海外派遣スタッフインタビュー

外科医吉野 美幸

多様な症例を診て
「対応力」が身につく
国境なき医師団で医師として成長

外科医の吉野美幸は、1年のうち半年を国内の総合病院で働き、残りの半年を国境なき医師団(MSF)の活動地に赴く。紛争や貧困にあえぐ人びとに医療を届ける――10代の夢を実現した彼女の軌跡、そして展望を聞いた。

参加のきっかけ

医療の道を志した原点に立ち返って

きっかけは1枚のポスター。「国の境目が生死の境目であってはならない」というMSFのスローガンを目にして「やりたかったことはこれだ」とハッとしました。医師6年目、外科専門医の資格を取った年でした。

中学時代から国際援助に興味があり、貧困を解決するには「教育」だと、教師を目指していたんです。でも、進路を考えた高校3年のとき、生きることすら大変な人たちがいる、その状況を変えるにはまず「医療」ではないかと考え、医師を選びました。

医学部卒業後、日本の病院で経験を積みました。産婦人科の勉強をしたり、整形外科の手術に入らせてもらったり、離島医療に従事したり……専門以外も学びました。

あのポスターを目にしたのは、医師としてこのままでいいのか悩んでいた時期でした。「行動するなら今」と参加を決断。活動地へ行くために退職しましたが、「1年のうち6ヵ月はMSFに行ってもいい」と言ってくれる職場が見つかりました。

仕事内容

医師の「対応力」が問われる現場

外科医は緊急援助活動が多く、銃や空爆による外傷といった、日本ではまず遭遇しない症例を診る機会があります。臨機応変に動く対応が求められます。

中央アフリカ共和国で、矢が貫通した患者さんを診たときは衝撃を受けました。山間部のクリニックにはレントゲンがなく、どんな状況か分からないからと 麻酔科医は反対しましたが、受け入れました。矢は幸い心臓には達しておらず、肺の部分切除で一命をとりとめました。

アフリカの活動地では、ナタやマシェット(大きな草刈り鎌)などの身近な凶器で傷つけられた患者さんを多く目にします。日本では診たことがないほどひどい交通事故のケースも多々あります。道路が整備されておらず、交通ルールもないような状況なのです。

MSFはいろんな経験をしたい人に向いていると思います。日本の外科医は細分化された分野を極めるのが一般的。例えば、私の専門は消化器一般外科です。一方、MSFでは帝王切開から脳神経外科、形成外科まで幅広くカバーしなければなりません。現場で学び、医師としての経験も度胸もつきます。

2013年、アフガニスタンの外傷センターにて

活動のやりがい

多くの救える命がある。一晩で50件の手術も

日本なら医師20人で対処することも、MSFでは1人でやらなければなりません。命を救うことを最優先に必要最低限の医療を目指します。

パレスチナのガザ地区では、イスラエル軍による空爆があり、一晩に50件の手術を経験しました。2人同時に手術したり、廊下で手術したりと凄まじい状況で、現地の外科医たちと協力して、朝まで手術を続けました。何の罪もない子どもたちが戦闘に巻き込まれ、傷ついているのを見るのは本当に悲しいことでした。

それでも救える命がたくさんあり、大変だけどやりがいがあります。自分の手術で、手足を失わずに済んだ!命が助かった!という手ごたえが大きいんです。

ガザで多数のパレスチナ人負傷者を治療

チームワーク

家族のような仲間は人生の宝

外国人派遣スタッフは住居も同じなので、顔を見ただけで調子が分かるほど仲良くなります。志を共有するからこそ距離感も近いんです。MSFを通して素敵な仲間に出会えたことは人生の財産です。「人を助けたい」という思いで母国の職場を一時的に離れて来る人たちで、本当に尊敬できます。

極限状況に置かれることも多いので、生き抜く術としても仲間と関係を築くのは大切です。また、MSFは心理ケアの体制もしっかりしており、活動後には必ずプロのカウンセリングが受けられます。毎回、同じ人が話を聞いてくれるので気持ちを落ち着かせることができます。

スマイルは世界共通の言語

今後の展望

何歳になっても新たな挑戦ができる人生を

MSFの医師には、活動するうちに別の分野に興味が沸き、専門を変える人もいます。フットワークが軽く、変化を怖がりません。

フランス語圏の活動に参加できず悔しい思いをしたのをきっかけに、私はフランス語の勉強を始めました。MSFの活動に数多く協力しているスタッフには語学研修のチャンスもあり、パリで2ヵ月間の集中トレーニングを受けました。フランス語の活動地が多いので、活動の幅が広がります。

周りからは自由人だと思われています(笑)。今は頭上に広がる空を見上げて「どこへ向かおうかな」という感じで、やりたいことがまだまだあります。80歳になっても、そう思っている気がします。次の目標は、結婚・出産してMSFの現場に復帰すること。そうやって、後に続く女性のロールモデルになれたら嬉しいです。

キャリアパス

2004年
聖マリアンナ医科大学卒業
2007年
多摩総合医療センター初期・中期研修医を経て同センター外科に入職。外科専門医取得後、海外派遣に備えて系列病院産婦人科で1年間研修
2012年
新座志木中央総合病院入職
2012~
2017年
MSFナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン、パレスチナ、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、イエメン、イラクなど計15回の活動を経験
2017年
MSFMSF日本 専務理事に就任
2018年
MSFMSF日本 副会長に就任

※掲載内容は取材当時のものです。

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