命を守るはずの医療が、攻撃を受ける。患者や医療従事者が命を落とすだけでなく、医療が提供できなくなり、救えるはずの命が救えなくなってしまう。こうした事態は、今も世界各地で起こっている。
2016年、国連安全保障理事会で、紛争地での医療に対する攻撃を非難する決議が採択された。しかし、2019年には、紛争下の20カ国で、医療施設や救急車、医療者への攻撃が1203件※1も発生した。
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企業勤務を経て、2008年から国境なき医師団に参加。
派遣先は中東やアフリカ、東南アジアなど11カ国、
活動回数は24回に及ぶ。
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命を守るはずの医療が、攻撃を受ける。患者や医療従事者が命を落とすだけでなく、医療が提供できなくなり、救えるはずの命が救えなくなってしまう。こうした事態は、今も世界各地で起こっている。
2016年、国連安全保障理事会で、紛争地での医療に対する攻撃を非難する決議が採択された。しかし、2019年には、紛争下の20カ国で、医療施設や救急車、医療者への攻撃が1203件※1も発生した。
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2016年、過激派組織と政府軍との戦闘が激化したイラク・モスル。国境なき医師団は2017年、紛争最前線の市内に入り緊急援助を開始。その中心にいたのが、緊急派遣された萩原だった。紛争とその影響が続く各地で、救急救命をはじめとした医療援助を提供した。
2020年現在も、モスルの医療環境は厳しい状況が続いている。過激派組織との戦闘は終結したものの、イラクではまだ140万人※2近くが家を追われたままで、高い医療ニーズに見合う保健医療体制も整っていない。
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萩原には、深く印象に残っている患者がいるという。
イラクに着任して1カ月が経った頃。モスル東部のチグリス川沿いに戦闘による追砲弾が着弾した。間もなく、病院の救急入口に一台のタクシーが猛スピードで突っ込んできた。その中には、父親に抱かれた、ランドセルを背負ったままの10歳程度の瀕死の少年の姿があった。治療を試みたが及ばず、その場にいたスタッフは放心状態に陥り、中には叫びながら屋外に飛び出し、何度も自分の頬を叩き続ける者もいたという。
「現場では常に、心から血が流れるようなことが起きている。だからこそ、私たちがここにいる」
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危険と向き合う活動を続ける原動力は何か。萩原は、「だってこんなのおかしいじゃない」と話す。世界ではいまも、たくさんの人が命の危機に瀕している。それを運命だから仕方ないと受け止め、自分を納得させるという選択肢もある。でも自分はどうしても見過ごせない。そんな怒りにも近い感情が彼を突き動かすという。
萩原はいまも、緊急援助の現場に立ち続けている。
※1 Safeguarding Health in Conflict Coalition(2020年)
※2 国連難民高等弁務官事務所(2020年)
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