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海外派遣スタッフの声

紛争地で現場の責任者としてプログラムを運営:村田慎二郎
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- 2012年5月~11月、2012年11月~2013年6月
なぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?
2005年に初めての海外派遣を経験して以来、今回で8回目となり、派遣期間の合計は延べ73ヵ月となりました。私がMSFで仕事を続けているのには、次の3つの理由があります。
- MSFの憲章に強く同意できる。
- 世界の現実を直視し、その中で崇高な理念を遂行していくMSFという組織で働いていることに誇りを持てる。
- 自分の将来の夢を実現させるための様々な経験が積め、毎回確実に成長できる。
今までどのような仕事をしていたのですか?どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
MSFに参加する前は、外資系IT企業で営業を3年間やっておりました。競合他社との熾烈な競争や厳しい上司の下、仕事に対する責任感や積極的な姿勢、コミュニケーション力や洞察力、提案力などの基本がここで身につき、今でもどんな仕事をする上でも土台になっています。
MSFに参加してからは、複数のプログラムの医薬品やその他すべての物資のロジスティクス(調達管理)を一手に請け負う「サプライ・ロジスティシャン」や、プログラムの人・モノ・金を管理する「ロジスティシャン兼アドミニストレーター」としてパキスタンやダルフールなどで2年間ほど働き、現地スタッフを含め文字通り多国籍・多文化のメンバーとの異文化コミュニケーションや、責任を分担しながら共同で仕事をしていくチームワークを学びました。
その後、プログラムの運営に責任を持つ「プログラム責任者」という職務を南スーダン、ナイジェリア、イラクで3年間ほど務めました。多彩な経歴、そして多様な性格の持ち主がいるメンバーを率いて、医療人道援助を紛争地帯で指揮する仕事です。対外的には、現地の保健省や警察、軍、政党、コミュニティのリーダー、急進的グループ、そして反乱軍などとも話し合い、私たちの活動に対する理解を獲得していく大事な役割を担います。マネジメントや安全管理のスキルだけでなく、リーダーシップや交渉力が鍛えられました。
「ロジスティシャン兼アドミニストレーター」として働いていた時は、将来自分が「プログラム責任者」になったらどうプログラムを運営していくべきか、そして「プログラム責任者」として働いていた時は、将来自分が「活動責任者」になったら派遣先国全体の活動をどう運営していくか、よく頭の中で思い描いていました。
こういった経験がすべて、今回の仕事にうまく活かせたと考えています。
今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?どのような業務をしていたのですか?

2012年5月から2013年6月まで、MSFの「活動責任者」として1年間シリアに赴任してきました。2011年初頭から始まったシリアの反政府運動は武力衝突のレベルを通り越して内戦にまで発展、悪化の一途をたどっています。民間団体や国連の発表によると、2013年8月末の時点でこの内戦による死者の数は約11万人、隣国のトルコやレバノン、ヨルダンに避難せざるを得なかった難民の数は190万人以上、そして国内で避難生活を余儀なくされている人の数は約425万人、医療や物資の援助を必要としている人の数は約680万人にのぼります。(ご存じの通り、これらの統計は今も毎月増え続けています)
私は活動責任者として、被害状況が最も深刻な一つのアレッポ県で医療人道援助を提供するゴールを設定しました。そのためにまず、トルコでシリア難民に対して心理ケアを提供するプログラムを立ちあげ、そこで現地コミュニティとの人的ネットワークを構築し、段階的にシリア国内での活動を展開する戦略を立案しました。

2012年11月にシリアのアレッポ県に設けたMSFの病院には、空爆やミサイルなどの攻撃で負傷した人を治療する外科だけではなく、産婦人科と一般外来(内科)も設けました。MSFの現地調査の結果、この地域のほとんどの病院は主に負傷兵の治療に専念していることがわかり、妊婦の産前・産中・産後のケアが絶対的に不足していたことと、やはり子どもたちの健康状態が懸念されたからです。
結果としてMSFの病院には多くの妊婦や子どもたちが訪れ、アレッポ県北部の30ヵ所以上の村々から負傷した兵士や一般市民の緊急患者が搬送されるようになり、現地の医療ニーズに貢献できるようになりました。また2013年3月にこの地域で発生した「はしか」にも、集団予防接種と治療に必要な医療薬の提供を行い、感染拡大の防止に努めました。

シリア国内でMSFが運営する6つの病院、4つの医療センター、移動診療を合わせると、全体では2013年8月末までに4000件以上の外科手術、1300件以上の出産、8万件以上の診療を行っており、7万7000人以上の子どもたちにはしかのワクチンを提供しました。膨大な医療ニーズに比べますと、「Drop in the ocean(大海の一滴)」ではありますが、MSFは最大限の努力をしています。
最終的には、状況が更に深刻な地域に同じ内容の病院をもうひとつ立ち上げるプログラムを提案し、現地での下準備が完了したところで、私の1年間の派遣期間が終わりました。
週末や休暇はどのように過ごしましたか?
貴重な休みの日には、なるべく気分転換をするよう努めました。
現地での住居環境についておしえてください。
以前経験した、スーダンやナイジェリアに比べればいい住環境でした。
良かったこと・辛かったこと
良かったことは、海外から派遣されてきた多くの外科医や麻酔科医、看護師や助産婦などの医療チームのメンバーが、派遣期間を終えてそれぞれの母国に帰国する時、「来てよかった。本当にいいプログラムだ」と言ってくれたことです。中には、「少し休んでからまた来たい」と言ったスタッフも何人かいました。それだけ医療ニーズが明らかで、自分たちがやっていることに対する結果が見てとれるプログラムだからだと思います。
辛かったことは、政府軍からの砲撃による攻撃が急に増加した時期があり、MSFの病院がある村の周辺にも何発か着弾し、チームと患者の安全のために病院を一次的に閉鎖、活動を縮小せざるを得なかったことです。この時期、「戦闘が続いていて患者はほかに行き場が無いのに、医療を提供できない」というチームメンバーのストレスは相当なものでした。私も非常にストレスを感じました。攻撃の標的・傾向がつかめず、適切な安全対策が立てられなかったからです。結局、活動の運営・管理を行うオペレーション事務局からの分析サポートと専門的なアドバイスを得て、病院の建物を取り囲むバリケードを建設した後、通常の活動に戻すことができました。このように内戦が続くシリアでは、状況把握と安全対策に最も神経を使いました。
派遣期間を終えて帰国後は?
久しぶりに妻と一緒に過ごしながら、次の派遣に備えてしっかりと充電をしています。
今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
私は初回の派遣が決まるまで1年近くかかりましたが、その私が今では現場のトップである活動責任者です。「自分の命を大きく使いたい」「一度しかない自分の人生、世界に貢献してみたい」という人には、国境なき医師団の活動に一度参加してみることをお勧めします。人道援助を理解するのは、実はそれほど難しいことではありません。
「日本人の礼儀正しさ」に人としての「強さ」と「大きさ」が加われば、リーダーとして世界で通用します。私もまだまだですが、意志がある人には必ず道は開けます。互いに、頑張りましょう。
MSF派遣履歴
- 派遣期間
- 2010年9月~2011年11月
- 派遣国
- イラク
- プログラム地域
- ナジャフ
- ポジション
- プログラム責任者
- 派遣期間
- 2009年5月~2010年4月
- 派遣国
- ナイジェリア
- プログラム地域
- バイエルサ州
- ポジション
- プログラム責任者
- 派遣期間
- 2008年6月~2009年2月
- 派遣国
- 南スーダン
- プログラム地域
- 西エクアトリア州
- ポジション
- プログラム責任者
- 派遣期間
- 2008年4月~2008年6月
- 派遣国
- ジンバブエ
- プログラム地域
- ブルワヨ
- ポジション
- ロジスティシャン/アドミニストレーター
- 派遣期間
- 2007年4月~2008年2月
- 派遣国
- スーダン
- プログラム地域
- ダルフール地方
- ポジション
- ロジスティシャン/アドミニストレーター
- 派遣期間
- 2006年6月~12月
- 派遣国
- パキスタン
- プログラム地域
- カシミール地方
- ポジション
- ロジスティシャン/アドミニストレーター
- 派遣期間
- 2005年7月~2006年5月
- 派遣国
- スーダン
- プログラム地域
- ダルフール地方
- ポジション
- サプライ・ロジスティシャン
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