特集

2月6日で震災から1年

トルコ・シリア地震 国境なき医師団の緊急医療援助

2024.02.07

トルコとシリアで2023年に発生したマグニチュード7.8の大地震から、2月6日で1年。この震災でおよそ6万人が犠牲となりました。

国境なき医師団(MSF)は、シリア北西部で地震発生の数時間後から負傷者の治療を開始。その後も紛争と震災の二重の困難に見舞われた人びとへの援助を続けてきました。トルコでは現地の団体と連携し、被災者への対応に当たりました。1年間の活動を数字で報告します。

一人でも多くの人へ援助を──数字で見る1年間の活動

シリアでの活動

清潔な水の提供 800万リットル
移動診療などでの外来診療 19万8477件
衛生キットなどの救援物資 11万835個
心のケアのカウンセリング 8026件
家を失った人びとへのテント 6411張
寒さをしのぐための毛布 2万8645枚
支出(緊急1710万・通常プログラム940万) 2650万ユーロ

震災直後から負傷者の治療を開始し、援助物資の提供を行った。その後、水と衛生や心のケアなどの活動を拡大。地震から6カ月後、緊急対応の段階を終え、それぞれの活動を通常の活動に組み込んで継続的な取り組みを行っている。

(2024年1月時点)

トルコでの活動(現地の連携団体を通して実施)

清潔な水の提供 430万リットル
衛生キット 3万8154個
心理社会的支援(個人・グループ) 1万100人
テントと防水シート 2192点
支出 1184万ユーロ

トルコではさまざまな現地のNGOや市民団体と連携し、心理社会面の支援や水と衛生の改善、救援物資の配布などを実施。緊急対応については5月31日をもって段階的に終了し、トルコ当局や現地の組織に引き継いだ。

(2024年1月時点)

最新の活動ニュース

2023年2月6日、大地震発生──その時どう動いたか

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2023年5月時点の活動

シリア北西部では、地震発生から数時間以内に負傷者の治療を開始した。緊急対応の第3段階に入り、シリア北西部における医療提供の継続性と持続性を確保するため、長期的な戦略活動に焦点を当てている。また、トルコではさまざまな現地のNGOや市民団体と連携し、心理社会面の支援活動や水と衛生の改善、救援物資の配布や寄贈などを実施。緊急対応については5月31日をもって段階的に終了し、トルコ当局や現地の組織に引き継いだ。
 
地震発生以来、トルコとシリアでは5月9日の時点で5万9千人以上が命を落とし、両国では数百万人が被害を受けている。およそ3カ月以上が経ったいまも被災地の人びとのニーズは依然として深刻だ。

シリア

緊急対応の第1段階

地震の発生後、MSFは被災者の救援と医療援助を行うため、緊急対応を開始。最初の数日間は、必要な物資や人材の提供、救急車のサポートなど、医療施設の支援に力を注いだ。また、被災した人びとに救援物資を配布した。

医療施設への支援
MSFは、イドリブ、アトメ、アザーズ、アフリン、マレ、バブ・アル・ハワの36の病院や医療施設に緊急医療用の物資や毛布などの寄贈を行った。また、外科医を含む医療スタッフを病院に派遣。アフリンでは基礎診療所を再建し、ジンデリスには移動診療所などを設置した。

イドリブ県の4つの医療施設では、負傷した患者の治療を行い、屋外にはテント病棟を設置して病院の対応力を強化。さらに、患者を搬送するために90台の救急車を支援した。
シリア北西部への人道支援物資の運搬
地震発生後、支援の継続性を維持するため、MSFのトラック計40台以上がシリア北西部に入国。医療物資をはじめ、テントや防寒具などを含む物資を運び、被災者に届けた。
救援物資の配布
イドリブ県内の200以上のキャンプで、最も地震の影響を受けている世帯にテントや衛生キットなどの生活必需品を配布。シリア北西部では、合計3万7100枚の毛布を配布した。また、アレッポ県では現地団体と連携し、共同キッチンを支援している。
移動診療
地震発生から2週間後、シリア北西部のいくつかの受入施設とキャンプに最大14の移動診療所を追加で配置し、活動を拡大した。
心理的応急処置
移動診療所や支援先の診療所で心理的応急処置を行い、女性や子どもたちがレクリエーション活動などを行うための安全な場所を提供。また、被災したMSFのスタッフをサポートするため、心理社会的支援ユニットを立ち上げた。
緊急対応の第2段階

満たされていないニーズやギャップに焦点を当てた、より計画的・戦略的なアプローチに移行。より多くの救援物資の配布、水と衛生活動の実施、移動診療所の継続的な運営、心理的応急処置や心のケアの提供など、取り組みの規模を拡大した。

避難所
何十万人もの人びとが地震によって家を失い、必要なものを手に入れることができないまま放置されたため、避難所は引き続き重要なニーズの一つだった。MSFはテントを寄贈し、新たに避難してきた人びとのための避難所を手配するため、他団体との連携を強化した。
人びとの尊厳と医療へのアクセスの維持
アフリン地域の医療施設が大規模に被害を受けたため、MSFは現地パートナー団体が運営するアフリン病院を支援。新たに避難民となった人びとの住むキャンプで移動診療を続けている。被災者の心のケアに関しては、心理的応急処置からより高度な心のケアの提供に移行した。

キャンプでは授乳中の母親のプライバシーを確保するために、母子スペースを設置。イドリブ県では、急患でない患者の他の医療施設への紹介をサポートし、ICUと透析を備えた2つの病院と血液バンクを支援している。
食料や救援物資を提供
シリア北西部では、現地のパートナー団体とともに、暖房キット、衛生用品キット、調理キット、6000張り以上のテントと3万7000以上の毛布を含む、11万800以上の救援物資を配布した。また、現地のパン屋を支援し被災した人びとに36万7000個以上のパンを提供した。
水と衛生活動
イドリブ県では、避難民のための18のキャンプで、トイレの修復、水の運搬、貯水タンクの設置、廃棄物収集の支援など、水と衛生に関する活動を行った。また、新たな避難民を受け入れるキャンプに、移動式トイレと水と衛生の支援を提供。

アレッポ県では、地元のパートナー団体と協力して、トイレや貯水タンクを設置。アフリン市の水処理工場には薬品を提供し、人びとに清潔な水を提供した。
緊急対応の第3段階

現在、MSFは緊急対応の第3段階を開始。この段階では、シリア北西部における医療提供の継続性と持続性を確保するため、長期的な戦略活動に焦点を当てている。また、再建手術などの地震後の医療介入にも力を注いでいる。

産院の新設と医療施設の再建
アレッポ県ジンデリスでは、妊婦と新生児に安全で利用しやすい空間を提供するため、倒壊した産院に代わる新しい産院の建設を進め、地域の妊産婦医療ケアの格差是正に取り組んでいる。

イドリブ県では、MSFがすでに支援しているサルカン、アル・マランド、ヘイル・ジャムスの3つの病院と基礎医療施設が地震で被害を受けたため、再建を進めている。
レクリエーション活動と心のケア
アレッポ県では、避難所に住む人びと、特に子どもたちにレクリエーション活動や心のケアを提供。人びとの心身の健康を向上させることを目的に、ゲームやスポーツ、図画工作、体験談や物語の創作などを実施している。これらの活動は、ストレスの多い避難所生活に欠かせない気晴らしとなり、社会的なつながりやコミュニティに所属している感覚の構築に役立つことがある。
再建手術の支援
今回の地震で何千人もの人びとが怪我をし、緊急手術が行われた。緊急手術は通常、見た目や可動性よりも、命を救うことを優先する。そのため、緊急手術を受けた患者の多くは、将来の傷跡や可動性にまつわる問題を防ぐため、追加手術や再建手術が必要になる可能性がある。このニーズに応えるため、MSFは現在イドリブ県の病院を支援。追加手術と再建手術を行い、長期的な身体的影響を最小限に抑えるための支援を行っている。


震災と内戦という二重の苦難の中にあるシリア北西部。およそ12年に及ぶ内戦で不安定な状況に置かれた200万人に加え、18万人以上が震災により避難を余儀なくされた。地震発生から3カ月以上が経ち、シリア全土で死者約7300人、負傷者1万1100人が報告されている。

トルコ

被災者やボランティアに対する心理社会面の支援活動
個人またはグループカウンセリングを実施し、ワークショップで使われる資料の寄贈を行っている。アドゥヤマンやマラティヤ、カフラマンマラシュでは、被災した人びとに安全で快適な場所を提供する地元団体をサポート。人びとはそこで心理社会面の支援を受けたり、授乳を行うスペースやシャワー、トイレ、洗濯機、充電器などを使用することができる。
救援物資の寄贈と配布
MSFは医療物資、食料、水、生活必需品をはじめ、衛生用品キット、毛布、ストーブ、下着などを含む数万点の救援物資の寄贈と配布を支援。今後も引き続き支援を行う。また、シャワーやトイレの建設や、仮設キャンプにおける貯水タンクの設置や補充など、水と衛生に関する膨大なニーズにも対応している。


地震により900万人以上が影響を受けたといわれるトルコ。震災で5万1000人以上が命を落とし、300万人以上が避難を余儀なくされた。MSFは5月31日をもって緊急対応を段階的に終了し、トルコ当局や現地の組織に引き継いだ。しかし、被災者の心身への影響は依然として懸念され、今後数カ月間は、救援活動を続ける現地の団体に一定の支援を行っていく。

現地からの活動ニュース

人道危機が続くシリア

2011年から内戦が続くシリア。1460万人が人道援助を必要とし、国内避難民の数は世界最多の690万人に達した*。MSFの活動は情勢不安などにより大きく制限されているが、アクセス交渉が可能な北西部や北東部では、病院や保健センターを運営・支援し、避難民キャンプで医療を提供している。
*国連難民高等弁務官事務所「グローバル・トレンズ・レポート 2021」

シリアにおけるこれまでの活動を見る

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シリアでMSFは衛生用品、台所用品、防寒具、毛布などを含む270セットの救援物資をアフリン地区とアレッポ北部の避難所に届けた=2月8日 Ⓒ MSF
シリアでMSFは衛生用品、台所用品、防寒具、毛布などを含む270セットの救援物資をアフリン地区とアレッポ北部の避難所に届けた=2月8日 Ⓒ MSF

トップ写真:シリアの避難民受入センターで、MSFは救援物資の配布を行っている=2023年2月18日 Ⓒ MSF 

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