海外派遣スタッフインタビュー

プロジェクト・コーディネーター村田 慎二郎(活動責任者)

ビジネスの世界から転身し、
人道援助の世界に。
リーダーとして派遣国の全ての
プロジェクトを指揮・統括

外資系IT企業で営業として実務経験を積んだ後、人道援助のキャリアをスタートさせた村田。2005年にロジスティシャンとして国境なき医師団(MSF)に参加後、前線のプロジェクトのリーダーであるプロジェクト・コーディネーターを経て、現在、派遣国の全プロジェクトを指揮する活動責任者として活躍する。2012年に日本人初となる重要なポジションに就いた本人のキャリア観を聞いた。

参加のきっかけ

寄付で活動するから結果を重視。そこにビジネス経験が生きる

MSFでリーダーとなれたのは、民間企業で基礎を徹底的に鍛えられたおかげです。大学卒業後、競争の厳しいIT業界に飛び込み、法人営業を担当しました。次第にプロジェクトを任され、会社を代表してクライアント企業の経営幹部やコンサル会社のパートナーと交渉を担当しました。相手をよく知り、関係性を築いて状況を読み、交渉する。このスキルは現職でも役立っています。

参加を志したのは、入社3年目ごろ。営業としてやっていく最低限必要なスキルに達した自信はあったものの、この道を更に追求していくべきか疑問が芽生えました。「世界の現実を自分の目で見て、仕事を通して貢献したい」と情報を集め、MSFに出会ったんです。

MSFは組織力と機動力を持つ人道援助のプロ集団です。「独立・中立・公平」の理念を実現するため、全活動資金の約9割が民間からの寄付。一般の方々からお預かりした寄付だからこそ、プロとしての仕事が求められ、効率や効果、責任を重視する点はビジネスにも似ており、魅力的でした。

活動責任者として勤務するフィリピンのコーディネーション・オフィスにて

仕事内容

スタッフの命を守ることが最も重要な任務

MSFでは、成果を出せば、年齢を問わずやりがいのある仕事を任せてもらえます。最初ロジスティシャンとして参加し、次にプロジェクト・コーディネーターに憧れ、さらに活動責任者を目指すようになりました。MSFの中で、自分が成長できるキャリアパスが常にあるんです。

活動責任者になってからは、四度にわたりシリアの最激戦区であったアレッポで活動。政府軍、反政府軍が戦闘を繰り広げており、私は緊急援助プログラムの立案・実施に奔走しました。

最初の1年間は責任者として提案したことが上手くいきました。隣国トルコへ、シリア国境へ、そして前線であるアレッポに通じる町へ……とプロジェクトを段階的に立ち上げました。砲撃やたる爆弾などの脅威はありましたが、このやり方が成功したように見えました。ところが、イスラム国が台頭してくる頃から予想を超える事態が次々に起こり、病院も移転・閉鎖、全ての海外派遣スタッフの撤退まで決断しなければいけませんでした。

MSFの使命は、援助を最も必要とする人々に医療を届けることです。ただ、そのために医療人道援助スタッフが命を落とすことがあってはなりません。そこで、活動を指揮するリーダーとして、安全確保が重要な役割になります。紛争地では、スタッフの安全を守ることと、できるだけ多くの命を救うこととのせめぎあいの中、どこまで踏み込べきか決断を常に迫られます。

スタッフが命を落とせば家族も悲しませる。時にはプロジェクトも閉鎖せざるを得なくなり、結果的に現地に残された人びとを苦しめるのです。

チーム内のコミュニケーション

MSFで活躍するために日本人が抱える課題

日本人のプロジェクト・コーディネーターや活動責任者は非常に少ないです。理由が2つあります。1つは、礼儀正しすぎること。欧米人とチームで仕事をするときは、自己主張も必要です。

ただ、礼儀正しさがマネジメントに生きることもあります。現地スタッフと接する際、「あなたが何を考えているか知りたい」という姿勢で臨むと、驚きながらも親しみを感じてもらえるんです。

もう1つの課題は語学力です。公用語の英語ができなければ、MSFでパフォーマンスは出せません。実は、私もMSFに応募した際は英語力が足りず、選考に2回漏れました。社会人向けの英語の学校などで語学力を養い、再応募を経て初回派遣。それでも、会議では話題の展開についていけませんでした。

英語が板についてきたのは3回目です。今は仕事上差し支えありませんが、勉強は続けています。

初回派遣地のスーダン、ダルフール地方で

MSFのやりがい

これ以上やりがいのある仕事はない

ここには誇れる仲間がいます。国籍や人種などさまざまなバックグラウンドのスタッフが、「緊急援助が必要な人を助ける」という同じ目的で集まっている。助けを待つ人びとの悲しみや苦しみを一度知ってしまうと放っておけず、また活動に参加してしまうんです。初めは自分個人の成功しか頭にありませんでしたが、そんな仲間たちと一緒に働くことを通じて、MSFがだんだんと自分の人生の中心になる存在になっていきました。

13年間MSFで仕事をしてきて、「これ以上に誇りが持て、やりがいのある仕事はない!」と言えます。人道援助の仕事の魅力は、現場に一度行けば分かる。そこには援助を求めている人がいて、私たちがいなければ助からない命があります。現場で働くことの強い意義を感じます。

キャリアパス

2001~
2003年
大学卒業後、外資系IT企業に勤務
2004~
2008年
MSFロジスティシャンとしてスーダン、パキスタン、ジンバブエで活動
2008~
2011年
MSFプロジェクト・コーディネーターとしてスーダン、ナイジェリア、イラクで活動
2012~
2015年
MSFシリアの活動責任者を務める
2015~
2017年
MSF活動責任者として南スーダン、イエメンで活動
2017年10月~
MSF活動責任者としてフィリピンで活動

※掲載内容は取材当時のものです。

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