Special Interviews

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2016 年、中央アフリカ共和国で、民間の寄付が現場でどのように使われているのかを視察 © MSF

民間寄付が支える活動
真に必要な人に援助を届けるために

国境なき医師団(MSF)は設立から50年、活動資金の大部分を個人を中心とした民間からの寄付金によってまかなっています。2020年時点では、活動資金の97%以上が民間からの寄付によるものでした。国や国際機関ではなく民間の資金を活用することで、特定の政府や勢力、組織の影響を受けることなく、必要とする人びとへ援助を届けることが可能になります。紛争など、政情が不安定な地域にも入っていくことができるのは、皆さまからの寄付に支えられているからなのです。

現場のニーズにのみ基づいた資金調達を行なうことも、MSFの特徴です。大きな自然災害など、メディアで報道されて寄付への関心が高まる場合でも、自国の政府や他団体によって十分な支援が行き届いていると判断すればMSFの援助活動は限定的となり、必要以上の寄付の募集は行ないません。

例えば、2004年12月に発生したスマトラ島沖地震およびインド洋津波の被害では、30万人以上が犠牲となり、援助を行う団体のもとには世界中から寄付金が寄せられました。その結果、MSFにも活動に必要な金額を超える寄付が集まったため、一部を他の援助活動へ振り替える承認を寄付者に求める一方、振り替えできない寄付は返還するなど、資金規模を適正に維持しました。

全世界700万のうち、日本からは42万を超える皆さまがMSFの活動を支えてくださっています。寄付者の方々は、世界の苦境にいる人びとの苦しみに寄り添い、想いを共にするMSFの大切な仲間です。皆さまからの継続した支援は、MSFが活動計画を立てる時の礎となり、緊急援助に際しての初期費用や、長期的な支援が必要となるプロジェクトの運営を保証する大きな力となってきました。

寄付をする、という行動には、「課題を認識する」、「解決策に賛同する」、「組織を信頼する」という3つの要素が必要です。しかし日本では、遠い国で起きている紛争や、貧困、自然災害などの人道危機が報じられる機会が欧米に比べて少なく、MSFが直面している課題が広く知られている訳ではありません。そこで重要な役割を果たすのが証言活動です。

日本で遠い昔の記憶となりつつある戦争が、私たちが暮らす同じ地球の多くの場所で今でも続いていること、コロナ禍で私たち自身が実感した感染症の恐怖に、ずっと以前から常にさらされてきた人びとがいることなどを、MSFが「声を上げる」ことで、ぜひ多くの方々に知っていただければと思います。

photo© MSF

国境なき医師団日本
資金調達部ディレクター
吉田幸治

大学卒業後、国内教育企業、欧州エンタープライズソフトウェア企業、欧米経営コンサルティング企業などで事業開発やプロジェクト・マネジメント、CRM/マーケティングに従事。2011年、MSF日本へ入職。資金調達部ディレクターとして勤務し、現在に至る。

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