アフガニスタン: 目と鼻の先の病院に行けない現実——紛争地の医療

2016年08月30日掲載

ブースト病院の入院病棟の一室普段は患者でいっぱいだが…… ブースト病院の入院病棟の一室
普段は患者でいっぱいだが……

紛争続きで病院へ行く機会がはばまれてしまっているアフガニスタン・ヘルマンド州の州都ラシュカルガ。国境なき医師団(MSF)のアーランド・グレニンゲン医師は、この地域でMSFと保健省が共同運営しているブースト病院(300床)に赴任し、入院病棟の担当者の監督・指導を行っている。

グレニンゲン医師はノルウェー出身で、専門は呼吸器内科。一方、この入院病棟では内科と結核治療が重点化されている。2016年4月に着任して4ヵ月が経ったグレニンゲン医師に、現状とMSFの取り組みについて聞いた。

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戦闘激化、なのに患者数は激減?

MSFのアーランド・グレニンゲン医師 MSFのアーランド・グレニンゲン医師

ヘルマンド州では戦闘が激化しています。戦線はいつにも増してラシュカルガに接近しています。直近の数日は戦闘が減っていますが、それでも紛争が市域を取り囲んでいるため、患者数が大幅に減りました。来院できないからです。いつもは手が回らないないほどなのに、最近は救急処置室の患者数でさえ通常以下です。

紛争のせいで住民が医療を利用できない様子を目のあたりにし、本当に腹立たしい思いです。普段なら、小児病棟と集中栄養治療センターは子どもたちでいっぱいでにぎやかです。2人でベッド1台を共有することも珍しくありません。そんな病棟が不気味なほど静まり返り、病床も多くが空いていました。これも紛争の1つの側面です。

8月第3週は戦闘が落ち着き、小児病棟と入院栄養治療センターは普段通りの慌ただしさを取り戻し始めていました。ただ、救急処置室での受け入れ数は今も日によってまちまちです。

すぐに来院できていれば……

最近、ナワ地区から女性(15歳)が運ばれてきました。髄膜炎で、すぐに治療が必要なほどの重症でした。両親の話では発症から少なくとも1週間が経っていたそうです。

ナワ地区は病院から目と鼻の先にあります。両親は一刻も早く娘を病院に連れて行こうとしたのですが、激しい戦闘のせいで身動きがとれなかったのです。私たちは、おそらく手遅れだろうと思いつつも女性を受け入れました。ただやはり、治療開始から24時間後に意識不明となり、亡くなりました。

検査で次々に症状が見つかって

手術を待つ患者たち 手術を待つ患者たち

重度の呼吸困難になっていた男の子(7歳)も印象的でした。ご家族の話では12日前から症状が出ていたそうです。検査すると、緊張性気胸という、命にかかわる肺の症状であることがわかりました。つまり、肺の損傷などが原因で、肺から空気がもれて胸の中にたまってしまうのです。胸腔ドレーンを挿入して空気を抜くと、容体は間もなく改善しました。ただ、肺が完全に広がって回復するまでもうしばらくかかるでしょう。

その男の子の肺のレントゲン写真を撮ってみたところ、結核にかかっていることもわかりました。治療のあとは見られませんでした。結核はヘルマンド州の公衆衛生上の大きな問題です。すぐに薬物療法を始め、一般的な7歳の子どものように病院周辺を歩き回れるまでに回復しました。

ところが、その歩き方が少しつらそうなのです。念のために検査したところ、左股関節の脱臼が見つかりました。来院時は重度の呼吸困難で苦しんでいたために、両親は脱臼について医師に伝える機会を逸していたのです。

改めて話を聞いてみると、男の子は12日前、交通事故に遭っており、それが気胸と股関節脱臼の原因だったことがわかりました。男の子は小児集中治療施設に入院して回復し、股関節も整復してリハビリを受けています。

少年の事例からわかるのは、症状が深刻で来院が遅くても希望はあるということです。しかし、遅れは人命をいっそうの脅威にさらします。もっと早く、私たちのもとに来られるようでなければなりません。

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