ケニア:ごみと暴力と希望の狭間で(上)
2013年03月11日掲載

ケニアの首都ナイロビにあるスラム地区・キベラ。国境なき医師団(MSF)はここで、無償で医療提供を行っている。HIV/エイズの抗レトロウイルス薬(ARV)治療を提供するとともに、結核治療もプログラムに組み込み、二重感染者の治療に道筋をつけた。2004年から活動に参加しているケリー・カバラ准医師に話を聞いた。
生活環境に打ちのめされる
初めてキベラを訪れたとき、その光景に打ちのめされました。このような環境に人が住めるということが信じがたかったのです。キベラはわずか5㎢の土地に推計25万人が住んでいます。
住まいは土と金属板でできたとても小さな家。ほこり、すす、悪臭、汚水、ごみ、水不足が当たり前で、その影響は住民の日々の生活に見て取れます。トイレは少ない上に有料で、1回5シリング(約5円)。一部の世帯はそのお金もまかなえないため、ビニール袋で用を足し、その袋をスラムの小道に投げ捨てています。
私がキベラでMSFの任務を開始したのは2004年のことです。職種は准医師。一般的な病気を治療する訓練を受けた臨床医の一種です。任務の内容は、HIV/エイズ・結核患者の管理と病院紹介。2001年に医学校を卒業した当時は、大病院でできる限り多くの命を救う仕事に就きたいと考えていました。キリスト教系の病院に勤務したのち、2004年にキベラのMSFのプログラムに加わりました。
HIVと結核の二重感染対策に着手

その当時、HIV陽性の人たちは偏見を受けていました。MSFのもとに連れて来られるのはエイズ末期で危篤状態になってから、ということがよくありました。伝統的治療師の治療を受けたものの効かなかったという例も多くありました。
そうした患者さんたちは、治療開始が遅れ、カポジ肉腫(HIV/エイズに起因することの多いがんの一種)、クリプトコッカス髄膜炎、重度栄養失調、肺外結核などの深刻な併存症にもかかっていました。
MSFは、無償の抗レトロウイルス薬(ARV)治療と二重感染治療の唯一の提供者でした。国の保健担当局による大規模なHIV/エイズ対策はまだ始まっておらず、私立病院の請求する医療費は法外でした。
その後の2年間で、私たちはHIV/エイズ患者の結核感染が増えている事実を把握しました。二重感染患者にはほかの病院を紹介する必要があったのですが、移動距離が長く、病院での治療も不十分なことが多かったため、最善策とはいえませんでした。
そこで、結核治療をMSFのHIV/エイズ治療プログラムに組み込むことにしたのです。現在、結核治療は、検査、薬物療法、家族計画、心理カウンセリングとともに、活動の一部となっています。(つづく)
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