海外派遣スタッフの声

縁の下の力持ち、ロジスティシャンの仕事

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縁の下の力持ち、ロジスティシャンの仕事

ロジスティシャン(物資調達、施設・機材・車両管理など幅広い業務を担当)は、国境なき医師団(MSF)を支える屋台骨といえます。栄養治療センターの運営、そして予防接種プログラムなどを含め、すべての医療活動の陰には、MSFのスタッフが現地で“必要な物資をいつも使えるように手配する”ロジスティシャンの尽力があります。これから3回に分けて、日本人のロジスティシャンの声を通して、その役割を紹介していきます。

第1回「小口隼人32歳、問題解決が私の任務」

緊急援助活動では、何にも増して「早さ」が重要です。活動地で素早く医療設備の整備と物資の供給ができれば、それだけ早期にMSF医療チームによる活動が開始できます。特に、備品や薬の安定供給が不可欠な長期プロジェクトにおいては、物資の安定供給を可能にするロジスティシャンの存在は、治療を効果的に行う上で鍵となります。その支援なしでは、MSFの医療活動はたやすく滞ってしまうでしょう。

困難な地域に

小口隼人(おぐち はやと)さんは、神奈川県出身の32歳(2011年10月時点)。2011年秋までMSFのロジスティシャンとして6回めの派遣活動に就き、スリランカで8ヵ月間活動をしていました。小口さんはこれまでに参加したMSFの活動で、スーダンのダルフールへの2度の派遣のほか、南スーダン、コンゴ民主共和国でも、人道的危機にさらされた地域での非常に困難な活動を経験しています。2010年のハイチ大地震の際は、地震発生4日後に早くも現地に入りました。

医師の健康を保つ

ロジスティシャンの重要な役割について、小口さんは次のように説明します。

「医療スタッフの仕事の基盤に必要とされる一切を取り仕切るのが、ロジスティシャンの仕事です。水や食料の調達、輸送、連絡が第一に重要とされます。その中でもまず、水の確保が大切です。ロジスティシャンとして、どんなプロジェクトでも、安全できれいな水、それなりの食事、安眠のための蚊帳と寝床を手配し、MSFのチームの健康を維持することを最優先にしています。1日に100人もの患者に対応するのに、MSFの医師が下痢や睡眠不足だったら、どんなことになるでしょう?」

買い物計画

MSFの活動で、小口さんは密林深くの村々に薬を輸送し、難民キャンプに水・衛生設備を設置、危険な紛争地帯でも任務に就き、極度に制限された条件のもとで診療所を立ち上げました。そしてまた、被災地の人びとに非常食と医薬品を届けてきました。

国や地域、そして状況によって、ロジスティシャンが解決しなければならない問題は異なってきます。小口さんは続けます。

「ハイチでは輸送が本当に大変でした。まず乗り物の調達に苦戦し、さらに地震によるがれきが道路をふさいでいたからです。ハイチでは物資の購買を担当しましたが、道路が破損していて、1日に数軒の購入先にしか行けません。そのため、毎朝コーヒーや朝食をとりながら、買い物の予定をよく練りこむ必要がありました。そんな1日は、その朝の15分が一番おだやかな時間なんです」

ロジスティシャンには、思いもよらないような問題解決の方法を見つけるための、迅速で柔軟な思考が必要――小口さんが、MSFの活動を始めて間もなく学んだことです。

驚きのトラック治療

「コンゴ民主共和国の山奥で、トラックの後車軸が壊れてしまったことがあります。途方に暮れて、もっと大きなトラックかクレーンでもなければ、そこから動けなそうでした。コンゴ共和国のブラザビルから、現地のメカニックが来たんですが、私は現地のMSF担当者に文句を言ったんです。彼は何のために来たんだ? 腕はいいのかもしれないけど、完全にトラックの後車軸が折れてるのに何ができるのか、って。でも、そのメカニックは医師が骨折を治療するみたいに、鉄の棒とロープで車軸を固定してしまったんです! それから、慎重にトラックをMSFの事務所まで運転していきました。それはもう衝撃的で、びっくりでした!」 (次回「安全確保」に続く……)

第2回「安全確保」

ロジスティシャンの小口隼人(おぐち はやと)さん。

彼は、各プロジェクトで発生する日々の困難に取り組むほか、同僚の安全確保にも責任を負います。いずれの活動においても、はっきりと定められた安全ガイドラインがあり、MSFの全スタッフが従わなければなりません。

だれかがやらねば

例えば、スリランカでのように、武装グループとの敵対を避けるため、MSFスタッフは紛争地帯で写真を撮影してはならないという規則があれば、ロジスティシャンはチーム内の「監督官」となり、その規則の順守を徹底する必要があります。

小口さんは話します。

「規則を強いるのは楽しいものではないので、多くのロジスティシャンにとって、つらい役割です。でも、スタッフの安全のためには大切なことで、だれかがやらなければなりません。ひとりでも、その安全ルールを破れば、皆にとって深刻な結果に至ることもありますから」

古いヘリコプターで

「ダルフールでは、郊外は危険なため、活動地の間を国連世界食糧計画(WFP)のヘリコプターで移動していました。外国人が自動車で移動しようとすれば、どこかで引きとめられて攻撃されてしまうでしょう。ロシア製の騒音のひどい、とても古いヘリで、年配のロシア人のパイロットが操縦していました。急いで離陸する必要があるときや日程に遅れの出ているときも、そのパイロットは決まって離陸直前までエンジンをいじくりまわして、ぎりぎりの修理をしていました。かなりイライラさせられましたし、ストレスにもなりました。でも、飛行中に落下するよりはマシです。」(最終回「日本人であること」に続く……)

第3回「日本人であること」

ロジスティシャンの小口隼人(おぐち はやと)さん。

2007年に初めて派遣されてから、小口さんは、MSFやロジスティックス、そして活動地のことだけでなく、自分自身や日本の文化についても多くを学びました。ロジスティシャンは、現地当局と密接に連携し、現地のMSF非医療従事者を統括しなければなりません。

いかに適応するか

小口さんは言います。

「さまざまな国や地域出身の人びとと働いて理解が深まったのは、現地の状況や同僚たちにいかに適応するかということです。ひとつとして同じ土地はありません。たとえば、スーダンでは友人関係が非常に尊ばれ、あらゆる人生観に深く根ざしています。友情をおろそかにすると、何ごとも進展しません。病院建築のための人手を運ぶトラックを手ごろな価格で借りることも、現地の人びとがMSFの現地診療所を夜間の公衆トイレ代わりに使うのをやめさせることも不可能です!」

「適応こそMSFの長所です。ほかの援助機関がひとつのやり方をどんな場所にもそのまま持ち込むとのは異なり、MSFでは、現地の習慣と折り合い、活動を効率化させるために自分たちのやり方を適応させていけます。組織として適応することが、MSFの活動現場で有利に働いています。そして、それは日本人である私も、とりわけロジスティシャンとして適応する必要があるということです」

四六時中

プロジェクトの物資調達を維持、円滑に運営し、予期せぬ問題や緊急事態に対応するということは、任務発生の可能性が四六時中あるということです。ロジスティシャンが活動地で完全に「非番」でいられることは、まれです。しかし、小口さんはそれをいといません。

「人間には健康でいる権利があると思いますし、人助けが好きなんです。旅行も好きなので、人助けの旅をするMSFの仕事は、私にとって天職のようなものです!」

「この仕事を通じて、世界の文化や社会に何が起こっているのかを追うこともできます。それは、このグローバルな時代には重要なことです」 (終)

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