海外派遣スタッフの声

難民キャンプで人びとの強さに触れる:的場 紅実

ポジション
薬剤師
派遣国
ウガンダ
活動地域
アジュマニ
派遣期間
2014年9月~2015年3月

国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

初回のマラウイでの活動で、プロとしても人間としても尊敬できる多くの友人たちに出会いました。初めてアフリカ大陸で働き、そこに住む人たちへのさまざまな想いも残りました。何よりも、またアフリカの空の下で働きたいと思ったことが、活動を続けることを決めた最大の理由です。

幸運なことに、初回派遣終了直後のデブリーフィング時に今回の派遣を仮打診され、1ヵ月半の休暇を挟み2回目の活動に参加しました。

派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

1ヵ月半と短い休暇だったので、仕事はせず、身体を休めることと、国内の友人や家族とよい時間を過ごすことを第一にしました。フランス語の勉強を始めたかったのですが、意志が弱く、ほとんど手を付けられませんでした。。。

ウガンダで参加予定のプログラムが、南スーダンからの難民への医療提供活動でしたので、難民関連の資料を読むよう努めていました。

過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

基本的な薬局運営は初回派遣でほぼ理解していたので、スムーズに活動に入り込むことができました。何より、初回派遣時に、ごく短期間上司であった人が私の業務範囲を超える仕事の情報をすべて説明しながら一緒に働いてくれたことが、今回とても役に立ちました。考え方、チームとの仕事の仕方、仕事の倫理など、ときどき思い起こしては自分を励ましていました。

今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

キャンプには日々、南スーダン人難民が到着する キャンプには日々、南スーダン人難民が到着する

2013年12月に起きた南スーダンの政治暴動の影響で、人びとは近隣諸国へ避難しました。ウガンダ国内へは14万人の南スーダン人難民が逃げ込み、特に国境付近の街アジュマニへは、2015年3月までに9万人近い難民が避難しました。

MSFは2014年1月に緊急援助活動を開始し、アジュマニにて難民への医療サービスの提供を開始しました。基礎医療を中心に、予防接種、感染症治療(マラリア、髄膜炎、はしか、コレラなど)を提供するほか、産婦人科、精神科、26床の入院施設もあります。

私が派遣された2014年9月時点では、南スーダンの情勢はまだ不安定で、毎日数十人の人が国境を越えてアジュマニへ避難してきていたもののピークは過ぎ、MSFの医療活動自体は安定していました。

海外派遣スタッフは11~13人、現地スタッフは約150人で、すでに公立の診療所への援助は終了し、MSFが設営した3つの診療所を運営していました。主な疾患はマラリアで、上気道感染、下痢も多く、はしかの流行や水ぼうそうが流行したこともあります。

派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

診療所の外来専門薬局 診療所の外来専門薬局

診療所のスタッフは毎朝7時半にMSFの拠点を出て、各診療所へ向けて出発します。薬局スタッフは、それまでに予防接種のためのワクチンを準備します。毎週火曜日と水曜日に各診療所へ1週間分の薬剤を届けると共に、診療所内の薬局のサポート(棚卸、システムの改善、医療スタッフとの交渉など)をします。

アジュマニは首都から遠く、供給インフラも整っていないため、薬剤供給は首都経由に依存するしかありませんでした。私の任期中は、緊急援助活動後の薬剤整理、薬局整理、医療活動の質の向上、薬剤の有効活用などが主な活動目的となりました。

薬局の情報をオープンにし、過去の実績も含め、不透明な点を整理しつつ現在庫状況からどう最善の医療を提供できるのかをテーマに、医療チームと密にコミュニケーションをとっていました。

難民キャンプ内の診療所で薬局薬剤師に薬の説明をする 難民キャンプ内の診療所で薬局薬剤師に薬の説明をする

住居と薬局が同敷地内にあり、毎日10~12時間は仕事をしていました。土曜日は半日~終日仕事をし、日曜日はなるべく仕事に手を付けないよう心がけていました。

勤務外の夕刻は、バドミントン、バレーボール、ジョギングなどをして気分転換をし、夕食から就寝までは仲間とテラスで雑談をしたり、白いシーツをスクリーンにして映画をみたりしました。週末には現地のクラブでウガンダの音楽に合わせて踊ることも多かったです。

長期間いろいろな人と仕事も生活も共にするため、自分の時間とチームの仲間と一緒に過ごす時間のバランスが大事だと感じました。

現地での住居環境についておしえてください。

雨期にはすさまじい土砂降りになる 雨期にはすさまじい土砂降りになる

私が着任する2ヵ月ほど前に、農学校の予定で建てられた施設をMSFが借り受け、薬局を含めたオフィスと住居としていました。しっかりとした2棟の寮があり、扇風機付きの個室を与えられていました。敷地内には、トカゲ、カエル、コウモリ、ネズミ、ヘビ、サソリなど、いろいろな住民が居ましたが、大きな支障はありませんでした。週末も含め、コックさんたちが美味しい食事を作ってくださり、生活に特に不便はありませんでした。

アジュマニは赤道直下に位置するため、乾期はかなり暑くなり日中は40度を超すこともありました。雨期は一転して、土砂降りと稲妻が美しいほどのすさまじさでした。周りに何もない土地で、自然の変化を直接、日々感じていました。

活動中、印象に残っていることを教えてください。

難民の多くは、避難して国境を越えることで仕事や勉強を中断することを余儀なくされています。特に、大人が高等教育や職業訓練などの機会を避難先の国で得ることは難しく、教育や仕事のために、危険であっても南スーダンに戻るという人びと(特に男性)は多いように感じました。

避難先の国で安堵(あんど)しつつも、またその次を考えながら生活する必要性、その段階の支援の在り方について考えさせられました。また、ウガンダで一緒に働いた現地スタッフも、お金をためて、次のステップまたは夢のために学校へ戻る、仕事を探すという人は多く、変化や挑戦に対するアフリカの人びとの精神的強さを感じました。

アフリカの空を毎日満喫し、言葉では表現できませんが、それだけで仕事を続けていける力をもらっている気がしていました。

今後の展望は?

MSFの活動地にてこれまで約12ヵ月を過ごし、組織に対する理解も深まり、次の派遣ではやっと1人前の仕事ができるような気がしています。また次の派遣では、少しでもフランス語を使えるように自己学習します。

焦らずに、不安に陥らずに、しっかりいい休暇を取ることも、MSFを継続するうえでは、とても大事なことです。これも、最近上手になってきました。

今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

私はMSFで初めてアフリカの地を踏み、海外で働くという経験をしました。尊敬する写真家の星野道夫さんの言葉を借りれば、「こんな地の果てと思っていた場所にも人の生活があるという当たり前のこと」を知りました。いろいろな障害があるかもしれませんが、諦めず、臆せずに行ってみてください。

MSF派遣履歴

派遣期間
2014年1月~2014年8月
派遣国
マラウイ
活動地域
チラズル
ポジション
薬剤師