栄養失調

しんぞー先生
しんぞー先生

いま世界で7秒に1人、5歳未満(みまん)の子どもが命を落としているんだ(※1)。驚(おどろ)くべきスピードだよね。その原因の多くに関わっているのが栄養失調(えいようしっちょう)なんだ。

栄養失調ってなに?

栄養失調は、体に必要な食べ物や栄養が足りていない状態のこと。そのせいで、十分に育つことができなくなり、ほかの病気にかかりやすく回復も難しくなります。大人になっても体や心に影響(えいきょう)が残ることもあります。そして、最悪の場合、命を落とすこともあります。

栄養失調に特になりやすいのは、5歳より小さい子どもたち。2021年には、世界中で約4500万人もの5歳未満の子どもが、命に関わるほどの栄養失調に苦しんでいました(※2)。

ただ、栄養失調は早く見つけて治療(ちりょう)すれば、ほとんどの子どもが元気を取り戻します。

重度の栄養失調で治療を受けているイエメンの赤ちゃん
© Nuha Haider/MSF
栄養失調で入院しているアフガニスタンの赤ちゃん
© Sandra Calligaro

栄養失調と病気の危険なサイクル

栄養失調と病気のサイクル

栄養失調と病気は、互いに深く関わっています。子どもは大人よりもたくさんの栄養が必要で、免疫(めんえき:体を守る力のこと)もまだ弱い状態です。

そのため、栄養が足りないと免疫が低下して病気にかかりやすくなる、病気になるとさらに栄養が取れなくなるというように、悪循環(あくじゅんかん)を引き起こしてしまうのです。

しんぞー先生

この危険な流れを止めて、子どもたちの命を守るためには、できるだけ早く治療を始めることがとても重要なんだ。栄養失調の子どもたちを守るため、国境なき医師団(MSF)は世界各地でさまざまな活動をしているよ!

命を守るために一刻も早く! 治療の5つのステップ

しんぞー先生

栄養失調は、すぐに治療を始めることが大切! MSFが世界各地で行っている治療を紹介するよ。

ステップ1 「命のうでわ」で栄養状態をチェック

© Louise Annaud/MSF

まず「命のうでわ(※)」を使って、栄養失調かどうかを調べます。生後6カ月から5歳の子どもの二のうで(ひじと肩の間)に「命のうでわ」を巻きつけ、その太さを測ります。すると、栄養失調がどれくらい深刻か、色ですぐにわかります。

  • 上腕周囲径測定帯 MUAC (Mid-Upper Arm Circumference)
色ですぐに栄養失調かどうかを見分けられるよ!
しんぞー先生

「命のうでわ」は簡単に手作りできるよ。作り方は下のページを見てみてね!
【試してみよう!】栄養失調を見分ける「命のうでわ」

ステップ2 治療用ミルクで体調を安定させる

© MSF/Jinane Saad

重い栄養失調で入院した子どもは、体がとても弱っていて、肺炎(はいえん)や下痢(げり)などの病気にもかかりやすくなっています。まずは、そういった病気の治療をしながら、特別なミルクを使って少しずつ栄養をとり、体の調子を整えていきます。

しんぞー先生

重い栄養失調のときは、血糖値(※)が下がったり、水分が足りなくなったり、病気にかかったりする危険が高いので、スタッフが24時間体制でしっかり見守るよ。数日から1週間くらいで、体の状態が少しずつ安定してくるんだ!

ステップ3 栄養治療食「RUTF」でおいしく治療!

© MSF

体調が安定してきたら、体重を増やすために、カロリーとタンパク質がたっぷり入った特別な食べ物で治療します。

この食べ物は「RUTF(アール・ユー・ティー・エフ)」といって、水や火を使わなくてもすぐに食べられる便利な栄養食。見た目や味はピーナツバターに似ていて、体の成長に必要な栄養がバランスよく入っています。

しんぞー先生

1つのパックで、なんとごはん約1.5杯分(500キロカロリー)のエネルギーがとれるよ! カロリーのほかにも、タンパク質、ビタミンや鉄分など、成長に必要な栄養素がたくさん入っているんだ。詳しくは下の動画を見てね。

【動画】RUTFってなに?新規ウィンドウで開く

ステップ4 食欲テストを行う

© Stefan Dold/MSF

食欲があるかどうかをテストします。自分から「食べたい!」という気持ちを持って、「RUTF」をしっかり食べられるようになったら、もう安心。体も元気になって、いよいよ退院することができます。

しんぞー先生

西アフリカのリベリアで、栄養失調の子どもたちを治療した蟹江信宏(かにえ・のぶひろ)先生は、「入院当初は弱っていた子どもが元気を取り戻し、病室で泣いたり笑ったりしている姿を見ると、とてもうれしくなります」と語っているよ。
かにえ先生と日本の小中学生6人が、「命のうでわ」を作って、栄養失調について、たくさん話して考えた動画を公開中! ぜひ見てみてね!

命のうでわってなに? 国境なき医師団とつくって、はなして、かんがえた!

ステップ5 通院しながら治療を続ける

体重計に乗る赤ちゃん © Charlotte Morris

家に帰ってからも、「RUTF」を食べ続けてもらいます。そして、食事の前に手をしっかり洗うことや、もし下痢をしたり熱が出たりしたときは、すぐに病院に来ることなどを伝えます。

また、地域の病院や保健センターとも協力して、体重がちゃんと増えているかを定期的にチェックします。体重がしっかり増えて元気になったら、もう大丈夫。「栄養失調の治療プログラム」は卒業です!

しんぞー先生

MSFは2020年には6万4300人に栄養治療を行ったんだ。元気を取り戻した子どもたちの笑顔が広がっているよ!

退院し、通院で治療を続けている生後10カ月のラガドちゃん(イエメン)。
毎週、お父さんと栄養治療食を受け取りに来ている © Trygve Thorson/MSF
重度の栄養失調とマラリアから回復しつつある2歳のウイエラちゃん(コンゴ民主共和国)
© MSF/Solen Mourlon

どうして食べ物がないの?

栄養失調の原因である食べ物の不足。では、どうして食べ物が足りなくなってしまうのでしょう。

それは、さまざまな問題が重なっています。貧困や、季節によって収穫(しゅうかく)が少なくなることに加えて、最近では紛争(ふんそう)や異常気象、また、新型コロナウイルス感染症(かんせんしょう)が広がった影響で仕事がなくなり、収入が減ったことなども関係しています。

しんぞー先生

「食べ物がない」という背景には、このような複雑な問題がからみ合っているんだ。下の動画でもチェックしてみよう!

命を脅かす病気~栄養失調とは【国境なき医師団】新規ウィンドウで開く