シリア:停戦発効後も包囲下の町で続く恐怖

2016年04月11日掲載

シリアでは、停戦の発効と人道援助物資の輸送団により紛争の被害は軽減されている。しかし、多くの包囲された地域では、依然として民間人が攻撃を受け、患者の搬送は妨げられ、病院が爆撃にあっている。国境なき医師団(MSF)は、民間人への無差別・意図的な暴力を停止し、患者の搬送や人道援助物資の供給が、困窮者のいる全ての場所、特に包囲下の地域で制限なく認められる必要があると改めて強調する。

MSFオペレーション・ディレクターのバート・ジャンセン医師は「今もさまざまな惨劇が多くの包囲地域で起きています。この2週間でも、ダマスカス近くの包囲地域で医師1人が狙撃され、MSFの支援する野外病院2軒が爆撃されました。この地域への爆撃は続く一方、医療援助は差し止められたり、規制されたりしています」と訴える。

ザバダニ最後の医師が狙撃される

3月最終週、包囲下の町ザバダニに残っていた最後の医師兼救急隊員が、患者の治療後、狙撃され亡くなった。

包囲地域では大抵、医師がほとんど残っておらず、1人もいない場所もある。身の安全ため避難した医師もいるが、多くは爆撃などにより死亡。MSFの記録によると、2015年は支援対象のシリア人医療従事者のうち23人が亡くなり、58人が負傷した。

一部の包囲地域では、研修を終えていない医学生や看護学生が試行錯誤で医療に携わることも多い。学生たちは力の限りを尽くし、MSFも遠隔から技術的な助言や支援に努めているものの、高度な治療の提供は望めず、正確な診断も極めて難しい。

病院2軒が爆撃

ダマスカス近郊に位置する東グータの包囲地域では、MSFが支援していた野外病院2軒が3月第3週から4月初週にかけて爆撃され、少なくとも38人が死亡、医療スタッフ5人を含む87人が負傷した。

この地域の医療従事者は過去何ヵ月もの間、ごく限られた物資しか受け取っておらず、それも大部分がMSFその他の人道援助団体からの隠密の供給に頼っている。

ダマスカス周辺で、MSFの支援医療施設のあるアル・マルジュ、デイル・アル=サフィール、ゼブディーンなどの包囲地域も、この数週間、砲撃を浴びていた。

搬入できない医療物資、搬出できない患者

MSFが支援する医療従事者の報告では、まれに援助物資の輸送団が包囲地域への進入を認められても、外科・麻酔科用具や輸血バッグといった必須の救命医療物資が除外されてしまい、多くの場合、点滴液も大幅に足りないという。これらの物資こそ、爆撃・砲撃被害者の治療に必要で、事故による外傷や帝王切開、一部の分娩困難の処置にも不可欠だ。国連によると、2016年に輸送団が運びながら、搬入を阻まれたり、貨物から除外されたりした医療物資は8万個に上っている。

ダマスカス周辺では、地域では受けられない救命処置が必要な重体患者は数多いが、MSFが支援する40軒の医療施設から搬出が認められた患者はごくわずかにとどまっている。この1週間余りの間にマダヤの町で亡くなった5人のうち3人は、緊急の医療搬出が認められていれば、容体の安定した可能性もあった。3人は、不発弾の爆発事故の後、搬送ができず数時間で亡くなった子ども、脳血管疾患の疑われる高齢者、栄養失調が死因の若年男性だった。

今も続く全面包囲

援助物資輸送団の到着後も、マダヤの町の地元医療チームは100件以上の栄養失調を確認。マダミヤでも7件の重度医療失調が診断されている。

ダラヤやドゥマなどの地域では公式の人道援助立ち入りが全面的に禁止されたままで、ダマスカス近郊の包囲地区バルゼーやホムス県ワエルの再三の封鎖も懸念されている。

MSFはシリア北部の安全状況が許す地域で、合計6軒の医療施設を運営。紛争が激しく、政府から認可が得られないため、シリア国内では広い地域で医療施設運営が阻まれている。一方、70軒余りの医療施設に定期的な支援を、また、約80軒に臨時の寄付を提供。包囲地域の医療従事者の支援に重点を置く。これらの支援先施設はシリア人医療時従事者が運営するもので、MSFスタッフは駐在していない。

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