特集 シリア内戦10年 10年終わらぬシリア内戦 避難1300万人の危機

シリアの人びとが突然、日常を奪われてから10年。世界で最も多くの避難民を出したシリア内戦は、“第二次世界大戦後、最悪の人道危機”といわれます。いまも終わりの見えないこの内戦は、どのような10年を辿ってきたのでしょうか。

5つの数字で知る シリア内戦10年の被害

空爆、砲撃、包囲攻撃……。2011年に内戦が始まって以来、シリアでは一般市民の命が危機にさらされ続けてきました。また反体制派が統制する地域では、医療従事者さえも命を狙われています。「反政府=テロリスト」と認定され、政府による迫害や攻撃の対象となっているからです。

1枚目:© OMAR HAJ KADOUR - 5D MARK IV/MSF/3枚目:© Hospitals of Aleppo/MSF

  • (出典)1枚目:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と東京都ホームページ(2021年3月現在)/2枚目:国連児童基金(UNICEF)調べ(2021年3月現在)/3枚目:UNICEF「FAST FACTS SYRIA REGIONAL CRISIS 10 YEARS ON」レポート(2021年3月)/4枚目:Physician for Human Rights調べ(2021年3月現在)

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シリア内戦の10年とは?

内戦の始まり

反体制派の旗を掲げ街頭でデモをする人びと=2013年 © MSF

2011年3月、東日本大震災が日本国内を揺るがしていたちょうどその時、シリアでは中東諸国で起きた「アラブの春」が波及。民主化を求めて立ち上がる人びとが現れました。

それまで40年にわたり、独裁政権が続いていたシリア。壁に反政府の落書きをした少年たちの逮捕と拷問をきっかけに、抗議デモが瞬く間に各地で広がりました。政府は平和的なデモを武力で鎮圧しようとしたため、抵抗する市民らも次第に武装化し、内戦状態に陥っていきました。

シリア北部、激しい空爆を受けたアレッポの街を歩く人びと=2016年10月 © KARAM ALMASRI

なぜ終わらない?

内戦はその後、さまざまな国がそれぞれに異なる目的で介入し、混迷を深めていきます。トルコやサウジアラビア、米国などの国々は政権打倒をめざす反体制派を支持する一方で、現状維持を望むイラン、ロシア、中国はシリア政府を支援。2012年には戦闘が全土に拡大し、政府や多数の武装勢力、そして諸外国の思惑が錯綜するなか、終結への道筋をつけることがもはや困難となりました。

さらに2013年頃からは、「イスラム国」などの過激派組織が台頭し、統治の空白を埋めるかたちで北部ラッカなどを掌握。各国は「対テロ戦争」の名の下、軍の部隊を派遣しました。紛争はさらに泥沼化し、代理戦争の様相も帯びるようになったのです。

2015年以降は、政府を支援するロシアが空爆を本格化させたため、反体制派は劣勢となり、最後の拠点である北西部イドリブ県に追い詰められています。

国内で避難する人びとの多くは、トルコとの国境地帯にあるキャンプに追い詰められている=2016年
© Mahmoud Abdel-rahman/MSF

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苦難が続くシリアの現在

2011年以降、戦火や迫害から逃れるために自宅を追われたシリア人の数は、1300万人以上(※1)。内戦前の人口の半数以上にあたります。国内で避難する人の数は670万人で、その多くが先行きの見えない、不安定なキャンプ暮らしを余儀なくされています。残りの660万人のシリア人は、主にトルコやレバノンなどの周辺国で難民となり、そのうち7割以上の人が国際貧困ライン以下の生活をしているとされます(※2)。

さらに2020年以降は、経済危機と新型コロナウイルスの感染拡大がシリア全土を覆い、これらによる深刻な影響も続いています。


  • ※1 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計
  • ※2 世界銀行とUNHCRによる共同調査(2020年12月)
シリア内戦による避難民数と国外の避難先(2021年3月現在)

スタッフのシリア活動記

「それでも、未来を信じて」
村田慎二郎(国境なき医師団日本 事務局長)

戦火が広がるシリア北部アレッポ。当時まだ援助団体が入っていなかったこの地に足を踏み入れ、国境なき医師団の活動を率いた村田慎二郎。病院の立ち上げから、武力勢力との交渉、そして仲間の死……。さまざまな困難に立ち向かった日々をつづる連載です。

現地の様子を動画で知る

追いつめられる市民
安全な場所はどこにもない

学校、市場、そして命綱である病院さえも──。内戦が激化するに伴い、シリアでは市民の暮らす地域までもが攻撃の対象となりました。そんな中、何とか生き延びてきたシリアの人びとの声を3つの動画でお伝えします。

国境なき医師団とは?

「独立・中立・公平」を原則とし、人種や政治、宗教にかかわらず、
命の危機に直面している人びとに、無償で医療を提供しています。

国境なき医師団は、民間で非営利の医療・人道援助団体です。紛争地や自然災害の被災地、貧困地域などで危機に瀕する人びとに、独立・中立・公平な立場で緊急医療援助を届けています。現在、世界約70の国と地域で、医師や看護師をはじめ4万5000人のスタッフが活動(2019年実績)。1971年にフランスで設立し、1992年には日本事務局が発足しました。また、活動資金の9割以上は、民間からの寄付によって賄われています。

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