リベリア: エボラ感染防止キットの配布、MSFが続けなければならない理由

2014年11月11日掲載

MSFからエボラ感染防止キットを受け取る住民たち MSFからエボラ感染防止キットを受け取る住民たち

午前5時。国境なき医師団(MSF)の車両2台が、リベリアの首都モンロビアの街路を走り抜ける。ここはエボラ出血熱の流行が特に深刻な地域だ。MSFの現地スタッフであるノーリー・スマートとエマニュエル・トクパの2人が、暗闇の中で手袋を装着する。これから市内のスラム地区・ウェストポイントで、家庭内感染予防・住宅消毒用キット約1000組の配布を行う。

ノーリーは「配布を早朝に行うのは、大勢の人で混雑し、汗をかいた人たちが互いに触れ合ってしまうことを避けるためです。毎朝のことですが、開始前に手と長靴を洗い、配布対象の人同士が触れ合わないように注意しています」と話す。

記事を全文読む

感染リスクを少しでも減らしたい

家庭内感染のリスクを減らすための物資が入っている 家庭内感染のリスクを減らすための物資が入っている

2台の車を明かりのない倉庫の横に止める。MSFの担当チームが飛び降りる。倉庫内には大量の家庭内感染予防・住宅消毒用キットが保管されている。その配布対象は数百世帯。2014年9月に開始してから、すでに5万組以上を配布した。MSFはさらに、7万世帯、住民数にして24万5000人への提供を目指している。

このキットは、塩素消毒剤、石けん、防護服などをバケツにまとめたもの。エボラに倒れた家族を保健医療施設に連れて行けないときに、少しでも感染拡大のリスクを減らすようにとの狙いがある。エボラ感染の主な経路は、葬儀、対策の講じられていない保健医療施設、感染・発症した人の自宅だ。エボラウイルスで一家全員が亡くなったケースもある。

エマニュエルは「近所で仲が良かった女性がエボラに感染し、彼女の両親や恋人へと感染が拡大しました。その女性が亡くなったと聞いたときは信じられませんでした。回復したのは彼女の父親だけです。私がこの活動に携わる理由の1つです」と打ち明ける。

現実的な対応から導き出された"応急措置"

キット配布所にはいつも長い列ができる キット配布所にはいつも長い列ができる

MSFの配布チームが、机の上に並べたバケツを10人ずつ順番に渡していく。ノーリーとエマニュエルは受け渡しの順路の設定係だ。一方通行になっていて、入り口で列をつくり、キットを手に入れたら反対側に通りに抜ける。「まさに肉体労働です。一息で全てをこなさなければなりません。キットを手渡し、会話を交わしつつ、速やかな移動を促します」

住民への最初の連絡は配布のかなり前に行われる。予定日の2日前には、担当チームが対象地区を訪れ、配布の流れと目的を映像で説明。当該のキットは治療を行うためのものではなく、エボラ発症者の家庭や、エボラで家族が亡くなり自宅を消毒しなければならない世帯のための緊急策であることを伝えている。

配布活動の調整を担うMSFのアンナ・ハルフォードは「救急車は通報があったすべての患者を搬送することが求められますが、実際にはうまく機能していません。発症者が出た住宅の消毒も家族が自力で行うべきではないのですが、残念ながらやむを得ない状況です。キットの配布は理想的とはとても言えない状況への応急処置なのです」と説明する。

国際社会の支援はまだ手薄な状態だ。エボラ流行地域の中には、ニーズに応えられていないところもある。これは病床数が足りないというだけのことではない。モンロビアでは救急搬送と連絡体制が現状に対応できていない。タクシー運転手から発症者の乗車を断られるケースも多い。感染者と接触した人の追跡調査を組織的に行うことや、遺体の管理も依然として課題となっている。

「私にとっては誇るべきこと」

日が昇る頃には、ウェストポイントでの配布は終わりを迎える。車が増え、市場は混雑し、人でいっぱいになる。

帰りの車窓から外を見つめ、エマニュエルが口にする。「MSFの任務に参加していると、町の人から、私たちがエボラ感染者であるかのように言われます。一種の偏見でしょう。皆、怖いんです。でも、私にとっては誇るべきことです。エボラとの闘いに加われているのですから」

関連情報