海外派遣スタッフインタビュー

ロジスティシャン堀 正貴(サプライチェーン・マネジャー)

「知る」と「体験する」は全く違う。
64歳で参加した国境なき医師団で
大切なことを教わった

民間企業で30年以上にわたり輸出入に携わった堀正貴。退職後、そのスキルと語学力を生かし、国境なき医師団(MSF)で第二の人生をスタートした。68歳のいまに至るまで7回の派遣を経験。物資調達や資機材の管理を担うロジスティシャンとして活動を支える堀は、「MSFで人生に大切なことを教わった」と語る。

参加のきっかけ

「サハラ砂漠で働く」という夢を追って渡仏

大学を卒業して民間企業に入り、普通の人生を送っていました。ところがある日、こんな新聞広告に魅せられたんです。「サハラ砂漠で働きませんか」。石油プラントの求人でした。

フランス語を習うため、会社を辞めてパリへ移住。27歳のときです。日系企業の輸出担当として働きながら現地の大学に通い、2年後アルジェリアへ渡りました。

サハラ砂漠に発電所を作る仕事をして、30代で人生の第一の目的を果たしました。以来20年ほど、フランスと世界各地を行き来しながら、あるときは電子部品、あるときは食品と変えながら、輸出入に携わってきました。

MSFへの参加を考えたのは、60歳を過ぎ、アルジェリアで高速道路の建設に従事していた2012年ごろ。バリバリ仕事をしてきたので、いきなり引退はしたくなかった。エネルギーを向ける場としてMSFはいいと思ったんです。NGOも一度経験してみたかったですし。

2013年に帰国して募集説明会に参加。翌年スペインでPPDL(ロジスティシャン研修)を受講し、1ヵ月もしないうちにエチオピアへ行きました。64歳でした。

仕事内容

発想力を駆使して無から有を生み出す

たった一人で送られた先は、標高2000mの村!水も電気も燃料も整備されておらず、やることは膨大。水の確保、酸素・ガスボンベの手配、発電機を使った電気の確保やメンテナンス、壁の補修……。振り返れば一番ハードな活動でしたが、一番楽しかった。山奥の村で、景色も本当にきれいでしたね。

サハラ砂漠に資材を輸入して組み立てる経験をしていたおかげで、MSFの現場にも順応できました。例えば、水を供給するのが仕事だと言われたら「屋根を改装して雨水を集め、車を洗えばいい」と。その場で考えれば方法は見つかります。

次の活動地はエボラ出血熱が大流行したシエラレオネ。でも、水も電気もある恵まれた環境で拍子抜けしました。当時は流行が収束しつつあり、緊急援助活動から通常プログラムへの移行期でした。大量の援助物資を棚卸しし、過剰在庫を整理。購買規則を作って現地スタッフにコスト管理の意識を持たせるよう努めました。

物資の購買にあたっては、途上国での取引経験が役立っています。購入するとき、「価格を下げろ」と言っているだけではダメ。サプライヤーの工場を渡り歩いて物の流れを把握し、「このプロセスを省けばこれだけ安くできるよね」と話を持っていけばお互いの利益になります。民間企業の経験が生きてきます。

2014年、初回派遣地のエチオピアで道なき道を進む

チームワーク

医療チームとの連携が成功の鍵

エボラ対応のときは人手が全然足りず、「私しかできる人がいないから」と24時間休みなく働く医師もいました。母国では安定した立場なのにMSFの海外派遣スタッフになり、身を粉にして活動する人がいる。そのことに胸を打たれます。「私の患者たち」という熱意溢れる言葉も、同僚の医療者からよく聞きました。

夜中に医療チームが動いていると私も眠れません。危篤状態の患者さんがいれば、酸素ボンベの交換が必要になるかもしれない。何かあったときに駆けつけられるよう、待機しておかなければならないと思うのです。

温度管理の難しいワクチンを届けるときは、ロジスティシャンとして一番緊張します。医療スタッフも「これが届かないと何人死ぬ」といってプレッシャーをかけてくるんです!薬を冷蔵庫に入れて初めて安心できる。医療活動をサポートすることの意義を感じる瞬間ですね。

2回目の派遣地、シエラレオネで

仕事のやりがい

MSFは「挑戦の場」。退職後も充実した人生を送れる

会社員時代、評価軸は給料でした。「家族のためにどれだけお金を持ち帰られるか」が重要だった。MSFは自分への挑戦の場。目標とするレベルを立て、それを達成できたとき満足できます。短期間の活動とはいえ、現地スタッフに知識や経験を引き継ぎ、何かを残していくことを常に意識しています。

MSFのフラットな人間関係もいい。上司にも本音が言えます。1つの目標に向かって、10ヵ国以上の人が数ヵ月合宿する。会社ではできない貴重な経験です。退職後にこれほど充実した人生を送れる機会はなかなかないんじゃないでしょうか。

メッセージ

心から「やってよかった」と思える。若い人におすすめしたい

現代は、何でも調べればすぐに知識を得られる。でも、知ることと体験することは全く別物です。MSFは現場で起きていることを実際に体験できる。だからこそ、若い人には「まずは行ってみたら」と言いたい。世界へ飛び込んでみたら、おのずと「次はこういうことを勉強したい」と方向性が定まってくるんじゃないでしょうか。

今は、成功するための方程式がなくなってきています。いい大学へ行って、いい会社へ入れば幸せになれるとは限りません。「言われたことをそつなくこなす」という生き方はもったいない。私はこの年齢になって参加し、MSFで教わったことがたくさんありました。本当にやってよかった。同じ経験を若い人がしたら、もっと多くを吸収できると思います。

キャリアパス

1973~
1977年
大学卒業後、新聞社の広告部門で勤務
1977年
フランス・パリに移住
1979~
1981年
アルジェリアの石油公社で通訳として勤務
1981~
1996年
フランスの商社など複数社で輸出入業務を担当
2007~
2013年
日系商社の契約社員としてアルジェリアで勤務
2013年
MSF企業を退職後、ロジスティシャンとしてMSFに登録
2014~
2017年
MSFエチオピア、シエラレオネ、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、イラクなど7回の活動を経験

※掲載内容は取材当時のものです。

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