海外派遣スタッフインタビュー

麻酔科医三浦 由紀子

日本の病院と国境なき医師団の
現場を行き来して
無理のないペースで活動を続けたい

国境なき医師団(MSF)の三浦医師は、2008年の初参加以来、イスラム圏の活動に数多く従事してきた。「世界のあちこちで自分のスキルが役立てられるのが嬉しい」と語る。日本と海外の医療現場を行き来し、持続可能なスタイルで働き続ける秘訣を聞いた。

活動内容

言葉を超えて通じ合えた瞬間

初めて活動したイエメンは鮮烈でした。首都サヌアから車で9時間ほどの山奥の村。途中の道も遮断され、たどり着くのもやっとでした。外国人スタッフは私を含めて3人で、ほかは現地採用のスタッフ。麻酔機材はベーシックで、日本ではもう使われていないようなもの。日本人は1人、英語の仕事も初めて。ちゃんとできるだろうかと不安でしたが、それまでの経験を駆使して6週間を乗り切りました。

子どもをはじめ若い患者が多かったです。ガス設備の不良でやけどを負った子ども、銃の暴発でけがをした人、戦闘で傷ついた兵士もいました。日本では診ることのない銃槍、爆撃槍に対応したりする機会もあり勉強になりました。

現場の仕事はチームワーク。現地スタッフに指示を出してサポートをもらいます。イエメンの公用語はアラビア語で、英語は片言しか話せないためコミュニケーションが難しい面もありましたが、控えめな日本人は親しみをもたれやすいのか、スタッフも患者さんも親切に受け入れてくれました。

イエメンの女性は普段、アバヤとよばれるベールで顔を覆っています。女性病棟で男性医師がいなくなると、女性の患者さんが近づいて素顔を見せてくれました。短期間だけ来ている外国人の私たちにもフレンドリーに接してくれたのが嬉しかったですね。現地の女性たちは、おびえて暮らしているのかと思っていたら、とても生き生きしており、こちらの方が元気をいただいていました。メディアは戦闘しか取り上げませんが、現地には普通の人びとの営みがあります。一方で、紛争地では医師より兵士の方が給料は高く、医療が停滞するという現実も目の当たりにしました。

参加のきっかけ

MSFでの活動と同時に、新しい技術や知識の習得も大切

麻酔科医として10年ほど経験を積んだ頃、MSFで活動した医師に出会ったのが参加のきっかけでした。もともと医師という職業を選んだのは、「日本以外でも技術や知識を生かせるかもしれない」という思いから。MSFの話を聞いて、そのことを思い出したんです。少し余裕ができたときに「工夫すれば海外にも行けるかも。できるところまでやってみようかな」と思いました。

麻酔科医としてフリーランスで働ける環境も整ってきていました。病院を辞めて3ヵ月イギリスに語学留学し、帰国後MSFに登録。MSFのためにフリーになったので、最初の約2年間はイエメン、ナイジェリア、パレスチナ、ナイジェリアと集中的にMSFで働きました。

以後は日本で常勤となり、病院を変わる間などに活動してきました。医療技術はめまぐるしく進歩していますから、日本で働くことも大切だと思っています。その経験が今後MSFにつながることもあるでしょう。現在の職場は理解があり、閑散期の夏季に休みを取って1~2ヵ月MSFに参加しています。

活動地を再訪することもあります。麻酔の技術を指導した現地スタッフに再会し、頑張っている姿を見るのは嬉しいですね。みんな覚えていて、再会を喜んでくれます。

メッセージ

回数を重ねると判断力がつく。それぞれのペースで参加しては

「MSFの現場へ行くのは怖くないか」と聞かれることがあります。セキュリティはプロが情報を集めてくれているので、不安はありません。MSFは医療スタッフだけでなく、非医療系職種にも専門家が配置されています。

派遣経験を積むことで、セキュリティに関して「ここまでは許容できるけど、これ以上は無理」と判断ができるようになりました。だから無理せず続けられているのかもしれません。

これからも1~2年に1度ぐらいのペースで活動できればと思っています。自分のスキルを生かせる場所があるのはとても嬉しいことです。参加を検討している方は、意気込みすぎず「自分にできるところまででいい」というスタンスで始めてもいいのではないでしょうか。

ガザ地区のチームメンバーと

キャリアパス

1997年
岐阜大学医学部卒業後、麻酔科医として研修開始
2008年
3ヵ月イギリスへ語学留学、帰国後MSFに登録
2008~
2009年
MSFイエメン、ナイジェリア、パレスチナで計4回の活動を経験
2012年
MSFパキスタン派遣
2014年
MSFパレスチナ派遣
2017年
MSFイラク派遣
現在
国内の病院で麻酔科医として常勤

※掲載内容は取材当時のものです。

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