コンゴ民主共和国:避難者の「生き地獄」にMSFは?

2014年07月23日掲載

コンゴ民主共和国(MSF)東部のオリエンタル州ニアニア地域。ここで、国境なき医師団(MSF)の心理ケア顧問として活動しているアナ・マリア心理療法士は、避難者が「生き地獄」だと語る暴力被害の体験談に衝撃を受けている。

この地域の経済は金とダイヤモンドの採掘に極度に依存しており、襲撃事件にはその採掘権が絡んでいる。何十年にもわたり、武装した闇業者たちがオカピ野生動物保護区内の鉱山をめぐる違法な経済活動で儲けようとしてきた地域だが、現在、人びとが直面している暴力はかつてないほど深刻化している。アナ・マリア心理療法士に現状とMSFの取り組みを聞いた。

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性奴隷として拘束、鉱山での虐待……吹き荒れる暴力の嵐

MSFのアナ・マリア心理療法士/心理ケア顧問 MSFのアナ・マリア心理療法士/心理ケア顧問

話を聞いた人びとは皆、自身の体験を『地獄のようだ』と表現します。人びとのありとあらゆる苦難に耳を傾けてきましたが、今回の話はなかなか受けとめきれずにいます。人間のなせる最大の害悪が、破壊とさげすみと侮辱と非道のために用いられているように感じます。

被害者の中には性奴隷として拘束されていた人がいます。拘束は何ヵ月にも及ぶことがあり、1日に複数の男性に複数回、性暴力を振るわれるのです。それも多くの場合、両親や夫、親族の目の前で……。性暴力の被害者は女性だけではありません。幼い子どもや男性も被害を受けています。

性暴力だけでなく、そのほかの形態の暴力もあります。鉱山労働者は多かれ少なかれ虐待されています。自身や仲間が極端な暴力にさらされた経験のない人はまれです。

森の中で野宿をしていた鉱山労働者は、襲撃を恐れて、ニアニアなどの市街地に避難しました。暴力被害に遭い、助けを求めてきた人もいます。ニアニアの経済は金・ダイヤモンドの取引にほぼ全面的に依存しており、そのほかの物資は水や食料も含め、すべて域外から買い入れています。雇用や収益を生み出す産業が乏しく、貧しい地域です。鉱山労働者が森から避難することは、生活の糧を犠牲にしていることを意味します。

見知らぬ避難者をかくまう町の人びと

避難者は現在、町の人口の約25%を占めています。しかし、姿をあまり見かけません。専用の仮設住居ではなく、親類や知人、時にはまったく知らない人にかくまってもらっているのです。状況は流動的で、2週間に1度の割合で新たな避難者がニアニアにやってきます。しかし、再び町を離れる人もいます。最低限の生活を維持するため、鉱山に戻っていくのです。

ニアニアの住民は避難者を偏見のまなざしで見ることはありません。むしろその逆で、温かく受け入れ、支え、話に耳を傾けています。人びとの打たれ強さと、住民の受け入れ態勢に私も深く感銘を受けています。

心理ケア・専門ケアを提供

MSFはまず、基礎医療の無償提供を始めました。診療が始まるとすぐに、心理ケアが必要性だとわかり、プログラムを立ち上げました。それ以来、大勢の人がMSFの施設を訪れています。大抵は、同じく被害を受けた人や、親しい人に付き添われて来院します。

被害者には心理ケアの相談や専門ケアを提供しています。性暴力は、被害者のケアが特に難しいケースです。HIV/エイズ、性感染症、妊娠を予防する薬は、被害を受けてから72時間以内に飲まなければ効果が薄れてしまいます。つまり、性奴隷として何ヵ月も拘束されている女性は、そうしたケアも受けられないのです。

被害から数ヵ月を経ても、心身の傷あとは癒えていません。多くの人が、身体の痛み、創傷感染症、ストレス、抑うつ症、悪夢に苦しんでいます。誰も明日のことがわかりません。生活環境が不安定だという感覚が払しょくできないため、精神的ストレスがたまっていくのです。

MSFの現地チーム全体が、人びとの悲惨な体験に衝撃を受けています。ニアニア地域で起きていることを伝えなくてはと思います。私たちには、人びとを助けるために沈黙を破る義務があるのです。性暴力をはじめとする暴力は、コンゴ民主共和国では目新しい問題ではありません。しかし、昨今の被害はいつにないほど深刻です。

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