紛争最前線の「ゼロ地点」、病院前で5000人がバスを降りた

2018年04月19日掲載

カラート・アル・マディク病院の前に設置された
トリアージ用のテント

2018年3月から4月のわずか1ヵ月の間に、シリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区から6万人近い人がシリア北西部に避難した。避難者は男性、女性、子どももおり、大多数はけがや病気で治療を必要としている。国境なき医師団(MSF)はシリア北西部にあるカラート・アル・マディクの中核病院を支援し、患者のトリアージと治療を担っている。この町はイドリブ県へ避難する人びとがバスを降りる場所で、「ゼロ地点」と呼ばれている。カラート・アル・マディクの病院長、ラファート・アル・オベドが現在の状況について語った。

予想を超える避難者の数

私は、カラート・アル・マディク病院が1年半ほど前に開院したときからずっと働いています。この病院は母子医療が専門で、付近には他にあまり病院がないので、毎日平均して300人ほどの患者を治療しています。この病院は、シリア政府が支配する地域と武装対抗勢力が支配する地域の間にあり、戦闘の最前線の中心に位置しています。紛争当事者間の和解協議が行われ、民間人の避難が合意されると、人びとはイドリブ県に移動する際にカラート・アル・マディクを最初に経由します。

多くの避難者がやってくることがわかると、私たちは事前にできるだけ準備しておきます。数週間前にも、東グータ地区から避難者が来ると知らされ用意をしました。MSFと連絡を取って、より多くの手術やリハビリ、搬送ができるよう、医療物資と機器の提供を頼みました。MSFは来院患者のトリアージ(※)用テントのほか、医療物資と緊急事態の準備キットを送ってくれました。ロジスティック面でも助けてくれて、技術的なアドバイスももらいました。

  • ※重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決めること。

しかし実際に人びとが到着し始めると、一気に仕事が増え重圧がかかりました。最初の日、5000人が病院の前で降ろされたときには仰天しました! そんなにたくさんの患者を治療する準備はできていませんでしたから。避難者がこの地域に来るたびに、同じような困難に直面します。でも今回は、やって来る人の数が予想を大きく上回っていました。

手術室1つで多くの外傷患者を治療

実際には最初の数日間で、外傷を負った200人以上の患者が病院に来ました。多くは最近の空爆で負傷した人で、銃で撃たれた患者もいました。それに加えて、自然分娩と帝王切開など、合わせて20件以上の出産にも対応しなければなりませんでした。医療スタッフは連日働いて、この緊急事態に対応しました。栄養失調の子どもなど、普通であれば専門医が治療するようなものも多く診断しました。専門医も専門の診療科も、院内にはありませんでした。

できる限り多くの患者を診て、治療しました。私たちで対応できない患者は、それぞれに必要な専門診療科のある別の施設を紹介し、可能な限り搬送しました。この病院は緊急対応で大変重要な役割を果たしてきましたが、最善の方法で人びとを助けるためには他の病院や団体を頼りにせざるを得ませんでした。比較的小さい病院で、手術室は1つだけでしたから、一度に大勢の患者には対応できません。避難民を乗せた車輌隊列がシリア北西部に向かう途中で銃撃を受けた時は、銃で撃たれたばかりの患者が一度に8人、バスから降りてそのままこの病院へ運ばれています。手術室が2つか3つなければ、対応できません。

東グータ地区から来た大勢の人びとが、今、カラート・アル・マディクとその周辺に住み始めています。毎日、治療が必要な人、手術が必要な患者を目にして、病院にかかるプレッシャーも仕事の量も大きくなっています。病院に来る人の数は日を追うごとに増えました。先月は本当に大変でした。数十人の医療スタッフで数千人の患者に対応したのです。

MSFは2013年以降、東グータ地区で医療を提供している。現地入りが不可能なため、MSFは現場にいるシリア人医師を遠隔で支援してきた。シリア北部では5ヵ所の病院と3つの移動診療を直営するほか、5ヵ所の提携医療施設を支援している。このほか、MSFスタッフ自らが立ち入れない地域の施設約25ヵ所を遠隔支援している。

MSFは、安全と公平について確約を得られていない「イスラム国(IS)」の支配地域と、活動認可が現在も得られていないシリア政府統治地域では活動できていない。政治的圧力からの独立性を守るため、シリアでの活動にはどの国の政府からの資金も投入されていない。

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