平和賞を受賞した時だったので、どう思うか聞いてみたところ、「この辺には、マララさんのような子どもたちがたくさんいるんだ。彼女は元気になったが、手足を失って行動を起こせない子どもたちもたくさんいる」と、怒りに近い真剣な表情で訴えていました。

その他、「教育や文化も進んでいる日本で、なぜ自殺者が多いのか」など、貴重な議論の時間にもなり、あっという間に3時間が過ぎて行きました。

また、近くのペシャワールでタリバンの襲撃があり、ハングーにも治安状況の緊張が伝わってきたのが印象に残っています。

今後の展望は?

帰国後翌日から、勤務先での通常勤務に戻ります。勤務先と相談しながら、1年間で1ヵ月間許されている貴重な時間を利用して、派遣に参加したいと思います。また、将来、国境なき医師団に興味を持ってくれている医師たちが活動に参加できるように、経験を伝えていきたいと思います。

今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

日々の診療姿勢(チームとして働くためのコミュニケーションの力、思いやり、医療人としてのモチベーション)や、多様性を尊重できるような姿勢が必要です。検査器具も整っていない状況で信じられるのは、自分の手の感覚と今までの経験です。それらは、毎日を意識して過ごす事で育てられると思います。

日本で培った医療技術を世界で生かし、提供することができ、1人でも命を救う事ができるというのは、かけがえのない経験です。一針一針縫合する姿勢は、現地のスタッフにも届きます。是非、このかけがえのない貴重な経験をしてほしいと思います。

MSF派遣履歴

派遣期間
2012年10月~2012年11月
派遣国
イラク
プログラム地域
キルクーク
ポジション
血管外科医
派遣期間
2010年7月~2010年8月
派遣国
ナイジェリア
プログラム地域
ポートハーコート
ポジション
外科医