エボラ出血熱:MSFは実験段階の治療薬を使いますか?
2014年08月12日掲載
日本発も含め複数の薬がエボラ治療の候補として検討されている ※写真はイメージです。
エボラ出血熱のワクチンや治療に関する研究はどの程度進んでいるのでしょうか。
高リスク区域で作業する際の注意事項を受けるMSFスタッフ
MSFは定期的に研究者と会い、開発の初期段階にある複数の抗エボラ薬やワクチンについて協議しています。ヒト以外の霊長類に具体的な効果を示している薬がいくつかあり、人体への安全性と効果のめどが立ってきました。ただ、どの薬やワクチンも、臨床試験が行われていません。
MSFは、(通常の手順を踏めば)安全な承認薬やワクチンの実用化には2年ほどかかるとみています。試験に必要な行政手続きが大幅に長引くことも予想されるからです。
米国人の感染者に投与された薬に、効果はあったのでしょうか。
エボラ出血熱に感染して帰国したアメリカ人の2人に投与された薬には、かなり期待がもてそうです。治療薬の候補の中でも、発症後の患者で効果を示した唯一の薬だからです。
そのほかの候補となっている治療薬は、エボラウイルスが体内に入って1~2日以内に投与しなければなりません。しかし、エボラの潜伏期間は最短でも2日とされています。感染して1~2日以内では、エボラの症状は見られないと思われます。
ともかく、最初に治療を受けた援助従事者が急速に回復していることから、投与された薬への期待が高まっています。
開発の初期段階にある薬の投与は異例なのでしょうか。
新薬や新ワクチンの開発では通常、小動物で最初に実験し、次にヒト以外の霊長類で実験します。有害か無害か、そして病気を治療・予防できるか否か、安全性と効果を見極めるためです。実験結果が望ましいものであれば、健康な人で試験を行い、安全性を確認したのち、病気の人で試験をします。
現在、エボラ治療薬の候補として議論されている薬は、ヒト以外の霊長類では安全性と効果が有望だと見込まれているものの、それ以降の臨床試験の過程を経ていないものです。その段階の薬を導入するということは、対象となる病気の致死性の高さから、試験的な導入に踏み切らざるを得ない "非常事態"であることを意味しています。
エボラ流行地域の人命救助のために実験段階の薬を導入すべきでしょうか。
最大の問題は安全性です。実験薬というものは患者にとって有害か否か、そしてどの点が有害なのかが把握されていません。そうした薬で容体が悪化すれば、患者をより大きな危険にさらすことになりかねません。
今回、2人のアメリカ人に投与された薬は、抗体を基礎にして作られています。抗体を用いた薬は種類も適応症も多く、アレルギー反応など予想される副作用もおおよそ把握できているため、不確定要素が少ないのです。
エボラ出血熱の致死率は非常に高いので、今回の薬について一定の安全性が確信できれば、MSFとしても有効な選択肢になり得るだろうと考えています。一方、当然ながら、すべての患者が治癒するという保証がないことも認識しています。
MSFが議論されている実験段階の薬を導入するとしたら、何が条件になりますか。
実験段階の薬が実用化されて患者のためになることを待ち望んでいますし、実現に向けてハードルが解消されていくことを願っています。第1のハードルは生産をめぐる問題です。実験段階の薬は、製薬会社にも豊富な備蓄があるわけではありません。必要な量を短期間で生産できるのかどうか、その点には疑問の余地があります。
第2のハードルは法規制です。通常の開発に求められるさまざまな研究過程を省くことになれば、薬剤の使用・輸出の管轄機関も例外的な認可を下さなければならないでしょう。
まず、薬を生産する国での特別認可と、その薬の使用が見込まれる国の政府の同意が必要になります。併せて、法的・倫理的枠組みも議論しなければなりません。
最後に忘れてはならないのは、新薬の投与にはごく細心のデータ収集と患者の経過観察が不可欠だということです。新薬を投与する施設の人員を拡充しなければならないでしょう。ただ、MSFは現在、エボラ流行被害の最も深刻な3ヵ国で対応能力の限界まで活動しています。エボラ治療薬の導入に関しても、他の援助機関・団体の協力が望まれます。
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