海外派遣スタッフの声

熱帯病の研究知識をMSFの臨床現場で活かす:長尾 吉郎

ポジション
内科医
派遣国
南スーダンおよびスーダン
活動地域
イダ
派遣期間
2016年7月~2017年2月

なぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?

私は熱帯病の研究をしていましたが、自分の研究分野の患者を実際に治療したいと思い、MSFに初参加しました。

派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

MSF の診療ガイドラインなどに、ざっと目を通しました。

今までどのような仕事をしてきましたか?また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

東南アジアとイギリスで、熱帯病(マラリアとデング出血熱)の研究に従事していました。日本では、内科、次いで小児科に勤務しました。

どのような仕事もMSFの活動の役に立つと思いますが、身体の鍛錬や医学関連以外の幅広い読書なども有益だと感じます。

今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

拠点となったイダ難民キャンプ 拠点となったイダ難民キャンプ

当プロジェクトでは、南スーダン北部のイダ難民キャンプを拠点として、スーダンから南スーダンに避難してきた難民に医療サービスを提供するとともに、スーダン内部でも、かなり重症程度まで治療を行う診療所の構築を行っています。

拠点病院で入院患者・搬送患者の治療にあたる一方、複数の診療所に出張して入院の要否を判断したり、退院後のフォローを行ったりしました。

海外派遣スタッフ数は8人前後でした。医師は私を含む2~3人で、スーダンと南スーダンを1ヵ月ごとに交替で担当しました。

入院患者は7割が小児、3割が成人でした。死亡する患者の9割が小児という印象でした。

疾患としては、寄生虫感染症(主にマラリア、ほかにカラアザール<内臓リューシュマニア症>、フィラリア、住血吸虫症など)、低栄養、下痢症、呼吸器感染症、低出生体重児、新生児感染症、結核HIV/エイズ、熱傷、銃創傷、糖尿病など多彩です。
マラリアによる死因の多くは貧血・低血糖ですが、そこを押さえて適切に対応すれば多くは救命できます。これはMSFのガイドラインにも簡潔に書かれていますが、最初のうちは、現地スタッフになかなか理解してもらえず苦しみました。看護スタッフとの意識あわせを進めるにつれて、いい結果が生まれるようになりました。

ほかにも、マラリアによる死因には呼吸障害や脳性マラリア、肝不全、腎障害などの臓器不全があります。呼吸障害は重症になり救命が難しく、南スーダンのような状況下では脳性マラリア、肝不全や腎障害は十分な検査も診断もできませんでした。呼吸補助装置は小型化・低価格化が進んでいるので、導入されるよう切に希望します。

派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

雨期に備えた車が故障 雨期に備えた車が故障

南スーダンでは、午前7時30分に病棟に顔を出したあと、8時15分からミーティング。8時30分から正午頃まで一般病棟の回診。午後2時から結核・HIV病棟の回診。夜は、ほぼ毎日当直でした。

スーダンでは、午前8時から病棟回診。その後、週3日程度は診療所を巡回します。雨期は道が悪くなり、拠点へ帰るのが午後7時を過ぎることも、ままありました。夜は、ほぼ毎日当直でした。

勤務外の時間に、「焼き肉ビアパーティー」が2週間に1回ほどありました。また、着任から3ヵ月たった時点で1週間の休暇があり、トルコへ行きました。南スーダンではきれいなプールで泳ぐ夢を見続けていたので、プールのあるホテルに泊まり、毎日泳いでリフレッシュしました。3ヵ月ぶりに、蚊に刺されずに爆睡できました。

現地での住居環境について教えてください。

暑いです。衛生環境が劣悪な一面もあります。外国人派遣スタッフの間でも体調を崩し病院へ搬送されたスタッフもいます。私自身、ひどい下痢で脱水になったこともあります。環境に慣れているスタッフは、普段から水筒を持ち歩いてまめに水分をとっています。下痢や脱水を甘く見手はいけないな、と思いました。

活動中、印象に残っていることを教えてください。

現地スタッフは、「看護師」という肩書きを持っていても、ほとんどの人が正規の看護教育を受けていません。数字がうまく数えられない人もいます。そういったスタッフと協力して仕事をしていくわけですので、こちらも「融通が効く」人間でないといけないと感じました。

同時に、日本の高い医療水準は、各職種を担っているスタッフが厳しい訓練を積むことによって成り立っていると痛感しました。そういった人にMSFに参加していただき、日本の医療の良い面を世界に広めてほしいと願います。

今後の展望は?

デング出血熱を含め、ウィルス性出血熱の治療を経験したいと思っています。また、研究と臨床を結び付けたいと期待しております。

今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

個性や特技・専門性は人それぞれ、千差万別ですから、海外派遣に向いている、向いていない、というのはひと言では言えないと思います。どの専門分野にいる人でも、ぜひ応募してみては、と思います。60歳代で派遣されている方もおられますから、年齢を気にせず検討してはいかがでしょうか。

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