婚約者が待っているから——薬剤耐性結核を乗り越えた患者たち

2017年12月11日掲載

結核の新薬として半世紀ぶりに登場した「ベダキリン」と「デラマニド」が、患者に希望をもたらしている。これまでの薬が効かない多剤耐性結核の治療に使われ、めざましい効果を上げているためだ。

国境なき医師団(MSF)の活動地でも積極的に導入している。ロシア連邦内のチェチェン共和国もその1つ。新薬治療で回復した患者たちは「外出もできます」「体重が増えました」と感謝の気持ちでいっぱい。婚約者の家族が温かく見守り、通院ですむまで回復した女性もいる。

「私は生きてます!」/エルシさんとザウルベクさん(ともに64歳)

エルシさんとザウルベクさんは同い年。若い頃に軍隊で知り合い、数十年を経て病院で再会した。

60歳を過ぎて病院内で再会したエルシさん(右)とザルベクさん 60歳を過ぎて病院内で再会したエルシさん(右)とザルベクさん

エルシさん(64歳)は運転手、子どもは4人。2003年に糖尿病、2013年には複数の薬が効かない「多剤耐性結核」と診断された。2015年3月、薬の副作用(不耐症)で入院した。MSFは、チェチェンで結核と糖尿病を併発している患者の治療やカウンセリングを始めた。

MSFのインタビューに応えるエルシさん MSFのインタビューに応えるエルシさん

MSFの治療を受け、エルシさんは順調に回復している。「体重は20kg増えました。すべてうまくいってます。汗もかかなくなったし、せきも出なくなりました。今なら宇宙飛行士にだってなれそうです!血糖値が落ち着いたのも大事なこと。病気はもう"過去"になったようです。薬ですごく助かってます。ありがとう!本当によく効く治療です。MSFに感謝してます。みなさんに神の恵みを!」

ザウルベクさんは、症状が最も重い「超多剤耐性結核」の治療を2016年7月から続けている。C型肝炎も併発している。

治療の説明を聞くザルベクさん 治療の説明を聞くザルベクさん

治療を始めたころは重い副作用に悩まされたが、現在ではかなりよくなった。C型肝炎は完治し、結核の治療もうまくいっている。新しい結核治療薬「ベダキリン」と「デラマニド」が治療計画に組み込まれたためだ。

「最初はつらかった……ほとんど歩けなくて息切れしてましたから。今はずいぶん調子がよくなって、外出もできます。ご覧のとおり私は生きてます!孫が12人いるんです。あの子たちを遺して逝くなんてできませんよ」

「副作用がなければ……」/マッカさん(39歳)

屋外でのんびり過ごせるほど回復したマッカさん(右) 屋外でのんびり過ごせるほど回復したマッカさん(右)

マッカさんは元教師でアラビア語を教えていた。2016年4月に超多剤耐性結核と診断され、入院して2週間後から本格的に治療を始めた。

マッカさんの治療にも新薬のベダキリンが使われている。「治療はうまくいっています。家族も手助けしてくれて、いろいろと力づけてくれます。母なんて、毎日何度も『お薬は飲んだ? 飲んだ? ちゃんと食べるのよ』って言ってくるんですよ」

自身の治療はうまくいっているマッカさんだが、治療はつらい道のりだということもわかっている。「70~80歳ぐらいの方を見ていると気の毒になります。ご年配の方にはつらい治療だと思います。副作用がなければよいのですが……。『母に病気がうつって、ここに来るようなことになりませんように』と願っています」

「希望を捨てないように」/ズライカさん(20歳)

新薬での治療が成功し、入院から通院に切り替えたズライカさん 新薬での治療が成功し、入院から通院に切り替えたズライカさん

ズライカさんはチェチェンの隣のタゲスタン出身。洋服の仕立てを学んだ。2年半前に婚約したが、その4ヵ月後、多剤耐性結核と診断された。病状は思わしくなく、2015年11月、超多剤耐性結核と診断。ベダキリンを使った治療法に切り替えた。その結果、2017年5月には退院にこぎつけ、現在は通院を続けている。

「『結核と診断された』と打ち明けると、両親は婚約者の家族に会いに行きました。婚約を破棄される可能性もあったと思います。でも彼の家族は思いやりに満ちていました。『結核は治る。まだ若いのだから治療を受けなさい。全てうまくいくだろう。私たちは待っているから』と言ってくれたんです。入院中もよく電話をくれました」

そう振り返ったあと、ズライカさんは続けた。「同じ病気の方々が希望を捨てないようにと祈っています。強い意志を持って、薬を飲むのです。そうすれば全てうまくいきます」

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