ヨルダン:高度な専門外科を紛争被害者に——MSF病院を刷新

2015年09月10日掲載

国境なき医師団(MSF)は、ヨルダンの首都アンマンで続けている再建外科プログラムを質量ともに向上させるため、拠点としていた再建外科病院を移転し、設備を刷新して新装開業した。この活動ではヨルダン周辺国で紛争被害を受けた人びとを対象に、出身国では専門的な外科治療を受けられないと判断された患者を受け入れている。

ヨルダン:「この病院は第2の家です」——MSF再建外科病院の子どもたち

紛争続きで医療ニーズが増大している中東地域

この活動は2006年にイラク戦争の被害者への対応からスタートした。その後、イラク、パレスチナ、イエメン、シリアなど受け入れ対象国・地域を拡大してきた。ヨルダン周辺では現在も紛争が続き、医療援助ニーズが増大していることから、MSFはプログラムを質量ともに向上させる必要があると判断。近隣の病院を取得して改修し、移転した。

MSFのヨルダンでの活動責任者を務めるマルク・シャカルは「病院が広く、新しくなり、治療の質を向上させることができるようになりました」と話す。専門治療を担っているのは研鑽を積んだ中東出身のチームだ。一方、患者の出身国はシリアが最も多く、次いでイエメン、イラクとなっている。

外科・理学療法・心理ケアの包括パッケージで提供

病院では包括的な治療パッケージを提供している。外科治療、理学療法、心理・社会面の支援、心理ケアを組み合わせたものだ。治療が長期におよぶ患者は、通院にかかる交通費の補助を受けられる。また、敷地内の宿泊施設に滞在し、そこから通院することも可能だ。

プログラムを開始した2006年から現在までに、外科治療は3700件以上を扱ってきた。手術は計8238件にのぼる。この病院に紹介されてくる患者は、出身国の医療ネットワークによって選定されている。

一方、理学療法は13万4620件以上、心理・社会面の支援は4万5660件以上を扱ってきた。イラク出身の患者であるナーラ・ファデルさんは重症のやけどで2013年に来院し、現在までに計24回の手術を受けた。

「来院当時は手の動きがかなり制限されていて、子どもの髪にくしを入れたり、ご飯を食べさせたりすることさえできませんでした。MSFの治療を受け始めて2年が経ち、今では手の動きがほとんど元通りになりました」と話す。

世界レベルの高度な専門外科を無償で

提供している外科治療の技術は世界レベルだ。顎顔面外科、形成再建外科のほか、遊離皮弁法、神経移植、手の手術を含むマイクロサージェリー(微小外科)も手がけている。

病院のアシュラフ・アル・ボスタンジ外科部長は、「患者の出身国でも、初期治療であれば受けられることがあるでしょう。しかし、多くは紛争地となっているため、専門的な外科治療は望めません。MSFはこうした治療を無償で提供するとともに、病院運営にかかるコストを他の民間医療機関よりも安く抑えています。こうした高度な専門治療が、医療・人道援助の一環として紛争の被害者に提供されていることは特筆すべき点でしょう」と話す。

MSFのヨルダンでの活動

MSFは、ヨルダンでは2006年から活動している。イルビド県では非感染性疾患の診療所を運営しているほか、2013年には県内で心理ケアを含む母子保健・産科医療プログラムを開始した。シリア国境に近いラムサでは救急外傷治療プログラムを行っている。一方、マフラク県内のザータリ難民キャンプでは、滞在しているシリア人難民を対象とした診療所を運営している。さらに、シリア南部にある医療施設に、外科キットを含めた医療物資の寄贈を2年間続けている。

MSFは、中立・独立・公平を掲げて活動する国際的な医療・人道援助団体。紛争地、感染症の流行地域、医療を受ける機会が乏しい地域、自然災害の被災地などで、命の危機に直面している人びとに医療を無償で提供している。MSFの活動は、人種、宗教、性別、政治などあらゆる立場にかかわらず、医療ニーズと緊急性にもとづいている。

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