モザンビーク:「家族のために治療を続けます」——カポジ肉腫と闘う患者たち
2013年07月25日掲載
モザンビークの首都マプトで、国境なき医師団(MSF)は保健省と連携し、HIV/エイズの合併症であるカポジ肉腫を治療している。繁華街にあるアルト・マエ基幹センターを拠点に、無償治療の提供、1次診療所の技術的支援、患者の早期発見などの活動を行っている。現地でMSFの治療を受けている2人の患者に、治療の様子と現在の心境を聞いた。
「家族は、私しか頼れる者がいないのです」——ジョアオさん(36歳)

今も治療を続けている
病変はひざ下から始まり、次第に上半身の方に移ってきました。ひざを曲げられず、腫れものが肥大し、中に石がつまっているような感覚でした。9ヵ月前に医師に見せたところ、カポジ肉腫だということで、アルト・マエ基幹センターで化学療法を受けることになりました。治療を始めてから、服薬を怠ったことはありません。治療をあきらめるつもりもありません。
月に1回、治療を受ける必要があるのですが、それが問題です。処置室はとてもせまく、男女が同時に同じ空間で治療を受けるのです。また、治療で身体に負担がかかることもあります。私の場合は毛髪が抜けました。新たに生えてきた毛は極細です。食欲がないこともありますし、吐いてしまうこともあります。マラリアにかかったときのような感じです。それが3日間ほど続き、やがて体調が戻ります。翌月、再び治療のために来院し、同じことを繰り返すわけです。
非正規で建築現場の手伝いの仕事をしています。ですが、毎月1週間ほど休まなければなりません。化学療法の副作用のせいです。食欲を失い、元気も出ません。仕事をしているときのほうが気分はいいです。
私は15歳のころから働いています。最初の職場はバーで、その次が建設現場でした。報酬がよかったからです。お金を稼げるようになり、子どもを持つようになりました。モザンビークでは稼ぎがいいほど、子だくさんです。うちの子どもたちは、娘が4人、息子が3人。今は孫もいます。17歳の長女に1歳の子どもがいるのです。妻は田舎で子育てを続けています。私はマプトで姉妹と一緒に暮らし、お金を稼いで、家族に仕送りをしているのです。働けるときは、ですが……。マプトにいるのは、仕事のことだけでなく、治療の継続が主な理由です。
よく足のことを聞かれます。皆、それが本当は何なのかを知らないため、そのたびに説明しなければなりません。妖術や黒魔術の影響を疑われています。病院に行く前に、伝統療法に多額のお金を費やしましたが、成果はありませんでした。
今までに相当苦しい思いをしていますし、子どももいますから、治療をあきらめるわけには行きませんね。中断すれば痛みがぶり返すことはわかっています。家族は、私しか頼れる者がいないということをわかっています。
治療するまで移動も歩行も仕事も、子どもの世話もできませんでしたが、状況がよくなり、今ならそういったこともできる気がします。以前は普通の暮らしをしていました。それから、何もできないまま1年を過ごし、また健康を取り戻しました。治療は、完治するまで、または命の続く限り続けます。
「治療を望む私には、治療はつらくありません」——アンジェリーナさん(34歳/仮名)

治療を始めたのは2007年。北部の別の診療所で、そこからアルト・マエ基幹センターに移送されました。治療開始の時点で両脚にカポジ肉腫があり、ひどく痛みました。今は以前より、ずっと体調がいいです。
痛みはもう感じないものの、かゆみが治まりません。夜中にかゆくて目が覚めてしまい、眠れなくなることもあります。皮膚に傷ができ、新しい皮膚が見えてくるまでその傷を引っかいてしまうこともありました。古い皮膚はほこりのように風に飛ばされていきます。
自宅では今も以前と同じ服装ですが、街中に出たり、交通機関を利用したりする際は身体を覆うように、そでのある服とロングスカートを身に着けます。そうしないと周りの人に「どうしたんですか?」と聞かれるのです。それが嫌でたまりません。
詳しく説明すると、それが例の病気……つまり、"カポジ肉腫=HIV/エイズ"だと思われてしまうのです。家族はHIV感染のことも知っています。夫、いとこ、支えてくれる友人たち……助けが必要な時に頼れる人たちです。
治療はつらくはありません。治療を望まない人にとっては大変でしょう。ですが、治療を望む人、また、子育てを望む人にとっては大変ではないでしょう。家で3人の息子が待っています。支えるべき家族のために、治療を受け、病気を治すしかないのです。
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