バングラデシュ:「あなたは一人じゃない」——ロヒンギャ難民に寄り添う地元スタッフの思い

2018年03月06日掲載

2017年8月以降、バングラデシュ南部コックスバザール県には約70万人のロヒンギャ難民が到着し、現地は対応に追われている。地元では治安や雇用への影響を指摘する声が上がる一方、援助の手を差し伸べようと情熱を傾ける人たちがいる。国境なき医師団(MSF)の現地採用スタッフとして難民を支援する地元住民の思いを聞いた。

国を離れるしかなかった人びとを全力で支える/ワシム・フィルズ(医師)

ジフテリア治療センターで働くワシム医師(写真左) ジフテリア治療センターで働く
ワシム医師(写真左)

MSFがモニナルゴナに開設したジフテリア治療センターで2017年12月から働くワシム医師(28歳)はコックスバザール県出身。それまでは首都ダッカの病院に勤めていたが、「ロヒンギャ難民危機を支援したい」とMSFへの参加を決めた。

皆で立ち上がらなければ

ジフテリア患者を治療するMSFスタッフ ジフテリア患者を治療するMSFスタッフ

この治療センターでは、午前と夜間の2交代制で働いています。国内外から派遣されたスタッフと仕事をするのは良い経験になります。

母国を離れるしかなかったロヒンギャの人びとのために皆で立ち上がり、全力で支えなければ。当初この施設には4人のバングラデシュ人医師しかおらず、十分な機器もないまま夜間も私たちだけで勤務するほかありませんでした。ジフテリアの集団感染が起きた12月は、患者数が1日に50~60人に達することも。施設がまだ完成していなかったので、テント5張で対応していました。冷え込むなか夜通し働いたときもありました。

私たちも「難民」になった過去があるから

診察を待つロヒンギャの一家 診察を待つロヒンギャの一家

これほど大勢の難民がコックスバザール県に来たら、自分たちの居場所がなくなるのではないかと案じる住民もいます。ですが、ロヒンギャ難民は遊びに来ているのではなく、身を守るために来ているのだということを理解しておかなければなりません。私たちも独立戦争を経験した1971年に同じような目に遭い、たくさんのバングラデシュ人が隣国インドに避難しました。

毎日、経過観察をしています。痛みや熱がひいた患者さんがいると、ジフテリアの進行を食い止められたのだと嬉しくなります。一方、とても悲しかったのは患者さんが2人亡くなってしまったことです。3歳と8歳の女の子で、私の目の前で息を引き取りました。私たちも手は尽くしました。3歳の女の子は、最初は順調だった容体が午後11時を過ぎて悪化。大量の毒素に身体が侵され、呼吸困難に陥っていました。翌日未明の午前3時には心肺蘇生も試みたものの、4時に亡くなりました。

この深刻な窮状を、もっと世界に伝えていかなければなりません。

「あなたは一人じゃない」と伝えたい/カディザ・チョウドリ(心理カウンセラー)

ナヤパラ難民キャンプのMSFクリニックを訪れた母子 ナヤパラ難民キャンプのMSFクリニックを訪れた母子

カディザはナヤパラ難民キャンプの隣にあるMSF診療所で昨年11月から働いている。主婦をしていたが、MSFの求人を知った夫が応募を勧めた。カディザは今、4人編成のチームの一員としてロヒンギャ難民に心理・社会面の支援を行っている。

夫や息子を殺された女性たち

子どもを抱いて逃げてきた母親(2017年10月撮影) 子どもを抱いて逃げてきた母親(2017年10月撮影)

女性の大半が、自宅を焼かれ、夫や息子を亡くしています。自宅は焼かれました。彼女たちは将来のことを非常に心配しています。患者にとって、カウンセリングは初めての経験です。こうしたケアはミャンマーでは受けられませんでした。自分の悩みを打ち明ける相手ができ、患者さんは心が軽くなります。

健康教育スタッフは難民キャンプへ出向き、問題を抱えている人にこの診療所での受診を勧めます。精神疾患がある場合は、専門家のいるクトゥパロン診療所に紹介します。

私は1日に新患4~5人と経過観察の患者4人をみています。セッションは1回45分~1時間ほど。大人の患者がメインですが、今日は子どもも診療しました。不眠症が多く見られます。この診療所では2ヵ月半の間に患者180人が心のケアを受けました。

身寄りを失った18歳の青年

ナフ川を泳いでバングラデシュに渡った男性(2017年10月撮影) ナフ川を泳いでバングラデシュに
渡った男性(2017年10月撮影)

ロヒンギャの人たちは、心の問題を抱えていても難民同士では打ち明けられずにいます。カウンセラーのような外部の人間に対する方が、かえって心を開いて話しやすいようです。

手の痛みで診療所に来た18歳の青年のことが印象に残っています。お母さん、お父さん、兄弟は殺され、身寄りはいませんでした。彼自身も殴打され、片足が動きません。ミャンマーにいたときは日雇い労働者として働いていましたが、今では何もできなくなり、救援物資や物乞いで食いつないでいます。

セッションを行い、心が軽くなることについて質問しました。お母さんとお父さんのことを考えたり、近所の喫茶店でテレビを観たりするときは少しほっとするそうです。彼にはなるべく気持ちが落ち着くことをするように勧め、こう伝えました。「あなたは一人ぼっちじゃない。皆がついているからね」

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