調査報告書

国境なき医師団は、活動現場で目撃した危機的状況を国際社会に伝えるため、個別のテーマで独自に調査・編さんした報告書を随時発表しています。

ピックアップ

報告書『スーダン:南ダルフールからの声(Voices from South Darfur)』(2025年6月)

スーダン・南ダルフール州で人道援助活動を続ける国境なき医師団(MSF)はこのたび、報告書『南ダルフールからの声(Voices from South Darfur)』を公開した。報告書の中でMSFは、まん延する暴力、不安定な治安、飢餓、崩壊した医療制度、そして、不十分な国際社会の対応が相まって、現地の生活がいかに限界まで追い込まれているかを、人びとの証言を通じて明らかにしている。

「人びとの声や物語からは、南ダルフール州全域に広がっている苦難や虐待、残酷さが浮き彫りになるだけでなく、人びとの忍耐力と思いやりも見えてきます」と、スーダンでMSF緊急対応マネージャーを務めるオザン・アグバスは話す。
「民間人の保護が崩壊し、人道援助も依然として十分でないなかで、人びとは自分たちの声に耳を傾け、注目し、行動を起こしてほしいと訴えています」

報告書『ヨルダン川西岸:人びとへの危害と医療破壊(Inflicting harm and denying care in the West Bank)』(2025年2月)

パレスチナ・ヨルダン川西岸地区で人道援助活動を続ける国境なき医師団(MSF)はこのたび、報告書『ヨルダン川西岸:人びとへの危害と医療破壊(Inflicting harm and denying care in the West Bank)』を公開した。報告書の中でMSFは、2023年10月にガザで紛争が始まって以来、イスラエル軍と入植者は、占領下にあるヨルダン川西岸地区で、パレスチナ人に対し極端な暴力の使用を増加させていると伝えている。

2023年10月から2025年1月までの間に、西岸で少なくとも870人のパレスチナ人が殺害され、7100人以上が負傷した。報告書によると、ヨルダン川西岸地区での暴力の激化により、人びとの医療へのアクセスが著しく妨げられており、これは国際司法裁判所(ICJ)が人種隔離およびアパルトヘイトに相当すると評した、イスラエルによる組織的弾圧の一部であるとしている。MSFはイスラエルに対し、医療従事者、患者、医療施設への暴力を止めるよう、そして、医療関係者による救命活動を妨害しないよう訴える。

報告書『Gaza: Life in Death Trap(ガザ・死の罠の中で生きる)』(2024年12月)   

2023年10月7日から激化した、パレスチナ・ガザ地区での紛争。イスラエル軍の攻撃で4万4000人以上が殺害され、10万5000人以上が負傷。人口の約9割の190万人が避難を余儀なくされた。24年10月中旬現在、ガザ地区に36ある病院の過半数は機能停止に追い込まれている。国境なき医師団(MSF)は、14カ月にわたって繰り返された民間人への攻撃、医療施設を含む社会インフラの破壊、人道援助活動の拒否というイスラエルの行動を目撃してきた。12月18日に報告書『Gaza: Life in Death Trap(ガザ・死の罠の中で生きる)』を発表。ガザ地区の深刻な人道状況をまとめるとともに、イスラエル当局の行動を強く批判。イスラエルの同盟国に対し、イスラエルへの無条件の支援を止め、明らかに民族浄化の兆候が見られるガザ地区北部でのジェノサイド(集団殺害)を防ぐ義務を果たし、人道支援を拡大するよう呼びかけた。

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