国境なき医師団
 
ロヒンギャ難民、コロナ禍でさらなる苦境に
バングラデシュ・コックスバザール県の難民キャンプは、約100万人が暮らす世界最大のキャンプともいわれる(2019年6月撮影)
バングラデシュ・コックスバザール県の難民キャンプは、
約100万人が暮らす世界最大のキャンプともいわれる(2019年6月撮影)
日頃より、国境なき医師団(MSF)にご関心をお寄せくださり、誠にありがとうございます。
今回は、避難生活が長期化しているロヒンギャ難民の人びとに注目して、コロナ禍においてどのような問題に直面しているか、ウェブサイト未掲載の情報とあわせてご紹介いたします。


「ロヒンギャ」、ご存じですか?
ロヒンギャは、主にミャンマー西部に暮らすイスラム系少数民族。ミャンマーでは差別・迫害されていました。ちょうど3年前の2017年8月25日にミャンマー政府軍によって行われた「掃討作戦」以降は、100万人を超える人びとが周辺国へ脱出。その多くが避難した隣国バングラデシュでは、不法滞在者として扱われ、過密で不衛生なキャンプ生活を長く強いられています。
<参考記事>
・「ロヒンギャ難民危機:3年が経っても先の見通しが立たず さらに新型コロナウイルスの脅威が」(2020年8月25日)
・現地で活動をした、平井亜由子医師の記者会見でのご報告です。活動内容、ロヒンギャの人びとが置かれた困難な状況を写真と共にご紹介しています。「帰還を恐れるロヒンギャ難民 不安を抱えて難民生活も長期化」(2018年12月10日)
・ミャンマーからバングラデシュに逃れた人びとの証言をご紹介します。「ただ普通の人生を生きたいだけ……虐殺を生き抜いた2人の女性」(2019年9月19日)


難民キャンプではどう新型コロナから身を守る?
MSFは、世界最大の難民キャンプと言われるバングラデシュ・コックスバザール県の難民キャンプでも医療活動をしてきました。子どもの栄養失調、はしかや水ぼうそうなどの感染症対策、救急や出産介助、そして衛生設備の設置や清潔な水の配給など、その活動は多岐にわたります。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、このキャンプで暮らす人びとにとっても脅威です。石けんも清潔な水も確保しにくい不衛生な環境。飲料水や食料の配給を受け取るのにも、密集した中で何時間も待つ必要があります。
「手洗いをしつこく求められるため、難民の皆さんはいらだっています。1人あたり1日に11リットルしか水を確保できないのに、1日中ずっと手が洗えるでしょうか?」MSFにおける給排水・衛生活動の専門家リチャード・ギャルピンはそう話します。
<参考記事>
・「新型コロナウイルス:バングラデシュとロヒンギャ難民キャンプにおける5つの課題」(2020年5月29日)


「家を燃やすと脅された」モハンマドさんのお話
7月31日に公式ウェブサイトに掲載した記事「新型コロナウイルス:『家を燃やすと脅された』――バングラデシュ、感染者が受ける深刻な偏見」には一部しか掲載できなかった、モハンマドさんのお話をご紹介いたします。
新型コロナウイルス陽性が確認されて、2週間の病院隔離となったモハンマドさん。家族も、念のために自宅隔離をすることになりました。以下はモハンマドさんによる証言です。
「近所の人は、私が悪人だから陽性になったと言っているそうです。そして家族を避けています。人びとは、棒を片手に家を取り囲み、『隔離施設に行かないなら家を燃やすぞ』と叫び騒ぐそうです。サッカー観戦でもするかのように、その様子を見物する人もたくさんいます。
家族にとって、屈辱的なことです。私は申し訳なく、そして恐怖を感じました。

MSFの新型コロナウイルス感染症用の隔離・治療センター
(2020年7月、コックスバザール県・ナヤパラ難民キャンプにて)
しかし、私は家族に『どこにも行くべきではない』と伝えました。
もし家を出たら、尊厳を失います。私の娘は、家を追い出されるぐらいなら自殺したいとまで言いました。やっとの思いでキャンプにたどり着いてから、ここから出たことがありません。外の世界で生きる方法を知りません。私はコミュニティのリーダーを電話で説得して、家族が自宅隔離することに理解を得られました。
ここの人びとは、ミャンマーにいた頃、家族が引き離されたり拷問を受けたりして傷ついています。そのため、再び家族と引き離されることを恐れて、症状があっても隠します。もしそれが原因で死ぬことになっても、家族と引き離されるよりは家で死ぬことを選びます。
もし他の人が同じような境遇に陥ったら、私は手を貸したいです。多くの人は、人知れず苦しむだけです。このような新型コロナウイルス感染症の症状が出ても病院に行くのを控え、その結果家族や地域にウイルスが広まり、流行拡大につながります。
今回の経験から、私は次のことを伝えたいです。誰かが新型コロナ陽性と確認されても、偏見や差別をしたり、彼らや家族を攻撃したり脅したりしないこと。感染症にかかることは、彼らのせいではないのです」
<参考記事>
・「新型コロナウイルス:「家を燃やすと脅された」――バングラデシュ、感染者が受ける深刻な偏見」(2020年7月31日)


地域住民と「信頼」を築く活動を
今までに世界中で、エボラ出血熱やジフテリアなどのさまざまな感染症に対応してきた経験から、MSFは「信頼」を公衆衛生対策の中心に位置づけています。そこで、衛生や健康に関する正しい知識を伝える活動も実施しています。人びとは感染症に対して大きな不安を抱いていますが、その不安によって、噂やデマが広まると適切な治療を受けられない人びとが出てきます。だからこそ適切な予防方法、不確かな情報に対処して不安を和らげる方法を地域住民に理解してもらうことが大事なのです。
そのほかにも、地元有力者らの協力を得て、保健衛生情報の啓発活動を実施したり、治療に関するデマや不安を取り除くために隔離治療施設の見学会を開くなどして、現地住民との信頼構築を図っています。
<参考記事>
・7月16日発表の記事「新型コロナウイルス:「毒薬注射」「人体実験」――世界に広まるデマに対抗するための「カギ」とは



皆さまのご支援が、世界各地で大きな力になっています
MSFは、特定の国家、政治や特定の勢力の干渉を受けず、生命の危機に直面している人びとに医療を提供します。この「独立・中立・公平」を原則とした活動は、資金の約96%を、個人・法人など民間によるご寄付でまかなうことにより実現されています。いつもご寄付や、活動に関心をお寄せくださる皆さまのお陰です。誠にありがとうございます。
2019年、バングラデシュにおいて皆さまのご支援で次のような活動を行うことができました。
・3.88 億リットルの塩素処理をした水を配給できました
・55万6300人が外来診療を受けられました
・2万7700人が心のケアを受けられました
・3400件の出産を介助できました

「今回の寄付」のご案内
MSFの活動を、任意の金額をその都度ご寄付いただく「今回の寄付」でご支援いただくこともできます。ぜひご検討をお願いいたします。
新型コロナウイルス感染症への対応に使途を指定した寄付をご希望の方は、今回の寄付受付入力画面の支援対象に「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」を選択してください。
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未来を支える、「毎月の寄付」のご案内
多くの幼い命を奪っている栄養失調への対応や、感染症から身を守る予防接種など……、中長期的な医療援助活動に必要な安定した資金は、MSFの活動に共感してくださる皆さまの継続的な「毎月の寄付」に支えられています。安定した資金はまた、災害や新型コロナウイルス感染症など緊急事態への迅速な対応を可能にします。
私たちの活動を未来につなぐため、「毎月の寄付」への参加をご検討いただければ幸いです。
既に「毎月の寄付」にご参加いただいている方には重ねてのご案内となり、失礼いたします。国境なき医師団に対する継続的なご支援に、心より感謝申し上げます。
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・認定NPO法人である国境なき医師団日本への寄付は 税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。
・「毎月の寄付」にご参加くださる皆さまには、12月下旬~翌年1月下旬までに確定申告にご使用いただける年間領収書をお送りします。(年間領収書とは、1月~12月の間に入金が確認された寄付金をまとめた領収書のことです。)
・年間領収書とあわせて、フィールドパートナーカード(裏面にカレンダー付き)と年間の活動・財務報告をお伝えする活動報告をお送りいたします。

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