パレスチナ
パレスチナってどんな地域?
- 面積
- 約6020平方キロメートル(ガザ地区:365平方キロメートル※福島市と同程度/ヨルダン川西岸地区:5655平方キロメートル※三重県と同程度)
- 人口
- 550万人(ガザ地区:約210万人/ヨルダン川西岸地区:約340万人)(2024年)
- 自治政府所在地
- ラマラ(ヨルダン川西岸地区)
- 公用語
- アラビア語
- 宗教
- イスラム教(92%)、キリスト教(7%)、その他(1%)
- 一人当たりGDP*
- 3396ドル(2023年)※日本の一人当たりGDPは33960米ドル
- 出典
- 外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/index.html
- 世界銀行 https://data.worldbank.org/country/west-bank-and-gaza
パレスチナで困っていることは?
ガザ地区で困っていること
激しい紛争が繰り返されている
2023年の10月からイスラエルとガザ地区を支配するハマスの紛争が激(はげ)しくなりました。ガザ保健省によると、イスラエルの攻撃(こうげき)で亡くなった人の数は5万人を超(こ)えました(2025年4月現在)。
2025年1月19日に停戦(ていせん:一時的に戦いを止めること)となりましたが、3月18日に再びイスラエルが攻撃を始め、新たな犠牲者(ぎせいしゃ)が増え続けています。
医療を受けることができない
世界保健機関(WHO)によると、ガザ地区にある36の病院のうち、15の病院が運営を中止しています。残りの病院も、一部しか動いていません。そのため、人びとが医療(いりょう)を受けることがとても難しくなっています。
また、攻撃によって医療関係者が殺されたり、病院が壊(こわ)されたりすることも続いています。ガザ保健省によると、これまでに1000人以上の医療関係者が命を落としました。その中には国境なき医師団(MSF)のスタッフ11人も含まれています(2025年4月現在)。

紛争中に生まれたこの赤ちゃんは、呼吸器(こきゅうき)に重い病気を抱えているんだ。紛争による厳しい生活や、きれいな空気が吸えないこと、医療を受けるのが難しいことが、赤ちゃんの病気をより深刻にしてしまっているよ。
生活に必要なものが手に入らない
長引く紛争で、ガザ地区内の物資はどんどん少なくなっています。加えて、3月2日にイスラエルはガザ地区を完全に封鎖(ふうさ:物や人が出入りできないよう、閉じ込めること)したため、食べ物や薬、燃料、衛生用品などあらゆる物資が届かなくなりました。
生きるために必要なものさえ手に入らない状態は、人びとの暮らしや医療に深刻な影響(えいきょう)を与えています。

© Nour Alsaqqa/MSF

© MSF
たくさんの子どもたちも犠牲になってしまっているよ。右の写真の女の子は、自分以外の家族がみんな亡くなってしまったんだ。
ヨルダン川西岸地区で困っていること
暴力が後を絶たない
ガザ地区で停戦が始まった後、ヨルダン川西岸地区での暴力が増えました。2023年10月から2025年3月までに、少なくとも973人のパレスチナ人が殺され、8000人以上がけがをしました。
また、国連によると、2023年10月から2024年の間に、入植者(にゅうしょくしゃ:よその場所から、ある場所に新しく移って住み始める人。ここでは、イスラエルからヨルダン川西岸地区に移り住んだ人)によるパレスチナ人への攻撃が、1500件も報告されています。
国際司法裁判所(こくさいしほうさいばんしょ:国連の一部で、国同士の争いを解決するための裁判所)は、これを人種差別やアパルトヘイト(人種や肌の色などで人を差別して、別々に生活させること)にあたるとして、イスラエルによる弾圧(だんあつ:人の自由や権利を力で奪【うば】うこと)だとしています。
自由に移動できない
イスラエルが大規模な侵攻(しんこう:ある場所に軍隊が入って攻撃すること)を行ったり、道路を封鎖したり、検問所(けんもんじょ:警察や軍隊が道路などに設置して、通る人や車をチェックする場所)を設けたりすることで、人びとの移動が難しくなっています。北部では4万人以上の人びとが、住む場所や生活に必要なインフラ、医療へのアクセスを失っています。

© Samar Hazboun

© Samar Hazboun
家までの道を封鎖される、立ち退きを求められるといった、さまざまな暴力によって人びとは大変な生活を強いられているんだ。
国境なき医師団はどんな活動をしているの?
ガザ地区での活動
国境なき医師団(MSF)では2025年4月4日現在、1040人の現地スタッフと54人の国際スタッフがガザ地区で活動しています。
南部のナセル病院、中部のアル・アクサ病院、中部デールバラハにある2つの仮設病院、基礎診療所(きそしんりょうじょ)とクリニックの計8カ所で、基礎医療や外科治療(げかちりょう)、けがの手当て、理学療法(りがくりょうほう※)、妊娠している女性や子どものケア、心のケアなどを行っています。
- ※理学療法(りがくりょうほう):けがや病気によって体がうまく動かなくなった人に対して、運動やマッサージなどを行う治療のこと

© Nava Jamshidi

© Mariam Abu Dagga/MSF
紛争によって、人びとは体だけでなく、心も傷つけられているんだ。MSFは心を健康に保つためのケアも行っているよ。右の写真は「子どもカーニバル」を開いたときの様子。みんな、楽しそうだね!
ヨルダン川西岸地区での活動
MSFは2025年4月4日現在、145人の現地スタッフと25人の国際スタッフがヨルダン川西岸地区で活動しています。
ナブルスでは心のケアを提供し、他の機関と協力して、心理士のトレーニングを行っています。また、ナブルス、トゥバス、カルキリヤの各県で、パレスチナ赤新月社(PRCS)のボランティアに救急などの研修を行っています。

MSFは医療のほかに、食べ物や医薬品など、生活に必要な物資を届ける活動もしているよ。
南部ヘブロン県では、移動診療(いどうしんりょう:医師や看護師が車などで移動して、診療を行うこと)を通じて、基礎医療や性に関する医療、心のケアを提供しています。
また、ハルフル病院の産科と救急病棟を支援しています。また、暴力や強制退去の被害(ひがい)を受けた人びとに対して、救援物資、衛生用品のキット、食べ物、簡易トイレなどを配布しています。

北部ジェニンとトゥルカレムでは、避難してきた人びとや地域の人びとを対象に、医師や看護師が出向いていく「移動診療」を行っています。また、紛争によりガザ地区に戻れなくなった人びとのために、9カ所の避難所と3カ所の基礎診療所を支援しています。

暴力を受けたとき、近くに医師がいなくても対応できるように、地元の人びとに包帯の巻き方などを伝える活動も行っているよ。
パレスチナは、ガザ地区とヨルダン川西岸地区という二つの地区に分かれているよ。どちらの地区でも、イスラエルとの紛争(ふんそう=武器など暴力を使った争い)や暴力が繰(く)り返されていて、人びとは長い間、体にも心にも大きな痛みを感じながら生活しているんだ。