シリア:集中治療室の"順番待ち"が意味すること

2016年10月04日掲載

爆撃で損壊したアレッポ市内のアル・バヤン病院市街地では包囲と激しい爆撃が現在も続いている 爆撃で損壊したアレッポ市内のアル・バヤン病院
市街地では包囲と激しい爆撃が現在も続いている

シリア北部のアレッポ市では現在も激しい内戦が続いている。国境なき医師団(MSF)はさまざまな形で医療・人道援助を続けている。市東部にある外傷病院への支援もその1つだ。

病院がある地区の人口は約2万5000人。包囲され爆撃が繰り返されている。稼働している医療施設はMSF支援の病院を含めてわずか8軒だ。MSF支援の病院の責任者を務めるアブー・ワムシ医師に現地の医療状況について聞いた。

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アレッポ市東部はどのような状況ですか。

この地区は2016年7月から包囲されています。食糧などの必需品の調達も望めなくなってしまいました。パン屋の前にできる長蛇の列ももはや見慣れた光景です。電力供給は6ヵ月前からストップしています。燃料も不足しているので、発電機もいずれ使用できなくなるでしょう。包囲と激しい爆撃が相まって、町は地獄と化しています。

各病院はどのように運営されているのでしょうか。

3年にわたって激しい爆撃が繰り返されている状況でも、各病院とも24時間体制で稼働しています。私たちの病院には手術室が3室しかありませんが、昨日は20件以上の腹部手術が求められました。そもそも大量にあった医薬品を使い果たしていて、ここまでの暴力的事態には備えがなかったのです。

医師や看護師はどのように対応していますか。

医療従事者は1人が2~3人分の仕事をこなし、1日に20時間勤務することさえあります。人を亡くなるままに放置し、帰宅するなんてできないからです。力は及ばないものの、私たちの働きは誇っていいものでしょう。救命のために最善を尽くしながらも、日々、命の喪失を目のあたりにしています。

医師として直面する主な課題は何ですか。

アレッポ市全体が、集中治療施設の深刻な不足に直面しています。どこの集中治療室も満床です。治療中の患者が亡くなると、新たな患者が受け入れられるという状況なのです。助かる見込みがないと判断した患者の治療を諦めて別の患者の治療を始めるという非常につらい選択を迫られることもあります。

もう1つの主な課題は、専門治療を受けるための転院がほぼ不可能だという点です。例えば、重度の熱傷の治療はこの地区ではできないのですが、治療できる病院への移送も不可能です。救命のため手を尽くしているものの、常に成果が上がるわけではないのです。

そのような医療状況で忘れられない出来事はありますか。

あります!集中治療室での処置がどうしても必要だった12歳の女の子です。私たちの病院には人工呼吸器がありません。しかも夜間で、市内の全病院に連絡したものの、受け入れ先はなかなか見つかりませんでした。

しかしついに、爆撃被害を受けていた病院から「集中治療室の損害は著しいが、人工呼吸器は使える」との情報が届きました。にわかには信じられない思いでしたが、夜間の爆撃が続いている中、7km先のその病院に女の子を運び、人工呼吸器を装着して命が救われたのです。

今後についてどのようにお考えですか。

誰もが日々をしのぎながら、内戦の終わりを切望しています。私たちは、物資調達と傷病者の転院の手段が得られるまで、もしくは万策が尽き果てるまで、頑張るつもりです。身動きの取れないアレッポ東部の人びとのために、私たちはいるのです。

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