南スーダン難民10万人以上が暮らすエチオピアの難民キャンプで、病院を立ち上げる活動に参加しました。栄養失調、マラリア、さまざまな感染症にかかった患者さんたちが来院して、その人数も圧倒的です。

ある日、病院内でお母さんがある赤ちゃんに授乳している姿が目に止まりました。栄養失調なのか、とても小さな赤ちゃんです。お母さんの赤ちゃんを見つめるやさしいまなざしが印象に残りました。

翌日、仕事中にあの赤ちゃんとお母さんを見かけます。また、お母さんにおっぱいもらっている。良かったね。

あれ? お母さん、昨日の人と違ってないか?

気になった私は、赤ちゃんを抱いている女性に尋ねました。
「この子の本当のお母さんは誰ですか?」

「私たちは母親ではありません。この子の本当の母親は出産時に亡くなりました。父親は南スーダンの戦闘で生死不明です」

つまり、一人ぼっちの赤ちゃんを、他の入院患者の母親たちが交代で育てていたのです。入院日数は平均が5日のため、すでに何人もの母親がバトンタッチしていました。

「私たちは、赤ちゃんの両親のことは全く知りません。でも、小さな赤ちゃんがいて、私たちはその子に母乳を与えることができるわ」

そう言いながら、ほほ笑む彼女たちのたくましさとやさしさ!

話を聞いた私たちスタッフも、新生児サイズの蚊帳を作ったり、沐浴をさせたりなど、皆で協力。極度の栄養失調だった赤ちゃんは、たくさんのお母さんたちの愛情に支えられて、自分でスプーンが持てるほどに回復したのです。

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畑井 智行(看護師)

2013年から国境なき医師団(MSF)の活動に参加。以降、南スーダン、リベリアのエボラ流行対応などで活動。ネパール地震被災地では医療チームリーダー、タンザニアでは薬剤マネジャーを務めた。「MSFの活動では、過去のバックパック旅行、料理、自動車、パソコン、登山、スポーツなどの趣味特技……すべての経験が、いつかどこかで役立ちます!」

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