海外派遣スタッフの声

マラリアの調査プログラムで地域と連携:上西 里菜子

ポジション
ヘルスプロモーター
派遣国
カンボジア
活動地域
プレアヴィヒア
派遣期間
2014年8月~2015年5月

国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

前回の南スーダンへの派遣終了後すぐに、今回のプログラムへの派遣の話をいただきました。それまでに参加したものと違う内容のプログラムや、文化的背景の違う場所で新しいことを学びたいと思っていたので、快諾しました。

派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

前回の派遣終了後、MSFの医療活動についてより深い知識を得るための「医療サービス・マネジメント」というトレーニングに参加しました。特に今回の派遣を意識してということではなく、MSFが提供する医療プログラムについてより全般的な知識を得るために参加しました。

前回の派遣から2ヵ月後の出発だったので、日本では特に準備というものはしませんでしたが、プログラムに関する資料や、今回のプログラムで調査対象となるマラリアに関する先行研究をできるだけたくさん読むようにしました。

過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

職種上、派遣のたびに新しいことへのチャレンジがあります。ただ、派遣を重ねるたびに独立して働く力量が身についてきているように思います。

今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

新しく作成したリーフレットについて話し合い 新しく作成したリーフレットについて話し合い

カンボジアの北部、タイとの国境に近いプレアヴィヒア州チェイセン郡での、マラリアに関するリサーチ・プログラムでした。特定の活動を一定期間(今回のプログラムでは3年間)行うことによって、その地域からマラリアを一掃できるかどうかを、疫学的手法を用いて観察します。

カンボジア、ミャンマー、タイなどのメコン川沿いにある東南アジアの国々では年々、マラリアの罹患率は減少してきているものの、現在、世界保健機関(WHO)によって推奨されている薬剤に対する「耐性」を持つマラリアが出現してきています。

薬剤耐性マラリアが広まることになると、世界的な規模で多くの犠牲者がでる可能性があると専門家の間では危惧されています。このMSFのプログラムはそうした現在の状況の改善につながる希望を見つけるためのプログラムです。

このプログラムにおける特定の活動は、

  • 地域の医療サービス提供者との提携 (マラリア患者の治療と追跡)
  • マラリアに感染するリスクの高いグループに対するスクリーニング
  • チェイセン郡の中でも特にマラリア罹患率の高い村での全村民に対する年に一度の抗マラリア薬配布
住民説明会で抗マラリア薬の配布について説明する 住民説明会で抗マラリア薬の配布について説明する

の3つです。私の率いていたチームが1と2の活動の主な担い手であり、私は活動の管理を医師とともに行いました。また、地域の医療従事者とも毎月ミーティングを行い、何がうまくいっているか、また何が問題点かを話し合いました。患者の服薬コンプライアンスが問題提起されたときは、皆で話し合って服薬コンプライアンスを促進するためのリーフレットを作成しました。

3の活動においては、薬の配布に先立ち住民説明会を行う役割を担いました。説明会は現地のスタッフの主導で行われましたが、どのように住民説明会を行うか、何を主要なメッセージとして伝えるべきかを考え、チームを指導するのは私の役割でした。

また、MSFの活動に対する地域住民の認識について知るための定性調査や、住民のマラリアに関する知識がどれほどなのかを知るための定量調査も行いました。

海外からの派遣スタッフはIECの私を含めて3人で、残りの2人は疫学専門家と活動責任者でした。現地スタッフは30人弱で、これまで経験した中で最も小さいチーム編成でした。

派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

現地スタッフとともに 現地スタッフとともに

朝7時半に始業で、1時間半のお昼休憩をはさんで午後5時に終業でした。州都プレアヴィヒアにメインオフィスがあり、チェイセン郡にサブオフィスがありました。

メインオフィスではデスクワーク中心なので、時間通りにオフィスで働いた後は宿舎に帰って仕事をしました。とにかくレポートを作成することが多かったので、そのほうが自分としては集中できました。

サブオフィスはメインオフィスから車で1時間半ほどのところにあり、全体の時間の3分の1ほどをそこで過ごしたと思います。サブオフィスにいるときは、ほとんどが現場での仕事なので、始業・終業時間に関係なく、早い時は朝の6時にオフィスを出ることもあり、遅い時は夜7時ごろに現場から帰ってくることもありました。サブオフィスは寄宿舎も兼ねていました。

プレアヴィヒアは州都と言っても何もないので、土日も仕事をしていることが多かったのですが、カンボジアには祝日が非常に多く(年に30日)、休暇と組み合わせた長期の休みを利用して国内旅行をしたり、日本に一時帰国したりしました。土日を利用して、同僚と近くの滝へハイキングにいくこともありました。

現地での住居環境についておしえてください。

プレアヴィヒアの住居はメインオフィスから自転車で5分ぐらいの場所にありました。小さい家でしたが3人それぞれに個人部屋(トイレ・シャワー付き)があり、非常に快適でした。よく断水がありましたが、いつもバケツに2杯水を用意していたので、それほど不便でもありませんでした。

温かいシャワーはなく、冬(日本の秋のような気候)は辛かったですが、暑いときは問題ありませんでした。昼食はオフィスで用意されたものを食べましたが、夜は自炊か外食でした。

活動中、印象に残っていることを教えてください。

現地スタッフはバイクで現場の村々へ向かう 現地スタッフはバイクで現場の村々へ向かう

私にとって初めてのリサーチ・プログラムだったので、学ぶことがたくさんありました。直接的な人命救助をしないプログラムにおけるMSFの役割というものを考えた9ヵ月でした。また疫学専門家の同僚からは技術的な面でいろいろなことを教わりました。

チェイセン郡はカンボジアの中でも一番発展の遅れている地域です。インフラの整備はまだまだで、雨期の移動は道路がぬかるんで大変です。また森林の多い地域で、あるマラリア患者の追跡では、森の中をバイクで行けるところまでいき、そこから先は徒歩ということがありました。

私の率いていたチームの現地スタッフたちはそういう過酷な交通路を毎日のように行き来し、帰りは泥だらけになって帰ってくることもよくありました。その姿を見て、現地スタッフの仕事に対する熱意を感じたものです。

また地域の医療従事者たちとの交流も忘れられないものです。私がカンボジア語を覚えるたびに喜んでくれて、最後のミーティングでは「寂しくなるね」と言ってくれた人もいました。

今後の展望は?

1ヵ月後に次の派遣を控えています。それまで、家族や友人と過ごす時間を十分にとりながら、関連する資料などを読むようにしています。

今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

MSFの活動は多岐にわたります。思いもよらない自分の技術や知識がMSFの活動によって活かされることもあります(MSFは医療の団体ですが、医療従事者以外にも仕事はたくさんあります)。まずはMSFの活動をウェブサイトや説明会などで知ってみてはどうでしょうか。

派遣に至るまでの過程は短い人も長い人もいるでしょうが、MSFの活動に賛同し、本気で準備をすれば道は開けると思います。がんばってください。

MSF派遣履歴

派遣期間
2013年10月~2014年6月
派遣国
南スーダン
活動地域
マバン
ポジション
ヘルスプロモーター
派遣期間
2012年11月~2013年8月
派遣国
パキスタン
活動地域
カラチ、ティムルガラ
ポジション
ヘルスプロモーター